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学生から社会人、そして自立した個へ。

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学生から社会人、そして自立した個へ。

関西大学4年生

濵田 将志

株式会社Lib Work

瀬口 力

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社Lib Workの代表取締役社長 瀬口力様に、お話を伺いました。

関西大学4年生
濵田 将志

関西大学経済学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界や不動産業界を中心に活動。大学ではNPO法人エンカレッジに所属しており、23卒の就活をサポート。趣味はカラオケとビリヤード。最近は一人ラーメンにはまっていて、深夜の豚骨ラーメンが旨い。

株式会社Lib Work
瀬口 力

熊本大学大学院法学研究科卒。在学中、25歳のときに株式会社エスケーホーム(現:株式会社Lib Work)社長に就任。2013年度「ダイバーシティ経営企業100選」に選出。2015年、福岡証券取引所Qボード上場。2019年、東京証券取引所マザーズ上場。

目次

濵田:
関西大学4年生の濵田と申します。プライベートで、エンカレッジと言う学生団体の運営などもさせていただいているので、その活動も踏まえて、就活・就職について学生が疑問に感じていることなどを伺えればと思います。

瀬口:
LibWork代表の瀬口です。当社は、デジタルマーケティングを強みとして住宅を施工・販売しています。保守的な住宅業界のなかで、異端児的な存在として様々なイノベーションを起こして成長してきた企業です。

濵田:
熊本本社の企業で上場している会社は珍しいですね。

瀬口:
2019年に東証マザーズに上場しました。おかげさまで、いま成長真っただ中という状況です。


地元志向の優秀学生を獲得できたことが、成長の原動力に。

濵田:
御社は熊本を中心に九州で事業を展開されていますが、近年は関東にも進出されています。人材の質や価値観など、地方と大都市圏で違いを感じることはありますか。

瀬口:
地方出身でも、東京の企業に就職して活躍されている方はたくさんいらっしゃいます。人材の質については一概にどちらが高いとか、そういったことはないように感じます。

ただ地方のなかでも、九州は地元で就職したいと考える方が多い地域です。つまり、他の地域であれば上京してしまうような野心的な方が、地元に残って就職されることが多い。当社はそうした優秀な方の受け皿となることで、人材に恵まれ成長してきた部分もあります。


戦略的に就活する学生も増えている。

瀬口:
学生とひとくくりにしても、いまの学生って千差万別だと思うんですよね、正直。濵田さんから見て、学生が企業に求めることってどんなものがあるのでしょうか。もちろん、福利厚生や年収という意見もあると思いますが。

濵田:
自分の貢献がどれだけ目に見えるかが大事かもしれません。仕事を通じて、社会にどんな影響を与えられるのか、社会貢献になる仕事なのかといったことですね。

瀬口:
たしかに面接をしていると、社会貢献という言葉はよく聞きます。会社の成長に貢献したいと言ってくださる方もいます。ただ、一方でメディアの学生アンケートなどを見ると、休日が多い会社が良いという意見も多いですよね。

濵田:
休日など待遇面の欲求が強いのは事実だと思います。ただ、学生側の意識も少しずつ変わっており、キャリアプランを描いてファーストキャリアとしてどんな企業に行くべきかと戦略的な就活をする学生も増えています。安定だけでなく、自分に合った企業を見つけるという意識が高まっているのは感じます。

瀬口:
たしかに当社は新しいサービスを世の中に送り出していくとメッセージしていることもあって、比較的、チャレンジ精神の旺盛な方にご入社いただけている気がします。ただ、それでも昔に比べると地方に限らず、挑戦に対して消極的になっている印象は受けますね。

濵田:
海外に行く人も減っていますよね。

瀬口:
日本が成熟した社会になったことの裏返しかもしれない。お金に対するガツガツ感は、かつてほどないのでしょうね。海外赴任は、昔は花形でしたけど、いまは赴任が決まると「じゃあ辞めます」と、転職してしまう人もいるくらいですから。


成長実感と社会の役に立つ充実感がなければ、仕事は楽しくならない。

濵田:
瀬口様は、インターネットを通じて住宅販売する新しい取り組みを推進されてきたと思いますが、安定志向の根強い社会のなかで挑戦することの意義をどのように学生に情報発信されていますか。

瀬口:
説明会のときに話すんですけど、たとえば、ここに石を数えるだけの仕事があって。1日きっちり8時間。ずっとずっとずっと1日中、石を数えるだけ。そして年収は1000万円。

お金と休みだけ見たら良い仕事かもしれないけど、そこにクリエイティブ性もなければ誰かを喜ばせることもありません。こういう仕事だったら、時間が無駄に感じませんか。楽しいと思いますかと。

濵田:
そういうことですね。

瀬口:
私たちが目指すのは、仕事していて「あっ、もうこんな時間だ」と時間が短く感じられるような、充実した1日をすごせる会社です。新しいことに挑戦するのは大変ですが、自己成長と社会貢献が結びつく働き方のほうが楽しいはずです。そんな話を学生さんにしています。


学生にとって最大のリスクヘッジは、早期に個を確立すること。

濵田:
挑戦したいと思う一方で、学生は将来のリスクも考えてしまいます。チャレンジの機会が豊富な企業ほど、待遇などの基盤が整っていないことも多く葛藤を抱えています。

瀬口:
大切なのは、自分を磨くことなのでしょうね。さきほど、ファーストステップとしてどの会社に入るかと話されたのが、まさにそうだと思いますよ。私たちの頃とは事情が違います。私たちはファーストステップではなく、一生働くと覚悟して就職していましたから。

濵田:
終身雇用が中心で、転職を考えにくかった時代ですね。

瀬口:
いまとは事情が違いますね。若い方は、企業を使って自分のスキルをどう高めるか、どのようにビジネスパーソンとしての人格形成をしていくかを考えればいいですよ。個の確立を目指すことが、リスクに対する一番の備えになると思います。

濵田:
たとえばベンチャー企業に入社して、自分を鍛えるような選択もありということですね。

瀬口:
そうですね。そこでスキルを身につければ、次のステップではその経験を活かして、また新しい挑戦ができるはずです。一生働くわけじゃないので、恐れる必要はないです。次のステップが準備されている世の中になってきていますから。


個の確立を果たすために、必要な要素とは?

濵田:
さきほどおっしゃった、個の確立とは、学生が言う市場価値を高めるという発想に近いものだと感じます。個を確立するために大事な要素とは何だと思われますか。

瀬口:
どこででも戦える力をつけることでしょうね。具体的には、企業で仕事が与えられたときに、ただそれをこなすのではなく、自分のものにするという意識で取り組むといいですよ。

目の前の仕事に真剣に向き合っていれば、「この案件は、こちらの事例に照らし合わせたらどうなんだろう」「この方法を、別のチームに横展開したらどうなるんだろう」と、発想が広がっていきます。まさに経営者の働き方とはこういうものです。個の確立とは、経営者精神を身につけることなのだと思います。

濵田:
御社は全員経営を掲げられています。まさにいまお話いただいた個の確立に、全社で取り組まれているのだと思います。ただ、言葉を掲げるだけではなかなか推進が難しいとも感じます。推進のために、何か施策を実施されているのでしょうか。

瀬口:
たとえば今、世の中にある住宅のプランをデータベース化した上で、AIを活用して最適なプランをお客様に提案できるような仕組みを開発しています。このプロジェクトに関わっているのは、すべて1年目の社員です。

濵田:
いきなり任せるんですか。

瀬口:
社会人経験のない自分たちにそんなことができるのかと不安の声もあがりますが、思い切って任せると当事者意識が生まれて、積極的に外部の専門家とも連携しながら動いてくれています。こういう経験を積み重ねていくと、オーナーシップが育っていきます。


従業員に、オーナーシップ持たせるための教育。

濵田:
仕事を任せるにあたってマインドチェンジと言いますか、学生から経営者の方向に考えを切り替えていくために、何か教育をされていたりしますか?

瀬口:
勤続年数などに応じて自社の株式を与えるESOP制度を作りました。株式を持つことで、自分たちの働きが外部から評価されることに敏感になるわけですね。まさしく経営者のように。

売上目標を掲げるにしても、ただ上に言われたからではなく、市場からこんな期待をされているから、我々はこのくらいの売上を目指していかなければいけないんだと、自分たちの意思で取り組むようになりました。オーナーシップを持つと、人は劇的に変わります。

濵田:
そして挑戦に前向きな社員が増えてきた際に有効なのが、御社のチャレンジ制度のような、挑戦を促す制度でしょうか。

瀬口:
まさにそうですね。本人の希望を受けて、3年目の社員に店長を仮で任せてみて、実績を残したので、そのまま正式に店長に飛び級で昇格した例があります。あとは日本で一番大きい無印の家の展示場があるんですが、そこの運営を任せているのも4年目の若手社員ですね。


オーナーシップとモチベーションの高さは別のもの。

濵田:
やはりチャレンジする方は、もともと意識が高かったんですか。

瀬口:
いえいえ。たしかにもともと優秀でモチベーションも高かったですけれど、オーナーシップがあったわけではないですよ。ただ、任されて責任を負うことで視点が変わりました。部下を気遣ったり、お客様に対する意識が高まったり。自分以外にも意識を向けられるようになったのは、大きな変化だと思います。

濵田:
せっかくチャレンジできる制度があっても立候補する人がいないと機能しないと思いますが、手を挙げる方が出てくる風土を作るための取り組みなどはありますか。

瀬口:
うちは4人以下のチーム制で組織運営しており、それぞれのチームにユニットリーダーを置いています。そのリーダーの一番大事な仕事が、行動規範、プリンシプルと私たちの事業の目的、パーパスをメンバーの方々に共有していただくことです。


価値観の合う企業に就職すると、ありのままの自分でいられる。

濵田:
数字の管理などではなく、考え方の共有なんですね。

瀬口:
業績も当然大事ですが、それ以上にプリンシプルとパーパスが重要です。なかでも重要視しているのが、プリンシプルの一つである“誠実さ”です。私たちは正しい行いができているだろうかと。

Googleの行動規範にDon't be evilという有名な言葉がありますけども、そういうことなんですよ。その行動規範を私たちは体現できるような仕事をしっかりやっていきたい。

濵田:
いまのお話は就活生に刺さると感じました。働く目的や原理原則は学生が気になるポイントだと思います。

瀬口:
そうですよね。就活は損得だけで決めると、たぶん間違うと思います。学生と違って、社会人はお金をもらう側になるから間違いなく大変なんですよ。その大変さを支えてくれるのが、働く意義につながるプリンシパルやパーパスです。そこが一致した企業に入るのが、結局は一番楽だと思います。自分を偽ることなく働けますから。


失敗は進化(イノベーション)の通過点。

濵田:
働く目的や考えを一致させる点で言えば、御社の住宅業界の異端児としてイノベーションを起こすというスタンスは、学生に魅力的に映るのだろうなと思います。実際の取り組みのなかで印象深いエピソードがあればお聞かせいただけますか。

瀬口:
色々チャレンジしてきましたが、たとえばYouTubeの再生数だとハウスメーカーのなかで私たちがトップです。あと3Dプリンターで住宅を作るとかね。ただ、たくさんチャレンジしているぶん、失敗もいっぱいあるんですよ。

濵田:
たとえばどんな失敗ですか。

瀬口:
熊本で一番の繁華街、下通という栄えた場所があって、そこに店舗を出したら大量に集客できると考えたんですよ。それが見事に大失敗。

濵田:
お客様が来なかったんですか。

瀬口:
そうなんですよ。繁華街だから通りを歩いているのは、遊びに来た学生さんとか飲みに行くサラリーマンの方とかばかりなんですね。持ち家を検討する方が全然いない。

濵田:
じゃあすぐに撤退して…

瀬口:
はい。でもその経験を活かして1年前に福岡のイオンモールにモデルハウスを作りました。ショッピングモールなら、住宅をご検討されるファミリー層の方がたくさんいらっしゃいますからね。今度は大成功で想定の2倍以上の成果が出ました。この成功事例が広まり、いまは全国のモールを運営している企業様から多くのオファーをいただいています。

濵田:
そういうお話があると、社員の方もチャレンジしやすくなりますね。学生側の視点からすると、失敗が怖い、成功し続けないといけない、という想いがあったので、このお話を伺えてよかったです。

瀬口:
失敗は成功までの過程の一つです。たぶん私も、繁華街で失敗していなければ、ショッピングモールに出店していなかったと思います。失敗のおかげでヒントを掴めました。


就活に苦労した人は、そのぶんプレゼン練習ができたと考える。

濵田:
就活においても、失敗が怖くて積極的に行動できない学生は多いです。そういった学生に対して伝えられることはありますか。

瀬口:
就活においても失敗はどんどんした方がいいと思います。早い段階から、できるだけ多くの企業にエントリーし、自分の課題を浮き彫りにしていき、最終的に本命の企業に挑戦すると上手くいきやすいのではないでしょうか。

濵田:
最近はエントリー社数そのものが減っていますね。

瀬口:
そうですよね。聞くと数社しか受けていない人が多い。昔はその10倍くらいの数をエントリーしていました。

濵田:
就活も効率よくやろうとする学生が増えていますね。

瀬口:
私は就活に苦労したと話す学生さんに、よく伝えてるんですよ。就活はプレゼンの練習の場になると。自分の人生がかかったプレッシャーのある状態で、真剣にそのトレーニングをできているわけだから、就活で苦労した人のほうが一社で内定した人よりも、遥かに大きなスキルを手にできたんだよと。

濵田:
就活で苦労する学生は本当に多いので、ぜひその考え方は知ってもらいたいと思いました。

瀬口:
失敗は無駄じゃないから、自分にぴったり合う企業がどこかにあると信じて、ぜひ頑張ってもらいたいですね。


顧客を大切にする企業の見抜き方。

濵田:
ここまで色んなお話を伺ってきましたが、今後の事業展開のなかで瀬口社長が重要視されているのはどんなことになりますか。

瀬口:
それは顧客重視の経営ですね。これは絶対譲れないことで、新卒の入社式でも必ずお伝えしています。どんなに辛いことがあっても顧客重視の姿勢は絶対に崩してはいけない。

濵田:
私は瀬口社長と直接お話できて、御社の顧客重視の姿勢がようやく感じ取れたのですが、学生が就活で同じような想いの企業を探したいと思っても、なかなか判別が難しいと感じていまして…

瀬口:
企業理念で似たようなことを伝えている企業は多いですからね。そうしたら、こんな観点で質問してみるといいですよ。たとえば、お客様と従業員の利益、どちらかを選ばなければいけない場面があったときに、どちらを選びますかと。ほとんどの会社は自社の社員を選びますよ。

濵田:
なるほど。

瀬口:
お客様が困っていて、今日中に対応しなければいけない。でも、担当者は休日だと。よくあるシチュエーションだと思います。そんなとき、当社ではお客様対応について3原則を定めていて、重大なことで、その人しか対応できず、緊急度の高いものに限っては、対応していただく約束になっています。


就職は、その企業への投資だと考えると上手くいく。

濵田:
最後に、社長がもう一度就活するとしたら、どんなふうに活動されるか伺いたいです。

瀬口:
私だったら、株を買うのと同じ考え方で企業選びをします。たとえば、トヨタは巨大で素晴らしい企業だけど、自分が生きているうちに、ここからさらに何倍にも成長するだろうかと。逆に、いまは小規模でも、やがて何倍にも成長しそうなビジョンを描いている企業があったら、私は選考を受けてみたいと思うでしょうね。

濵田:
株を買うと考えると、業績も見ないといけないですね。

瀬口:
そう。成長性も大事だけど、倒産したら困りますから財務も見るようになります。あとはコンプライアンスなどのリスクですね。違法な働かせ方をするような企業は、ブラック企業ということで、社会的な制裁を受けます。だからそんな会社は選べないと。

濵田:
株を買うという発想は自分にはなかったので、新鮮な考え方だと思いました。他に瀬口社長が見られているポイントはありますか。

瀬口:
話が戻るけど、企業選びは結局、プリンシプルやパーパスに行きつきます。その企業がどれだけ社会に貢献できるか、世の中を良くしていけるか。株を買うのには、その企業を応援する意味合いもあります。自分自身が社員として、その企業の成長を応援したいかどうかです。そういう意味でも、価値観の一致する企業に就職するのが一番だと思います。

濵田:
ありがとうございます。今日、社長のお話を伺って、成長性や業績、価値観、就活で見るべき軸が様々あることに改めて気づけました。

瀬口:
私も非常に勉強になる時間でした。学生さんが本気で就活に取り組まれているのを改めて感じられました。そして、企業側も待遇や福利厚生など表面的な要素で学生さんを取り込もうとするのではなく、本質的な情報発信を続けることで、採用のミスマッチを防ぐ努力を続けていかなければいけないと強く感じました。

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