南山大学3年
杉田 唯
ジェイアール東海フードサービス株式会社
吉村 伸一
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、ジェイアール東海フードサービス株式会社 代表取締役社長 吉村伸一様に、お話を伺いました。
南山大学総合政策学部。大学のゼミで、組織行動論・組織心理学を学んでいる。人材業界を中心に就活中。就活と並行してキャリアコンサルタントの資格取得のために勉強を行っている。
1965年5月10日生まれ。58歳。大学卒業後、1989年に東海旅客鉄道株式会社に入社、 2021年よりジェイアール東海フードサービス株式会社代表取締役社長に就任し、現在に至る。
目次
杉田
本日はよろしくお願いします。はじめに吉村様のご経験からお伺いしてもよろしいでしょうか。
吉村
私は大学を卒業し、1989年にJR東海に入社をいたしまして、JR東海の営業部門ですとか、駅での勤務経験があります。それから新幹線の整備会社、ホテル会社、あとは百貨店ですとか、広告代理店、それから出版社といったJR東海のグループ会社で働いた経歴もあります。それで2年前に出向でジェイアール東海フードサービスに来ました。
杉田
すごくいろいろなことを経験していらっしゃるんですね。
吉村
そうですね。自分が望んだわけではなくて会社からの要請なのですが、結果としていろいろな経験をさせていただいています。そういう意味では私の性に合っていますね。鉄道会社に入ったのですが、鉄道以外のことをこんなにたくさんやるとは夢にも思っていなくて。楽しい社会人生活を送らせていただいているなと思っています。
食の大切さと安全
杉田
ホームページで御社の経営理念を拝見いたしまして、「食文化を豊かにしたい」というお考えであることを知りました。御社が考える食文化のあり方とはどういったものなのでしょうか。
吉村
食文化というのは文化的側面もあるんですけれども、社員には、例えば「新幹線に乗らなくても生きていけるけれども、食べないと生きていけない。」と食の重要性について話しています。大前提ですよね。そして、事業者として食の安全も、当然ながらものすごく大事だと思っています。
杉田
「食べること」と「安全」ですか 。
吉村
はい。やはり名古屋が拠点の会社ですので、名古屋めしに代表されるような地域のオリジナリティあふれるメニューを提供することも大事にしています。もちろん私たちはフランチャイズの店舗も展開しているので、どこに行っても同じメニュー、同じ品質、同じ価格で安心して食べられる。これも大事な文化だと思っていますが、独自の観光側面も含めて大事にしていくことが大切だと思っています。
杉田
食の大切さと、安心安全というものを大切にされているんですね。私も飲食店でアルバイトをしているので食の安全に関しては特に言われます。やはり自分たちが怒られるからではなく、お客様の命や体調に関わってしまう場合があるというのが、一番気を付けなければならないところですよね。
駅で飲食事業をするということ
杉田
食文化を豊かにするために、御社が取り組まれる具体的なことがありましたら教えていただきたいです。
吉村
私たちは名古屋駅の構内に店舗を構えさせていただいています。そこで意識するのは駅や駅ビルをご利用になるお客様に、安全安心な商品を適正価格で、美味しいからと選んでいただくことです。そのために提供時間や滞在時間を考えて、ベストなメニュー開発を一生懸命行っております。
杉田
名古屋めしといった地域の独創的なメニューを作り、広めることで食文化を豊かにしていらっしゃるんですね。
吉村
はい、そうですね。まあそんなに大げさなことではないかもしれないですけれど。
杉田
名古屋が好きな身としては、多くの方がご利用される駅で、名古屋の魅力を広げていらっしゃるところが素敵だなと思いました。
吉村
ありがとうございます。
名古屋駅は特に出張や観光で新幹線をご利用になるお客様が多くいらっしゃいます。せっかく名古屋に来たから、味噌カツやきしめんを食べて帰ろうとか、ぴよりんをお土産用に買っていこうという方々がたくさんいらっしゃるのが非常にありがたいです。
当たり前のことを当たり前に
杉田
御社の求人サイトの中の一文に「飲食業界を守る」とあったのが印象深く感じました。どのような思いのもと取り組まれているのでしょうか。
吉村
やはり飲食業界はブラックだという印象を持たれる方もいらっしゃるかと思います。ですので、労働環境として、休日、休憩時間を付与する。教育もしっかりおこなって待遇をいいものにしていく。超勤もしっかり払う。それから就業規則を明示して、給与明細もお渡しするなど当たり前のことを、アルバイトを含め徹底してやっていくんだという意味です。待遇面も含めた労働環境をしっかり守るということを経営の中では強く認識・意識しながらやっています。
杉田
労働環境の改善のために取り組まれているんですね。
吉村
こういうことがおざなりになっていって、最後にどこにしわ寄せがいくかというと、安全や衛生なんですね。そこはしっかり守って対応していこうと謳わせていただいています。ただこれは別に自慢げにいう話ではなくて、どこも当たり前にやらなきゃいけないことなんですけれどもね。
杉田
当たり前のことを当たり前にやる......。
基盤をしっかり持たれている企業が飲食業界を守るとおっしゃることで、労働環境の改善がさらに伝播していくといいなと思いました。
Try to sayが価値の上昇につながる
杉田
従業員の方々がイキイキと働くための取り組みを教えていただきたいです。
吉村
私は経営者として「とにかくいろんなことを口に出して言ってください」と言っています。
それはアイディアや問題点、改善点、まあ基本点でももちろんなんですけれど、とにかく心の中に留めておかないで、“Try to say”と常に言っています。
口に出してみると、周りと言い合える状況が出来てコミュニケーションがとれ、結果として社員がよく働きいいサービスになり、いい味になる。そうすることで、お客様に提供できる価値も高めることができると思っています。
杉田
コミュニケーションをすごく大事に思われているんですね。
吉村
そうですね、杉田さんもそう思っていただけるでしょうが、どんなゼミとかサークルでもやっぱりワイワイガヤガヤとコミュニケーションを取れているところが活性化するし、良い成果が出せるし、楽しいし、イキイキすると思うんですよ。まあそれと一緒だと。
杉田
本当にそうだと思います。口に出さなければ何も始まらないですよね。
人間だけが作ることができる食文化
杉田
今後少子高齢化が加速されていく日本において、飲食業界の中でもロボットの活用などで人間が淘汰されていくのではないかと考えております。吉村様は今後の飲食業界の将来についてどうお考えでしょうか。
吉村
ロボットとかDX化とかは、どの産業も避けては通れないと思うんですよ。とりわけ、飲食業界は空前の人手不足ですから、これからもそういった流れが加速していくんだろうと思います。ただ一方で、全部を自動化したら食文化が本当に豊かになるのかという疑問があります。
杉田
たしかにそうですね。
吉村
文化は人間が作るものです。ロボットに文化は作れないと思います。そうすると、ロボットによって機械化されていく部分と、一層研ぎ澄まされた人間の知見・創造性・感覚の部分は分化されて、文化は必ず残るだろうと思います。
杉田
人間にしか生み出せないものが今後も残っていきそうですね。
吉村
例えば一流のシェフが使っている食材、盛り付け、製法をコンピューターにインプットして作った一皿は、それも美味しいし上手なんでしょう。でも、果たして人に感動を与えるかどうか。一流のものを全て自動化できるかはちょっと分からないですよね。そういった部分で人が介在する部分は皆無にはならないんじゃないかという気がするのです。
杉田
では、今後の飲食業界でも人が肝心だとお考えでしょうか。
吉村
はい。私はそう思いますね。
食文化が衰えることはない
杉田
様々なニュースで日本に食糧難の時代が来ると報道されていますが、このような状況で御社はどのように食を提供しようと考えていらっしゃいますか。
吉村
実は日本は食糧難を何度か経験しているんです。例えば第二次世界大戦の終戦の直前・直後ぐらいは日本の街の外食産業なんてほとんど何もなかったんです。
杉田
そうだったんですか。
吉村
はい。だけど文化はそれで滅びたり消えたりしたわけではないんですよ。ただ、この先私が一番恐れているのは戦争なんです。戦争が起きて輸入が止まると何も入ってこないんですよ。そうなると、弊社の商品が全部ご提供できなくなるんです。それでも、文化はやはりまた立ち直っていくと思います。
杉田
文化は何があっても立ち直っていくのですね。
吉村
そう思っています。正直、今後食糧難が来た時にどのようになるかはちょっと想像がつかないです。ただ今この瞬間がありがたい時代だということも間違いない。私が58年生きていて食糧事情は今が格段に良い。子供の頃、ケーキなんて年に3回ぐらいしか食べられませんでしたよ。今は毎日食べられますよね。コンビニでも安く売っていますし。本当に食文化が豊かな時代だと思っています。
杉田
今は本当にありがたい時代だと改めて思いました。
「学」びながら「問」うということ
杉田
不確実性が高い社会では、働く人の発想の転換や変化が必要だと思っているんですけれども、そういった中で御社は従業員の方々にどういった変化や発想の転換を期待していらっしゃいますか。
吉村
これは店長を集めた会議や本社のスタッフにも言っているんですけれども、まさに学問と同じだと思っています。
杉田
と言いますと。
吉村
学びながら問う作業が大事だと思うんですよ。それがないと、進化、発展、成長はないと思っています。問うとは何かというと、健全な現状批判の精神を持つことです。ぴよりんで言うと、「これはこうした方がかわいくなるんじゃないか」とか「これはこういう風にしたほうが美味しくなるんじゃないか」といった問いかけですね。不確実性が高い社会では学んで問うことがすごく大事だと思います。
杉田
今後の社会では意見交換が大切だから疑問に思ったことを問いかけるのですね。
吉村
そうですね。疑問に思ったことを問いかけるためには学の蓄積をしっかりやらなくてはいけません。
杉田
学ぶところだけで終わらせてはいけないのですね。
当たり前のことかもしれませんがすごく大切なことですね。
就職活動における飲食業界
杉田
就職活動中の学生にとって、飲食業界は大変でブラックだというイメージがあると思っています。
実際に御社に入社いただく学生には働き方のリアルをどのようにお伝えしていらっしゃいますか。
吉村
就職を考えてくださっている学生さんにはホームページ、会社説明会、リアルな店舗見学、お仕事体験システムなどを行っています。情報に加えてなるべくリアルを見ていただきたいんです。
ですが、今人手が足りないということで、逆に杉田さんにお尋ねしたいのですが、やはり飲食業界は就職先として選びにくい、あるいは選びたくない業界ですか?
杉田
周りには飲食業界を選ぶ人は多くないのかなというのが正直な印象です。
飲食業界の大変さだとか忙しくて休みが取れないというイメージが強くて選びづらいのかもしれません。ですが、イメージが払拭できれば増えるのではないかなと思います。
吉村
そうなんですね。
一方で、飲食業界のアルバイトにつく学生さんは多いじゃないですか。ということは飲食店舗での仕事そのものが嫌なわけではないですよね。アルバイトでの仕事としては魅力あるけれども、それを将来の生業としてやっていくことに対してはちょっと違う判断基準があるのでしょうか。
杉田
たしかに、そこに判断のギャップがありますね。
飲食業界はアルバイトをする業界だといったイメージが少なからずあると思います。アルバイトをして内情などもわかっている学生が多いとなると、正直なところ判断基準は安定や給与なのかなとも思います。
「完全週休2日制じゃないかもしれない」「なかなか休めないかもしれない」ということをリスクと捉えている場合もあるかもしれません。 そう考えると、飲食業界は安定して働ける業界なのでしょうか。
吉村
安定しているところもあるのですけれども、例えば個人店は状況によって潰れてしまうこともあるので、飲食業界は安定感があるというイメージは世間的にあまりないかもしれないですね。
杉田
アルバイトとして働いていて、内部が良かったらそのまま社員になる場合もあると思うのですが、忙しい社員さんを見ると、自分もそうなるんだと思うかもしれないです。アルバイトはお客様から感謝の言葉をいただいた喜びの感情だけでもやっていけるかもしれません。ですが、クレームや苦情が入った時に一番責任を取らなければいけないのが社員だと思うので、やはりアルバイトとは違うネガティブな感情が生まれてしまうのかなと感じています。
吉村
なるほど。飲食会社も、運営している会社の本社の中に総務、人事、販売促進、メニュー開発などいろんな仕事があるので、トータルで見ていただくと学生さんの就職希望幅がもう少し広がっていくのかなと思います。でも、たしかにマイナスイメージが強くあると私も思うんですよね。それもあって、学校を卒業してパティシエや調理師になった方が海外に行ってしまうことが最近は増えているそうです。
杉田
そうなんですか。初めて知りました。
吉村
こういった海外流出の問題をどうやって変えていくのか、 あとは食文化の担い手をどうやって育てて、採用していくのかも考えないといけないんですよね。日本の飲食業界は将来大丈夫かなと思ってしまいます。
杉田
私も御社にお電話させていただくまでは、飲食業界に不安がなかったと言えば嘘になるのですが、御社は休日数がほかの飲食会社に比べて多く、ホワイトという印象を受けました。このメディアを通して吉村様のお考えが伝わることで、御社の魅力が伝わればと思います。
吉村
ありがとうございます。心強いです。 元々飲食業界というのは小学生がなりたい職業の中にあったんですよ。子供がそう思うということは、飲食業界は人間の根幹に関わるプリミティブな労働意欲とその楽しさとか社会貢献欲求を満たせる業界なんだろうと思っています。
杉田
そうですね。
吉村
だからそこにうまく訴求しつつ、サービスや商品提供の担い手として、飲食業界のことを考えていただける学生さんに来ていただけるような打ち出しをしていけたらいいなと思います。
志を持つことの大切さ
杉田
最後にどういった学生に御社にご入社いただきたいとお考えでしょうか。
吉村
やはり食に興味のある方で、飲食事業をやりたいと本当に思ってくださっている方です。その中でも一番求めたいのは、志や意欲を持っている方です。
杉田
志ですか......。
吉村
はい。人間、やはり最後は志だと思っているんですよ。
志を高く持てる学校、持てる企業に入ることがものすごく大事だと思うんですよね。それは別に有名か有名じゃないかとか、偏差値が高いか低いとか、給料が多いか少ないかとかでもなくって。自分の志を一番高く持てるところに入って、精一杯仕事していただきたいなと思っています。それが弊社だったらもちろん一番ありがたいです。
杉田
志、大切ですよね。志の中にも意味がいろいろあると思うんですけれども、御社の中で具体的にこういった志が欲しいみたいなことはございますか。
吉村
そうですね、業務によって変わるんですけれども、大きく利益を上げているのは店舗ですので、店舗にフォーカスすると、接客、味やサービスが好きでいてくれる方に選んでいただける会社にしていきたいなと思いますし、そう思って入って来ていただく方を採用したいなと思います。
杉田
どこでもいいのではなく、御社の接客や味、サービスを提供したいという志を持たれた学生さんにご入社いただきたいのですね。
吉村
そうですね。その志を一番端的に表すと、さっきの経営理念の「食文化を豊かにしたい」というところですね。私たちも持ち続けたいし、それに共感してくれる学生さんに来ていただきたいなと常々思っています。
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