関西大学4年生
濵田 将志
株式会社カラフルカンパニー
中井 義貴
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、株式会社カラフルカンパニーの中井義貴様に、お話を伺いました。
関西大学経済学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界や不動産業界を中心に活動。大学ではNPO法人エンカレッジに所属しており、23卒の就活をサポート。趣味はカラオケとビリヤード。最近は一人ラーメンにはまっていて、深夜の豚骨ラーメンが旨い。
東海興業株式会社を経て、1989年に株式会社クイックに入社。2011年に、同グループの株式会社ケー・シー・シー(現:株式会社カラフルカンパニー)代表取締役社長に就任。その他、クイック取締役執行役員、ジャンプ株式会社取締役会長なども兼任。
目次
企業理念は、具体的に体現されているかどうかが大事。
濵田:
本日はお時間いただきありがとうございます。
中井:
よろしくお願いします。
濵田:
今回は、良い経営トップとはどんな人なのか、学生が就職先で選ぶ際に、どんな社長の会社を選ぶと良いのか。そんなテーマでお話を伺いたいです。
中井:
ちなみに濱田君はどんな会社で働きたいと思うの?
濵田:
理念に共感できる企業ですね。企業理念がどこまで浸透しているか、その理念が具体化された事例がないかを探すようにしています。特に採用ホームページの社員インタビュー記事はじっくり読んでいます。
中井さんはいかがですか?
中井:
理念に関しては濱田君と同意見だね。何を掲げているか以上に、社員一人ひとりが日々の仕事を通じて、その理念をいかに実践できているのかが大切だと思う。先輩社員のインタビュー記事を読んで、実践度合いを確認するのは非常に良いし、企業側としても、そこまで丁寧に見ていただけると嬉しいですよ。
自分にとって、必要な経験を積める機会が、その企業にあるかどうか。
濵田:
理念をさかのぼると経営者の考え方や思想にたどり着くと思います。中井さんは、どんな経営者の元であれば一緒に働きたいと思われますか?
中井:
実は、私はどんな経営者の下で働きたいかとは考えたことがなくて…。むしろ私自身が経営者になりたいと思っていたので、経営者になるための勉強ができる環境があるかどうかで選んだかな。
濵田:
中井さんは、株式会社クイックに入社されて、その後、M&Aを経てグループ入りしたカラフルカンパニーの代表になられています。経営を学べる会社は他にもあったと思いますが、その中でもクイックを選んだ理由はあるのでしょうか。
中井:
私の理想は、志ある人が集まってそれぞれが精一杯努力した結果、その集合体が社会にとって大きな付加価値を生んでいる、そんな会社を作ること。クイックはまさに、自分が理想とする経営を体現していたので選びました。
仕事を通じた成長機会の有無と、市場の成長性で企業を判断
濵田:
企業風土は、経営理念や経営者のお人柄で、ある程度判断できそうに思いますが、経営者に必要なことが学べるかどうかは、どの観点で判断されましたか。
中井:
判断のポイントは、企業の経営者に数多く会える仕事であること、成長している市場であること、マネジメント経験を早くから積めること。この3つだね。
クイックの行っている求人広告の営業は、経営者に比較的アプローチしやすい仕事。さらに、私が若かった当時は、就職・転職の自由が今ほどなかった時代だから、社会において新しい就職・転職の価値観を創造していく求人広告のビジネスは、非常に魅力的でした。
濵田:
成長している市場だと、マネジメントの機会も多そうですね。
中井:
当時のクイックは40名ほどの組織で、事業成長にともない組織が急拡大している時期。営業職として売上を上げられれば、早期にマネジメントのチャンスがあると考えました。
インターンシップへの参加は、企業の実態を知るうえで欠かせない
濵田:
ここまでポジティブな面をお伺いしてきましたが、逆に、条件があてはまっても入社しないだろうという会社はありますか?
中井:
まず大前提、その企業が善事を行っているかだよね。事業内容が世の中のお役に立つものかどうか。もう一つは、私利私欲で事業を行っていないかどうか。
濵田:
私利私欲については判断が難しいですね。ホームページや説明会など、情報は発信されていますが、どこをどう判断すればいいのか学生には難しいかもしれません。
中井:
これは本当に難しいと思う。上場企業であれば、株主構成などIR情報を参考に推察はできるけど、絶対ではないし。非上場の企業だと判断できる情報がそもそも手に入らないしね。正直、入社してみるしかない(笑) でも、だからこそインターンシップが大事なのだと思うよ。
濵田:
インターンシップは、どこの企業も素晴らしい方しか出てこないので、判断が難しいですね。
中井:
フロントに出てくるのは選抜された優秀者だから、それ以外の社員の人に注目するといいね。あとは、こんなご時世だと難しいかもしれないけど、食事やお酒の席だと雰囲気はわかりやすい。自分に合う会社を選ぶためには、いかにその会社の雰囲気を感じ取るかが大事だと思う。
就活でたくさんの企業にエントリーするのは、ムダじゃない?!
濵田:
面接などのやりとりで、その会社の雰囲気を読み取るためのヒントはあったりしますか?
中井:
人によって何を心地よいと感じるかは差があるので、自分なりの物差しを持てると判断しやすくなると思う。
濵田:
できるだけ多くの会社を見て比較するのが現実的な方法でしょうか。
中井:
冒頭で、たくさんの経営者に会いたくてクイックに入社したと話したよね。私も実際に会って話すまでは、経営者はみんな雲の上の人たちだと思っていて。でも、100人会うとその中でも差があると感じたし、1000人会うと、この人は…、と勘が働くことも出てきた。自分自身の直感を養うのは大事だよ。そのためには、ある程度、数をこなすことにも意味があると思う。
濵田:
就活では、業界をしぼったり、なかには本当に入社したい会社しか受けない、という人もいたりして。いまのお話からすると、そのやり方だと判断材料が足りなくて企業選びが不十分になる可能性がありますよね
中井:
できるだけ色んな会社を見た方がいいと思う。たまに面接で話を聞くと「御社一本です!」と言ってくれる人もいるけど、本当だとしたらちょっと心配になるよね。本当に見極めて、納得した上で選んでもらわないとお互い不幸になるから。
濵田:
就活の軸を定めるとか、自己分析とか、就活の初めの頃によく言われますが、中井さんの話を伺って、なぜそれが必要なのか納得がいきました。そもそも自分のなりたい姿を定めないと、どんな会社が自分に適しているのか判断できないし、企業風土や社員さんとの相性も、自己分析が不十分だと直感が働かなくて見抜けないということなんですね。
中井:
経営の良し悪しを見抜くのであれば、財務諸表など参考にできる客観的な指標があるけど、就活の場合は、肌が合うかも大事な要素だから、より「直感」が大事だよね。
企業理念や行動指針は、経営課題とつながっている
濵田:
ここまで良い会社を見極める方法を伺ってきましたが、経営者が会社を良くしたいと思ったときに、具体的にどんな取り組みをされるのかも興味があります。
中井:
カラフルカンパニーはもともとKCCという社名で、2014年に社名変更してカラフルカンパニーになりました。そのとき、まずやったのがColorful Wayという基本方針を定めたこと。これは地元の暮らしをカラフルにするために、こんな想いで取り組んでいきましょうという、基本的なスタンスを現したもので、同時に社内向けの行動指針も作成しました。行動指針の一つに、「誰かのやりたいより、私のやりたい」という言葉があって、これは簡単に言うと、自燃性のある人材になって欲しいということだね。
濵田:
自燃性というのは、自主性や自立性のようなニュアンスでしょうか? あえてそういったメッセージを発信するということは、何らかの課題感があったのでしょうか。
中井:
KCCは、創業者の強いリーダーシップで成長してきた企業です。ただ、私たちが経営を引き継いで、さらに事業を拡大・成長させていくためには、一人のリーダーが組織全体をけん引するやり方では限界があるから、社員一人ひとりが、能動的、自発的、自主的に、物事に取り組む組織にならなければいけない。そのことを、社員の方々に示すために、会社の向かうべき方向や、あるべき姿を明確にしたということだね。
濵田:
いまのお話を伺って、採用ホームページのインタビュー記事に書かれていた内容が腹落ちしました。地域の方の生活がどうすれば豊かになるのか、自ら課題を発見して、自分事として解決していくことが大切、と書かれていて…、そういうことなんですね。ちなみに、メッセージの発信以外に、能動的に動ける人材を育てるために、どんな取り組みをされていますか?
研修や教育には、企業の考え方が現れる
中井:
人が能動的に取り組むためには、興味を持てる分野であることが大前提。これは面接で確認するところだよね。そして大事なのが、入社後の評価。組織や上長から正当な評価を受けられて、その評価が市場やお客様からの評価と一致していることが大事。お客様に評価されると社内でも評価される。このサイクルが必要です。
あとは出発点になる、お客様に評価いただくための実務スキルだよね。2:6:2の法則で、自主的に伸びていく人は何もしなくても成長していくのだけど、そうでない人にもお客様に喜んでいただける、プロとして最低限のスキルは身に着けてもらわないといけない。それで社内研修にも力を入れるようになりました。
濵田:
学生は教育制度について、自分が研修を受ける視点でしか見られていないと思ったので、経営の観点でその制度が機能しているか、という判断軸もあると知れて勉強になりました。
面接で、本当に見られているものは何か
濵田:
就活で一番悩むのが、企業の求める人物像が抽象的で、どんな基準で合否が決まっているのかまったく見えないところです。さきほど、興味を持てる仕事かどうかが能動的に働けるかを左右する、とお話されていましたが、面接の段階で見極めるポイントは他にもあるのでしょうか。
中井:
これはあくまで当社の基準だけど、端的に言うと、3つの要素を見ています。内発的動機付けができているか、問題解決力があるか、不確実なことへの耐性があるか。
学生さんの場合は、これまで20年以上生きてきて、部活や勉強、習い事などに対して、どんな成果をあげたか、どんなふうに取り組んできたか。困難があったときに、その事実をどう受け止めて処理してきたのか。その経験から、自社での活躍の可能性を判断しています。
あとは「感じ」だよね。私たちの事業は、人対人でコミュニケーションが重要だから、感じの良い人かどうかは重視します。話の内容やその人の性格・見た目に関係なく、何となく信用できそうだなという。非常に曖昧で申し訳ないんだけれど、言語化しきれない部分も含めて判断していますね。
本音のコミュニケーションで、就活の曖昧さがなくなれば、納得できる就活になる?
濵田:
いまの話も含めて、今日お伺いしたなかで、学生が納得できる就活をするためには、企業と学生がお互いの本音をもっと知れたらいいのに、それができないから、あちこちで空回りが起こっているような気がしてしまいました。
中井:
なるほど…、私はちょっと考え方が違って、就活は全員が満足しなくていいものだと思っています。それは就活が100点の人が、その後の職業人生ずっと100点かと言えば違うし、その逆もある。社会人でいる時間は長いので、就活のある1点での満足度や社会的な評価に捉われる必要はないんじゃないかな。
濵田:
ただ、学生全員が企業を見抜く力を持つのは難しいし、ブラック企業に入社してしまう心配もあります。名の通った企業に志望が偏ってしまうのは、どうしてもあるのかなと…
中井:
確かに、社員にしっかり教育投資していて、ビジネスパーソンとしてのスタートアップが整う環境の方が望ましくはあるよね。本音で話せればお互いのズレがなくなるのもそうかもしれない。
一方で、世の中に100%の保証はないことも受け入れなくてはいけない。大企業に入社しても、上司とそりがあわなくて活躍できない人もいるし、中年になってからリストラされて困る人もいる。
学生の間は、受験やスポーツの大会のような形で、節目ごとに分かりやすい正解があるけど、社会人にはそこまで明確な正解はないのが普通。常に完璧な選択をし続けるのは難しいから、ほとんどの人は、自分の選んだ選択を少しでも正解だと思えるように、正解に近づけられるように努力するしかない。就活はある意味で、正解がない課題に向き合うためのトレーニングでもあるんだろうね。
濵田:
内定がゴールじゃない、といった言葉はよく耳にしますが、ここまでのお話を伺って、ようやく言葉の意味が理解できた気がします。これまで就活には100点満点の“納得”があると信じていましたが、実際は、社会に出たあとも悔いのないように努力し続けて、自分なりの答えや納得を得るしかないのだと感じました。
中井:
そうだね。もちろん、こういう会社がいいよ、という一般論はあると思う。けれど、実際に働いてみると、何にやりがいを感じるかは人ぞれぞれだし、自分に合う仲間や会社の雰囲気も百人百様だと徐々に気づくはず。就活ですべてが決まると思っている学生さんは多いけど、本当はそうじゃないことを、もっと多くの学生さんに知ってもらいたいね。
濵田:
お話をお伺いできて、就活の捉え方が変わりました。本日はお時間いただきありがとうございました。
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