関西大学4年生
仁里 美沙希
小田原市長
守屋 輝彦
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、小田原市長 守屋 輝彦様に、お話を伺いました。
関西大学経済学部。2024年4月より株式会社クイックに就業予定。特技は書道。趣味は海外旅行と居酒屋開拓。サントリーニ島でエーゲ海を眺めながら朝食を食べるのが夢です。
1966年11月9日生まれ。57歳。小田原生まれ小田原育ち。趣味は料理。 大学院卒業後、1992年に神奈川県庁に入庁。2010年に退職し、2011年には神奈川県議員選挙にトップで初当選を果たした。2020年5月、第23代小田原市長に就任し、現在に至る。
目次
都市工学との出会い
仁里
守屋様のご経歴をお伺いしたいのですが、学生時代はどんな学生でしたか。
守屋
大学では建築学を専攻していましたが、実は、勉強にはあまり熱が入らなくて2回留年したんです。お金を貯める為にアルバイトをし、バックパッカーとして世界中を旅していました。
仁里
そうだったんですね!
守屋
大学3年生の時に都市工学の先生に出会い、都市工学に魅力を感じ、急に研究に熱が入り始めました。これを仕事にするために公務員を選択し、神奈川県庁に入りました。
仁里
バックパッカー経験が都市工学を研究することに繋がったのでしょうか。
守屋
やっぱり知らない所に行くことで、すごく興味を掻き立てられましたね。
旅の間で受けた様々な刺激がいろんなアイデアを生み出したり。
その町の歴史について知ることはとてもいい勉強にもなったなと思います。
仁里
その新しい刺激が視野を広げ、土台になったのですね。
前例のない挑戦と周囲の反応
仁里
小田原市のデジタルまちづくりについて、こういった前例のないことへの取り組みにおいて、どんな困難がありましたか。
守屋
2020年5月に市長になり、同年の10月にデジタル化推進本部を立ち上げました。
そこで「スーパーシティを目指す」という大きな目標を掲げました。
仁里
周囲の反応はどうだったのでしょうか。
守屋
当時、小田原市はデジタル化に前向きではありませんでした。
そこで私は、逆に何も無い状況だからこそ高みを目指そうと思い、その目標を実現するために、人や技術、予算などを組み合わせて模索しました。この挑戦はとても自信に繋がりました。
仁里
職員の方々から受け入れられるのに時間がかかったと思うのですが、その際守屋様はどのように寄り添いましたか。
守屋
徹底的に外部の方のネットワークを利用し、職員と一緒に考えました。大学の先生には学識経験者として、民間の事業を行っている方には小田原市のアドバイザーになっていただき、公民連携で進めてきました。
仁里
そのようにして従来のアプローチとは違ったベクトルからも挑戦できたのですね。
守屋
今でこそオープンイノベーションという言葉がありますが、行政や市役所のことはクローズだったりするので、そこをオープンにするために他の分野に開いていきました。
仁里
なるほど。私自身も行政に対して元々クローズなイメージがあったので、意外と身近なものなんだと感じました。
こういった前例のない地域活性化に取り組む上でどんなやりがいを感じましたか。
守屋
神奈川県庁で18年働いていた頃は、閉ざされた状況もありましたが、外に出てネットワークを築くことで道が開けることを実感しました。行政は前例主義と言われますが、前例がないことはチャンスであり、将来に向けて挑戦する機会だと考えています。
前例がないからこそやってみるというのをキーワードとして市役所の中でも発信しています。
小田原北条「四公六民」から学ぶ
仁里
小田原市ならではのやり方を実装してきたと思うのですが、改めてほかの自治体にはない小田原「らしさ」、いわゆる独自性はどこだといえますか。
守屋
私は、「人々はかつて小田原を目指した」という言葉をよく使います。
小田原は1000年に渡っていろんな人を受け入れてきたように、この地域の力は人々を受け入れることにあります。
仁里
なるほど。
守屋
だからこそ民間企業との連携やオープンな姿勢が可能になるのです。
仁里
他にも、”市民ファースト”も小田原の「らしさ」のひとつだと感じました。
守屋
小田原北条の特徴のひとつ、「四公六民」という考え方があって、かつて小田原は税金が4割、民が6割で色々な収穫を分け合う地域でした。
市民を大切にし、市民を第一に考える姿勢が小田原の特徴であって、市民団体や自治体、民間団体が実際に行動する小田原を表しています。
仁里
”市民ファースト”は、小田原北条「四公六民」から着想を得られたものなんですね。
若者が描く夢を実現できるまちづくり
仁里
こういった施策を行っていくうえでの若者への影響はどういったものでしょうか。
守屋
本市では未来創造・若者課といういわゆるセクションを設置して若者の提言を積極的に市政に反映できる仕組みも作っています。
仁里
具体的にはどのようなものなんでしょうか。
守屋
民間提案制度で募集したり、若者応援コンペティションを実施したり、若者を表彰するような制度も設置しました。
2030年までに世界が憧れるまちを作ろうと掲げている本市では、10年後、社会の中心で活躍していく人達の意見を積極的に反映できる仕組みというのが非常に重要なポイントなんですよね。
仁里
副業として民間人材を積極的に登用するという取り組みもそのひとつでしょうか。
守屋
閉ざされた雰囲気がある市役所ですが、外部の人も内部に入ってきてほしいという思いがあったので、副業人材の募集を始めました。
仁里
そうだったんですね。そういった市民参加の面で、若者のニーズにこたえるために市が導入した最新の手法はありますか。
守屋
若者同士がコミュニケーションを図るためのワークプレイスマーケット、小田原イノベーションラボといったような場所を用意して偶発的なイノベーションを生む仕組みをつくっています。
「Think Globally, Act Locally」
仁里
ずばり公務員にしかできないことは何なのでしょうか。
守屋
条例や法律などは、民間からの提言などもありますが、多くは公務員が作っていくものです。非常にダイナミックな仕事ができ、公務員といっても幅広く、福祉や経済、教育といったいろんな分野があるため、社会のすべてにかかわることができるのが魅力のひとつです。ぜひ社会を変える面白みを味わって欲しいです。
仁里
規模間の大きい課題解決に携われるのも小田原の魅力ですね。
守屋
Think Globally, Act Locallyという言葉のように、小田原市役所においても、目の前の課題を着実にこなしていって地に足のついた課題解決の積み重ねで規模感の大きい課題解決に繋げています。
仁里
新卒採用において、新たに市政にかかわる若者たちに期待していることはありますか。
守屋
なるべく現場経験を積んでほしいです。アンサーは常に現場にあると考えています。
挑戦し続けることで切り拓かれた未来
仁里
私自身、不確実な状況が続く社会において「挑戦し続ける」ことは、ビジネスパーソンにとって重要な意味を持つと考えています。
守屋様自身は果敢に挑戦をし続ける秘訣などはありますか。
守屋
ある意味挫折の連続ですよね。
でもやっぱりそこで諦めないってことが大事で、現実はうまくいかないことばかりでも諦めないで、何が悪かったのかどうすればよかったのか考えて前進することが重要ですね。
仁里
聞かせていただいている中でご自身のたくさんの経験に基づいて市政を行っていると感じました。
もしこの現代で、守屋様が大学生、就活生に戻るとしたらどんな経験を得たいとお考えですか。
守屋
私自身、留年した結果、都市工学を学ぶきっかけになり、神奈川県庁に入ったからこそ市長という選択が生まれました。常に何かに挑戦し続けることで道は開けます。
仁里
なるほど。常にチャレンジし続けるという事が重要なんですね。
少しずつでも、大きな壁には近づける
仁里
最近で言うと、変革が多く先の見えない不確実な世の中で、チャレンジすることが怖いと感じる学生に対して、守屋様はどんなお声をかけられますか。
守屋
チャレンジすることは本当に勇気のいることで、怖いことで、そこには情熱が必要です。
チャレンジを設定する際、しっかりと準備を怠らないということ、もしダメだったときは軌道修正をすることが大事です。
仁里
チャレンジの壁が高すぎることで、ゴールが見えず動けなくなってしまうケースもあると思います。
守屋
一度引いて考えてみたりすることも大事で、ダメだった時は諦めて撤退をするという選択をとることも重要です。
失敗というふうにネガティブに認識はしなくていい、少しずつ、進めていけばいいと思います。
仁里
勇気ある撤退ということですね。
私の周りにも環境の不安要素から、失敗を恐れている学生が多い気がします。
守屋
何かやりたいという強い思いをすごく大切にしてほしいね。
仁里
詳しくお聞きしたいです。
守屋
それを思うだけではなく実現するために地味な努力を怠らず、そのうえで挑戦する環境を自らつくっていって実装してほしいです。ダメだった時になぜダメだったのか考えるという過程を大事にして、その繰り返しをどんどん経験してほしいですね。
仁里
なるほど。その繰り返しの積み重ねが行動力に繋がるのですね。
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