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秋川牧園は「あなたの農園」です。

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秋川牧園は「あなたの農園」です。

同志社大学4年生

佐藤 亮

株式会社秋川牧園

秋川 正

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社秋川牧園の代表取締役社長 秋川 正様に、お話を伺いました。

同志社大学4年生
佐藤 亮

同志社大学商学部。2023年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界を中心に活動。大学3年生の際にもこのインターンシップに参加していた。趣味は筋トレ。最近はマリーゴールドの弾き語りに苦戦中。

株式会社秋川牧園
秋川 正

1966年5月10日、山口県生まれ。文系と理系の要素を併せ持つ筑波大学第三学群社会工学類へ入学。学生時代にはバンドをしたり、ケーブルテレビの番組をつくったりとクリエイティブの楽しさを知る。卒業後、ストレートで秋川牧園へ入社。宅配事業の立ち上げなどを経験し、2005年に代表取締役社長に就任。趣味は、ロックを中心とした音楽鑑賞と演奏。3人の息子の父である。

目次

 

佐藤
本日はよろしくお願いいたします。御社の商品を実際に食べさせていただいたのですが、本当においしかったです。生卵は独特の臭みが一切なく、卵かけご飯でおいしく頂きました


秋川
ありがとうございます。


佐藤
お野菜もとってもおいしかったです。できるだけ自然に近い生産方法にこだわることに御社や秋川様の価値観が反映されていると思います。秋川様は問題解決力という言葉に惹かれ大学を選ばれたそうですが、高校時代から問題意識を持たれていたのでしょうか。


秋川
弊社が志している有機農業運動などについて創業者である父から聞いていましたので、そういうことに興味がありました。ですが明確な問題意識はまだ持っていなかったと思います。


佐藤
そうなんですね。では大学時代に問題意識が高まったのでしょうか。


秋川
そうですね。どういう社会が良いのか、人はどうあれば良いのかなどを考えていました。


佐藤
大学時代に思い描いていた理想の社会はどういうものだったのでしょうか。


秋川
色々ありますが、大量生産大量消費を是とする大きなシステムだけでは、多様化する社会問題は解決できなくなると考えていました。それを解決するためには、まずは社会をつくっている一人一人が主体的に行動することが大切だと考えました。その上で、同じ価値観の人同士がネットワークをつくれば、より大きな影響を与えることができるという考え方です。


佐藤
なるほど。そういった社会の実現に近づける秋川牧園に入社されたんですね。


秋川
もう少し様々な角度から考えていました。今でいうサスティナブルという言葉が近い気がしますが、そういった社会をつくるのに貢献したいという想いや理想の農業を追求したい、働く人にとって秋川牧園を良い企業にしたいなどの想いから入社を決意しました。


逆境でも信念は曲げない

佐藤
秋川様が入社した当時は今よりも大量生産大量消費の考え方は強かったと思います。そんな中、御社の安心安全な、一方で、少し値段が高い商品を販売するには苦労もあったかと思うのですが、いかがでしょうか。


秋川
バブル崩壊後にデフレの時代がきたのですが、その時代は値段が安いものが求められたので、厳しい時代でした。生協さんとの流通経路だけでは成長し続けることが難しくなり、2000年ごろから直販事業に挑戦しました。

 

佐藤
なぜ生協さんと繋がりがある中で直販を始めれば売り上げが大きくなるのでしょうか。


秋川
デフレの時代において、「高いけれどよいモノ」の売上を伸ばすという、一番難しいテーマに自らが挑戦することで、限界を突破していこうと考えたのです。当然簡単なことではなく、初めは赤字が続きました。


佐藤
ご苦労がおありだったんですね。赤字から黒字に転換できたのはなぜでしょうか。


秋川
ここ10年ほどでブランド力を上げたことが大きな要因でした。お客様に選ばれる存在になることをブランディングとおき、そのために今何が足りないのかを考え、一つ一つ向き合いながら克服していきました。具体的には、デザイン力や商品力、伝える力や顧客対応力など、実に幅広い取り組みが必要となりました。


佐藤
ブランド力はやはり重要なのですね。


消費者の方と一緒につくる

 秋川
秋川牧園は食べ物を中心として真に豊かな暮らしをつくることを目標にしています。健康やおいしさ、サスティナビリティを大切にした暮らしです。そして、その暮らしを消費者の方と一緒につくりたいと考えています。


佐藤
消費者の方と一緒につくるとはどういうことでしょうか。


秋川
普通、消費者の方=お客様というイメージだと思いますが、私たちは少し違うとらえ方をしています。食べてもらうことで農業は完結するという考え方です。なので消費者の方の存在がすごく重要だと考えています。


佐藤
消費者の方がいるからこそ、生産を持続することができるし、新しい食材もつくることができるということでしょうか。


秋川
そんなイメージです。よく言うのは秋川牧園という仮想の農園があったとして、その柵の中に誰がいるのかを考えた際に、いつも食べてくださる消費者の方も柵の中にいるというイメージです。


佐藤
なるほど。忙しい消費者の方の代わりに秋川牧園がつくるイメージですね。


秋川
そうです。消費者の方に「秋川牧園は私の農園なんだ」と思ってもらい、消費者の方と一緒に理想の農園をつくっていきたいと考えています。


農業自体に豊かさがある

秋川
弊社は卵の生産から始まりましたが、卵だけでは暮らしをつくることにはならないと思うので、お肉やお野菜、乳製品などにも生産を広げていきました。また現代は皆さんとても忙しいので、冷凍食品などの加工食品もつくって消費者の方に喜んでいただきたいという様に領域を広めてきました。


佐藤
今後も取り扱う商品は増やしていこうとお考えですか。


秋川
はい。例えばチーズやウインナー、ベーコンなどを自社だけでつくりたいと考えています。また楽しい食卓にはお酒も欠かせないと思うのですが、原材料を生産することだけでなく、自社でワインや日本酒づくりもできれば楽しいだろうなと思っています。


佐藤
自社でつくりたいと考えるのはどういった想いからですか。


秋川
純粋に、自分たちで育てて、食べ物をつくり、それを口にしたいという想いがベースにあります。


佐藤
なるほど。自分たちで最後までつくる方が、より商品にこだわれるからという想いもあるのでしょうか。


秋川
それもありますが、私は関係性が大事だと思っていて、社内ではそれを「農ある暮らし」という風に言っています。農業は社会的にも重要な役割・機能を果たしているわけですが、実は農業そのものに豊かさのパワーや源泉があると思っています。


佐藤
どのような豊かさがあるのでしょうか。


秋川
もちろん農業には苦労も多いのですが、そこに自然と一体となって生きているという喜びもあると考えています。自分たちで育て、自分たちでつくり、自分たちで食べるということに人としての根源的な喜びがあり、その豊かさを消費者の方と共有していきたいと思うわけです。


真の豊かさとは何か

佐藤
農ある暮らしの説明文に「真の豊かさ」という言葉がありますが、秋川様が考える真の豊かさとは何でしょうか。


秋川
一言でいうのは難しいですが、現代はSDGsが注目されていますよね。サスティナブルとは何かを考える際は、今だけではなく未来のことも考えて生きていくという価値観が大切だと考えています。


佐藤
今だけ、自分だけ良ければいいのではなく、未来のことや他者のことを考え、自然や農業を残していく生き方が真の豊かさということですか。


秋川
そうですね。さらに言えば自然といかに共生するかが大切だと考えています。自然や環境につけを回していくような生き方は、真の豊かさとは言えないのではないのでしょうか。 


口に入るものは間違ってはいけない

佐藤
消費者の方や周りのことを考えるという価値観が御社の根底にあるように感じます。こういった価値観は祖父の房太郎様から受け継がれてきたものなのでしょうか。


秋川
そうですね。よくお話しするのは祖父の「口に入るものは間違ってはいけない」という言葉です。これは私が小学生の時に父からよく言われた言葉でもあります。この祖父の想いというのは「命や健康に直結する食べ物をつくる生産者の責任はとても大きいんだ」という意味だったと捉えています。


佐藤
消費者の方が食を意識することの重要性というよりは、生産者の方への戒めの意味があるのですね。


秋川
そうです。ではその大きな責任を担う生産者がハッピーで恵まれているかというと、経済的にも身体的にも大変というのが長い日本の農業の歴史です。それは消費者の方にとっても決して良い話ではないと思っています。その中で、弊社はどうすれば生産者と消費者の方が共にハッピーになれるのかを考え続け、常に理想の農業を追求している企業といえると思います。


生き方のブランドになる

佐藤
御社のホームページにある「生き方のブランドになる」とは農ある暮らしをするということになるのでしょうか。


秋川
秋川牧園は食を中心として、消費者とともに真に豊かな暮らしをつくることを目指しています。そして消費者の方には、ただ食品を食べて頂くことだけでなく、秋川牧園の食べ物をつくる背景や考え方、地域社会との取り組みなども含めて共感していただければ、とても嬉しいです。そこまでくると暮らしというよりかは、最終的に私たちがどう生きるかという領域だと思うので、生き方のブランドになると掲げています。


佐藤
消費者の方はこの食べ物がどういった価値観や背景でつくられたのかまで考えることで、それが行動に繋がり、最終的にはその人の生き方に繋がるという解釈でよろしいでしょうか。


秋川
そうですね。良いと思います。商品を選択するということは、どういったつくり方が良いか、どういった社会が良いかということに投票していることですので、そういった側面も大いにあると思います。 


どのように仕事を選ぶべきか

佐藤
秋川様は大学生のころから現在に至るまで、暮らしをよりよくするという目標があるように感じます。一方で自分が何をしたいのか分からない学生も多いと思います。秋川様はどのように企業を選ぶべきだと思いますか。


秋川
大学生のうちにはっきりとした価値観を持つことは難しいと思いますが、自分がやりたいこと、関心があるものにつながっている仕事の方が頑張り続けることができると思います。仕事をするのは長い期間になるので、高いモチベーションを持って頑張り続けることを仕事にできれば、成長や結果につながると思います。


佐藤
なるほど。就職するうえで、好きなことを仕事にするのか、得意なものを仕事にするのかという問いがよくありますが、秋川様は前者ということですね。


秋川
好きという表現よりかは、やりたいこと、関心があることを仕事にすることが良いと思います。秋川牧園では食べ物や農業に関心がある方がマッチすると思います。


佐藤
なるほど、御社には様々な業務があると思いますので、食や農業に関心のある方が自分の得意な業務で活躍できれば素晴らしいのではと思いました。御社では入社後、自分のいきたい部署にいけるのでしょうか。


秋川
そうですね。人員などの関係で全てが希望通りになるとは限りませんが、最終的にはその人のやりたいことや良さが活きる仕事となることが望ましいと思っています。 


主体性は考えることから生まれる

佐藤
御社が人材面で大切にされているのは主体性だと思うのですが、秋川様が考える主体性はどういったことでしょうか。


秋川
日ごろから考えることが重要だと思っています。考えることが最終的に行動につながり、それが主体性につながっていくと思います。なので私は面接のときにその方が人生をどのように考えて、結果としてどのように行動してきたのかを聞いています。


佐藤
どういったことを考えることが主体性につながるのでしょうか。


秋川
社会のこんなことに関心があるとか、大学ではこんなことを経験しておきたいとか、そういったことでよいのではないでしょうか。


佐藤
なるほど。主体性は採用の際に見極めているのか、御社で働くうえで身につくのか、どちらでしょうか。


秋川
秋川牧園には多様な人材が必要なので、主体性だけで採用を決めるわけではありません。ですが、人は成長したいとか、役に立ちたいとか、そういった意欲は本来持っているものだと思うんですね。意欲を無理やり引き出すような研修や教育をしているわけではありませんが、その人が持っている意欲を行動に移しやすい環境づくりは大切だと思います。


佐藤
なるほど。そういった環境づくりに取り組んでいる御社の中で活躍されている方に共通していることはありますか。


秋川
誠実な方が活躍している印象です。どの企業も信頼を得ることは大切だと思いますが、特に弊社はお客様との信頼関係で成り立っている企業ですので、誠実でまじめな方が多いですね。


佐藤
そういった誠実さはどういったところで感じられますか。


秋川
お互いがチームとして協力し合うことですかね。消費者の方に良いものを届けていこう、より良い暮らしをつくっていこうという共通の目標があるので、それを達成するために部署や部門をこえて助け合うのは弊社の社風だと思います。


問題意識を持つことの重要性

佐藤
そういった目標を達成するために新入社員にはどういった想いをもって入社してきてほしいですか。


秋川
弊社の理念や価値観にしっかりと共感していただくことが重要だと思います。そのうえでまずは経験を積み、できることを増やして頂ければと思います。


佐藤
新入社員にはどういったことに挑戦してほしいとお考えですか。


秋川
主体性が大切とは言っていますが、いきなり突っ走っても良いことはありませんので、最初の一年はしっかりと基礎を身に着けることが大切だと思います。そして、日々の業務に追われているとつい忘れがちになるのですが、入社後も仕事だけでなく色々な事に対して視野を広く持ち、主体的に学び続ける姿勢を持ってほしいですね。


佐藤
例えば本を読むことなどでしょうか。


秋川
それももちろんいいですし、テレビや動画サイトを見ることでも良いです。なんとなく生活を送るのではなく、問題意識をしっかりと持ちながら、様々な情報や知識を吸収し続けてほしいと思います。


佐藤
なるほど。私も意識したいと思います。ちなみに御社に入社した際、1年目は必ず生産の現場を経験するのでしょうか。


秋川
いえ、必ずではありません。ですが、弊社ではインプットすべき情報がとても多いので、いきなり営業などをするのは難しいと考えています。なので、生産現場を経験してもらうことが多いのも事実です。ただ、必ず生産現場を経験するということではなく、その人の適性を見ながら企画や直販、生産管理などを1年目から経験するなど、一人一人に合わせたキャリアステップを考えていきます。


佐藤
御社の価値観は生産というところにも大きく反映されているので現場を経験しておくことを勧めているわけですね。最後に学生に対して伝えたいことがあればお聞かせ願いたいです。


秋川

仕事をすることは人生の中で大部分を占めることですし、人生をより豊かにしてくれるものなので、頑張り続けられること、成長し続けられることがとても大事だと思います。そのために、自分が何をしたいのか見つめなおすことが大切です。その際、弊社の理念や価値観に共感していただけたのであれば是非一緒に理想を目指していきたいと思っています。


佐藤
御社に出会い、商品を買う際はどのような背景でつくられたものかを考えるようになりました。考えることから学ぶということを今後も大切にしていきたいと思います。本日はありがとうございました。


秋川
ありがとうございました。


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