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美味しい商品で食卓に安心を

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美味しい商品で食卓に安心を

長崎大学4年生

原田歩果

株式会社大光食品

山中 数浩

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社大光食品 代表取締役 山中 数浩様に、お話を伺いました。

長崎大学4年生
原田歩果

長崎大学経済学部。2024年4月より株式会社クイックに就業予定。 インドア派で、趣味は読書と音楽鑑賞。コンサートに行く時だけ意気揚々と外に出かけます。来年までに家事をできるようになるのが目標です

株式会社大光食品
山中 数浩

1963年8月29日生まれ。60歳。趣味はソフトテニスとゴルフ。 高校卒業後、株式会社富士通に入社し、東京で勤務。1985年に株式会社大光食品に入社。 事務業務のコンピューター化、海外原料の購買を担当しながら、営業販売も兼務。 2003年に代表取締役に就任し、現在に至る。 自社ブランドの地元・島原半島産の豚肉・鶏肉の生産や食肉製品の加工も手掛け、54年の歴史がある地域密着企業。 近年では若手社員の発想を活かし、SNSでの広報やネット販売にも力を入れ、全国にファンを増やしている。

目次



原田
はじめにご経歴についてお伺いします。
高校ご卒業後は富士通様にご就職なさり、はじめは東京で勤務なさっていましたが、どんな経緯で御社に入られたのですか。


山中
父が大光食品の創業者なんです。私は4人兄弟の次男で、会社は継がなくていいと言われていたので戻る気はありませんでした。東京にずっといるつもりでいたのですが、空気と水が私には合いませんでした。当時の東京は、光化学スモッグがすごかったんですよ。一度田舎に帰ってみようと思ったらもう40年経っていますね。


原田
継ごうと思って戻られたわけではなかったんですね。
ご入社当初は事務業務のコンピューター化などに取り組まれていたと伺いました。


山中
当時は業務が全部手作業だったので、知り合いに頼んで事務作業をコンピューター化するのが最初の仕事になりました。


原田
前職のノウハウを生かしながら効率化をされていたんですね。
社長になられたのは39歳とお若いですよね。社長になるための心の準備は難しかったのではないかと思ったのですが、どんな思いで社長に就任されたのですか。


山中
突然だったので準備は何もなかったです。当時は会社の借入の連帯保証人は社長がしていたので、個人では返しようがない額の保証人をすることになりました。印鑑を押して銀行に提出したときに覚悟が決まりました。


原田
押した瞬間が一番の覚悟を決めるタイミングだったんですね。


水へのこだわりが味にでる

原田
御社は島原を中心に事業を展開なさっていますが、島原に対するこだわりはございますか。


山中
私は生まれは長崎市内なんです。幼稚園くらいまで長崎市内にいて、途中から島原半島に移り、小中高まで雲仙市の国見町にいました。前職を辞めて戻ってきたときはまだ国見にいたんですが、しばらくして島原市に移ったので、私の人生60年のうち40年は島原にいます。


原田
人生の2/3以上いらっしゃるんですね。
戻ってこられた理由にもある、水や空気がきれいなところがポイントだったんですか。


山中
空気は田舎なので綺麗ですね。水については、島原半島は地下水を使っているんですよ。
島原の湧水は一日に約20万トン毎日湧いています。


原田
島原は水がきれいなイメージがあります。


山中
水質が清浄なので、簡単な塩素消毒をするのみで、市の水として流せるそうです。
やはりほかの地域とは全然違います。匂いが違うので、出張でホテルを使うときも私はミネラルウォーターで歯磨きやうがいをするんです。


原田
綺麗な水で生活していると敏感に感じられるんですね。
商品にも島原の水を使っていることで品質に影響が出てきているんですか。


山中
そうですね。
使っている水によって味に影響が出てくると思います。


原田
すごいですね!水からも商品に違いが出るとは想像できていませんでした。


ハーブと乳酸菌を活かした健康なお肉

原田
食品を生産するうえで意識していることを伺いたいです。
安心安全を守るために特に力を入れていることを教えてください。


山中
当社では8大アレルゲンをなくす取り組みをしています。小麦粉や卵を商品に使っている企業は多いですが、当社の自社ブランドのソーセージのうち主要な4商品では、卵は使用していません。その中のいくつかの商品にはまだ小麦粉を使っているものもありますが、今後なくしていく予定です。


原田
アレルギーがあって給食でも食べられないものがある人を見てきたので、食べたいのに食べれないことがなくなるのはすごく素敵な取り組みだなと思います。


山中
鶏や豚の生産にも携わっていて畜産農家へ餌の販売をしているので、餌に何が入っているかの管理もしています。家畜の成育過程では、餌に成長促進剤や抗生物質が入っていることが多いんですよ。当社ではそれを入れないようにしています。


原田
すごい取り組みですね。ですが、それだと病気にかかりやすくなりませんか。


山中
当社の「雲仙しまばら鶏」では、薬の代わりにハーブや乳酸菌を使っています。漢方的な考え方ですね。殺菌・免疫効果があるといわれる数種類のハーブと、腸内環境の改善と免疫機能の向上を図る乳酸菌により、健康な鶏を育てています。


原田
そのあたりが影響してうまみがアップしているんですか。


山中
過去に成分分析をした際、一般的な若鳥と比較し、「雲仙しまばら鶏」ではアミノ酸の呈する「うま味」が約1.5倍に増えていました。健康に育っているので、良質な脂肪を蓄えていて、肉は臭みが少ないです。実際に商品を食べた方にも、鶏の臭みがなく美味しいと言っていただけることが多いです。


原田
そういったところに薬を使うかどうかの違いがあらわれているんですね。
アレルゲンにも配慮し、餌にもこだわって家畜を育てられているとのことで多くの方が安心して手に取れる商品を作っていらっしゃると知ることができました。


心が安らぐ商品を追い求める

原田
これから全国に商品を届けるときには長崎ならではのものを届けようとなさっているんですか。


山中
長崎ならでは、島原ならではというよりは、自分たちのやり方をやっていくという形です。それが島原発信とイコールになるということはありますが、世の中にはないような、もっとこういうのが欲しいねという商品を売り出していきたいです。8大アレルゲンや家畜の餌にこだわるのもその一環です。


原田
安心安全で美味しい食べ物を島原から届けていくということですね。


山中
安心安全とよく言いますが、安全は食品衛生法などで、数値が決まっていて数値で語れるものなんです。ただ安心と言うのは「心が安らぐ」ということで、それには個人差があります。私が安心できても、別の人から見ると物足りないということはじゅうぶんにあり得ます。だから安心を届けるというのはただ数値だけでは語れない部分なんですよね。ですので、安心してもらえる食品を追い求めるのが理想です。


原田
安心は心が安らぐこと...。
ただ数値がクリアしていればいいだけでなく、もっとほかの基準があると気づけて学びになりました。


まずはやってみよう

原田
御社の商品を全国に届けるための取り組みを教えてください。


山中
東京にも営業所があるので、東京の日本橋にある長崎の物産館にも、島原ハムポークソーセージや冷凍の具雑煮を置いてもらっています。その物産館の販売も去年の冬くらいから以前の倍くらいの売上になってきているので、関東の人たちにも受け入れてもらっているのかなと思います。


原田
2倍以上!なにかきっかけがあったんですか。


山中
2023年の夏に大食い系youtuberに動画をアップしてもらったんです。ぞうさんパクパクさんやしのけんさんという方々です。当社のソーセージを朝食として大食いする動画を上げてもらったところ、ネットで購入してくれる方が増えました。買える場所がネットだけだと弱いので、当社のSNSなどで東京の物産館で販売されていますよと知らせることで関東の方が買ってくれたんです。


原田
それは社員の方から提案があって依頼に至った形なのですか。


山中
若手の女性社員からのアイデアでした。私の年齢では考えつかないです。


原田
ばっちり効果が出ていらっしゃるんですね。気になっていたのがSNSの運用についてです。X(旧Twitter)のフォロワー数が10万人くらいいらっしゃいますよね。


山中
そうですね。2020年にスタートして、本格的に運用し始めてからは3年くらいです。どうやったらフォロワーが集まるかをXの担当者1人、Instagramの担当者1人で考えてくれています。


原田
フォロワー数に驚いたのですが、どうやってこんなに獲得できているんですか。


山中
何かがすごいというよりも、地道に更新し続けることがまず大事です。加えて、当社よりもフォロワーが多い企業とコラボもしました。例えば、文房具屋さんのような全く業種が違う企業とコラボしてお互いの商品をプレゼントしたり。自社だけのプレゼントキャンペーンもまめにやっています。商品には自信がありますが、やはり食べてもらわないとよさが分かってもらえません。まだまだ当社の商品を知らないお客様はたくさんいるので、広報的なところもずっとやっていかないといけないです。


原田
企業のXのフォロワー数だと1万人いればすごいと何かの記事で見ていたので、10万に至るまでにいろんな工夫をされてきたんだなと感じました。
知ってもらわないと食べてもらえないし、食べてもらえないと気づいてもらえないからこそ、YouTubeやSNSを活用なさっているんですね。そのあたりのツールは若者にとっても知る機会になりやすい部分なので、素敵な取り組みだなと思いました。


山中
私は何もしてないですけどね笑


原田
若手社員の提案を後押ししてくださる社長なんだなと思いながらうかがっていました。
提案は通されることが多いのですか。


山中
あんまり考えないようにしています。考えすぎるとジェネレーションギャップがあるので、成功するかどうかはさておき、まずはやってみてもらうようにしています。


原田
柔軟性があって素敵ですね。


山中
意見が通るとアイデアが出ますから。やらないとわからないことってたくさんあるので、失敗してもそれを糧にやり直せばいいんです。特に食には好みがあるので正解ってないんですよね。


原田
そういうふうに社長がお考えで、意見が通りやすいため社員からも声が出やすいのだと思います。だからこそ、先を見据えた取り組みができるんですね。


おいしい代替肉でSDGsに貢献

原田
現在開発に取り組んでいる商品はございますか。


山中
ひとつは代替肉への挑戦です。
大手企業も取り組んでいますよね。大豆からできた代替肉の商品はすでに当社からも発売していますが、商品を広げるためにさらに開発していかなければと思っています。


原田
大豆ミートと聞くとダイエットをしている方が脂質を避けるために選んでいるイメージがあります。
そういう方やベジタリアンに向けての商品ということですか。


山中
SDGs的な観点が大きいです。
動物性たんぱく質として肉や魚がありますが、そればかりを全世界が追い求めると、牛や豚、鶏を育てるために穀物が大量に消費され、人間の口に入る分が不足してしまいます。肉屋が肉を売らないのは不思議な感じがしますが、世界が飢餓しないように植物性たんぱく質を取ろうと、代替肉への取り組みは3年くらい前から行っています。大豆で作ったミートボールやハンバーグを当社でも出しているんですよ。


原田
SDGsの中の、2番「飢餓をゼロに」や3番「すべての人に健康と福祉を」、13番「気候変動に具体的な対策を」あたりが関わってくるのですね。
日本ではまだまだ代替肉の浸透が薄いように感じます。


山中
日本では、植物性たんぱく質を取ってSDGsを推進しようという考え方があまり普及してないんです。欧米では、「これで世界のためになるなら食べないといけないよね」という考え方なんですが、日本では、まず美味しくないと食べてもらえません。だから美味しいものを作らないといけないんです。


原田
私も、健康食というイメージが大きかった分野なので、代替肉がSDGsに繋がっていることは知りませんでした。


山中
今は結構小中学校でSDGsの教育をしているみたいなので、SDGsに関する展示会には小学生がたくさん見学に来ているんですよ。
やはり、代替肉は将来的に取り入れないとだめです。


原田
御社もそういったことを考えながら開発をされているので、やはり未来志向だなと感じます。


たくさん失敗しよう

原田
最後に御社が求める人物像について伺ってもよろしいですか。


山中
やる気と夢を持ってほしいです。企業に入ると歯車になるという考え方ではなく、こういうものを作ってみたいとか、売っていきたいとか、自分がやりたいことを夢描くバイタリティがある人が間違いなく伸びますから。いっぱい失敗できる人でないと成功しません。ただ言われたことをやるのでは本人も企業も発展しません。


原田
言われたから、仕事だからではなく、意志をもって業務に取り組める人や、やりたいを言葉にして新しい仕事を生み出せる人をお求めなんですね。


山中
無理して残業しろとか働きづめになれということではないです。プライベートあってこその仕事ですから。自分自身に誇りを持ち、家族や友人などの周りの人たちにも「自分の仕事はこんな仕事だ」と胸を張って言えるようになってほしいです。


原田
たしかに生活あってこその仕事だと思うので、御社でならそのバランスも叶えられるんだなと思いました。私が働き始めるうえでも大切な観点だと思うので忘れずに4月から頑張りたいと思います。
ありがとうございました。


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