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“みんなと同じ”では見つけられない。納得就活の裏道。

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“みんなと同じ”では見つけられない。納得就活の裏道。

関西大学4年生

濵田 将志

丸栄産業株式会社

内田 康起

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、丸栄産業株式会社の代表取締役社長 内田康起様に、お話を伺いました。

関西大学4年生
濵田 将志

関西大学経済学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界や不動産業界を中心に活動。大学ではNPO法人エンカレッジに所属しており、23卒の就活をサポート。趣味はカラオケとビリヤード。最近は一人ラーメンにはまっていて、深夜の豚骨ラーメンが旨い。

丸栄産業株式会社
内田 康起

1956年北九州生まれ。横浜国立大学工学部機械工学科卒。大学時代は自動車部に所属し、ラリーに没頭。大手総合商社の営業勤務を経て、1985年に丸栄産業株式会社に入社。2003年に代表取締役社長に就任、現在に至る。好きな作家は塩野七生・山本七平・司馬遼太郎。

目次

濵田:
本日はお時間いただきありがとうございます。よろしくお願いします。

内田:
よろしくお願いします。

濵田:
まずは御社の事業について簡単にお聞かせいただいても良いでしょうか。

内田:
丸栄産業はマンションやビル、プラントなどの防食メンテナンスを行う会社です。建物に使われる鉄やコンクリートは年月が経つと劣化していくので、耐熱・耐酸などの対策を施し、定期的なメンテナンスを行うことが欠かせません。建物を利用する人々の安全にも関わる公共性の高い事業です。


独りよがりでもいいから、自分の意思を持つ。

濵田:
御社は採用情報の中で、人材育成へのこだわりを強くアピールされています。内田様の社員の成長についてのお考えや具体的に取り組まれていることについて、ぜひ教えていただきたいです。

内田:
まず、成長は人に押し付けられるものじゃない。これが一番大事なことですね。たとえば、濵田さん本人が、伸びたい成長したいという意欲をもっていなくてはいけません。子どもの頃は、親の指示に従うだけでも成長できますが、大人はそれだと成長が止まってしまいます。

濵田:
受け身な人を、指示待ち人間と言ったりもします。やはりそういう姿勢はよくないということですね。

内田:
やらされ感がある状態で働くのはよくないです。自分はこんなことをしたい、こんなふうになりたいと、内なる欲求を持つことが大事だと思います。その欲求は多少独りよがりでも、未熟でもいいんです。まず大前提として、生命力というか、成長するためのエネルギーが絶対に必要であるということですね。

濵田:
そういうモチベーションの高い人材がいたときに、御社としてはどんなふうに成長させていくんですか。

内田:
会社が社員にしてあげられることは2つしかありません。ひとつは待遇を良くして、社員を経済的に豊かにしてあげること。もうひとつは、力を発揮するための機会や環境を提供してあげること。オフィス環境もそうですし、パソコンや営業車など、成果を出すために必要なものを整えてあげるということですね。

濵田:
生活の不安がなくて、働く環境も整っていたら、あとはモチベーションさえあれば…、ということですね。


衰退業界でなければ、どこに就職してもなんとかなる。

濵田:
いまのお話ですごく腑に落ちた半面、分からなくてぜひお聞きしたいのですが、学生によくあるのが、成長したいモチベーションはあるけれど、どういう方向に伸ばせばいいか見えない。もっと具体的に言うと、どんな会社で頑張ればいいかがわからないという声が多いです。この辺り、何か伝えられることがあればぜひお聞きしたいです。

内田:
非常に難しい根源的な話だね。私の65年の経験で言うなら、これは結果論かもしれないけど、どんな業種・どんな企業に就職しても一緒だと思うんですよ。本人のモチベーションの影響が一番大きいと思います。

濵田:
本人のモチベーションを高めていけるような会社であれば、業種などにこだわりすぎなくてもいい、という意味合いでしょうか。

内田:
そうですね。業界が衰退してなくなるようなところはダメですが、それ以外ならあとは本人次第じゃないかな。あとは人生観や価値観ですよね。何をもって成長と捉えるかは、そのひとの考え方によっても違ってくると思います。


成長とは、他者への気遣いができるようになること。

濵田:
成長について、御社の中ではどんなふうにメッセージ発信されているんですか。

内田:
当社は社業を通じた人間づくりを基本理念にしており、その副題として感謝・成長・ご恩返し、という言葉を掲げています。成長はあくまで手段であって、目的は恩返しなのだ、という考えです。

濵田:
恩返しというのは、誰に対する恩返しになりますか。

内田:
育ててくれたお父さんお母さんに初任給で何かプレゼントするのも恩返しだし、友達の誕生日を祝ってあげるのも恩返しです。ようするに、人の喜ぶ顔を見て自分が嬉しくなるような人間になりなさいと言っています。仲間や先輩からの恩に報いるために、自分ができることを精一杯やって社会に貢献しよう。その一つが会社で仕事を頑張ることですよ。

濵田:
スキルや経験だけでなく、人間的な成長こそが重要なんですね。

内田:
俺が俺がと自分本位な考えをしているうちは、偉くなろうがお金持ちになろうが、本当の意味で成長したとは言えないと思っています。

濵田:
納得感はあるのですが、自分のことだけで精いっぱいの学生には、なかなか至れない境地だとも思います(笑)

内田:
もちろん、私も若い頃は無理でしたよ(笑) お金を稼ぎたいとか美味しいもの食べたいとか。自己中心的で短絡的な考えばっかりでした。

濵田:
若いうちはどうしても、野望とか個人のやりたいこと本位で突っ走ってしまうものだと思ったので、社長もそうだったとわかって少し安心しました。でも、いまお話しいただいた内容こそが、成長とは何かという問いに対する、一つの本質的な答えなのかもしれないと感じました。


20~30代は自分のために頑張れれば、それで十分。

内田:
若い方には、まさにいま濵田さんが言った、欲のエネルギーがないとダメなんですよ。美味しいものを食べたい。旅行したい。いい服を着たい。モテたい。何でもいい。20代、30代くらいまでは、仕事を頑張るのが不純な動機であってもいいと思います。

濵田:
だんだん変わっていくということですか。

内田:
仕事を通じていろんな人に出会って、社会の色んな面を見て心変わりしていきます。俺が俺がと自己主張していたのが、俺はもうそろそろいいから、周りの人のために何かしてあげられないかと、自分の内から外へ意識が広がっていく。20代、30代は、将来に向けて色んな経験をしておいたほうがいいです。

濵田:
20代、30代の時期が大事だとすると、若いうちにどんな働き方ができると良いでしょうか。トヨタが終身雇用をやめると発表するなど、個人の市場価値が注目されることも多くなっています。

内田:
市場価値の観点で言えば、モチベーションが高くて行動力があって、ポジティブシンキングで明るく元気で素直。常に自分を省みる謙虚さもある。変化を楽しめる心を持っている。こんな若者なら、どんな職業どんな会社でも注目してもらえると思います。

濵田:
それを全て兼ね備えた人は、なかなかいなさそうですね。

内田:
ではもう一つ現実的なところで言うと、読み書き計算などの最低限の教養があれば、あとは全部その人のハート。心意気で決まると思っています。これは社員にも常々伝えています。

濵田:
学生はどうしても自己分析を突き詰めるなど、小難しい方向に行ってしまいがちなので、そういうご意見をいただけると、もう少し視野を広げたり、視点を変えたりするきっかけになると思います。


失敗そのものよりも、失敗に至る過程こそが成長につながる。

濵田:
ただ、御社のように人材育成にこだわりのある会社でなければ、個人が持つモチベーションもどこかで破綻してしまうように思います。どんなこだわりをもって、人材育成していくと上手く育てられるのでしょうか。

内田:
意欲があると言っても、人それぞれベクトルが違いますから、まずはその人が何をやりたいのかを聞いて、やりたいことを思い切ってやらせることでしょうね。多少の失敗はあってもいいから、どんどんチャレンジさせてあげる。

濵田:
成長するために失敗は必要ですか。

内田:
失敗そのものよりも、未知の仕事に対して、わからなくて悩んだり、冷や汗をかいたり、足の震える想いをすることが成長につながるのだと思います。だから、自分がやったほうが早いと、何でもやってしまう管理職の人がたまにいるけど、あれは若い人の成長機会を奪ってしまうから良くないんです。


若者の自主性に甘えない。企業側から挑戦を促す。

濵田:
御社で起きた失敗で、社長としては別にたいしたことないよ、というエピソードはあったりしますか。社員と社長では、同じ失敗に対する感じ方も違うと思います。

内田:
最近の若い方の育成は、声かけの塩梅が難しいと感じています。失敗を過度におそれて挑戦に対して尻込みする。かと言って、「失敗しても大丈夫」と言いすぎると、逆に緩みすぎてしまう…。

濵田:
そんな中でも、御社で実際に活躍されている方で言うと、どんな方がいらっしゃいますか。

内田:
自ら手を挙げて挑戦するとなると、なかなかいないのが実情です。だから、会社から課題を与えて挑戦させることにしています。

濵田:
どんな挑戦をさせるんですか。

内田:
たとえば、九州工業大学出身の女性がいるのですが、入社後に現場を経験した上で、やっぱり研究に興味があるという話があって。それで会社として、博士課程に3年行ってもらって、無事に博士号を取ったという事例はありますね。あと同じく機械系の学部出身の社員に、新しく取り組んでいるロボット事業の仕事を任せたりもしています。

濵田:
会社が課題を与えて後押しするんですね。

内田:
最初は自主的に手を挙げるのを待っていたのですが、それではダメだと気づきました。若い方の特性に合わせて、会社側が積極的に投資をしなければいけない。若手に挑戦させるにはどうすればいいか、まだまだこれから試行錯誤が必要です。

濵田:
そういうご苦労されている話を伺うと、会社側で配慮いただけるのは嬉しいと思う一方で、私たち学生側もマインドを入れ替えていかなければいけないと感じます。


大学での学びは、一般的な企業・職種においてどう活きるのか。

濵田:
ちなみに、防食メンテナンスの仕事は文系理系で言うと、理系のほうが向いている仕事なのでしょうか。

内田:
文理は関係ないですよ。実は私自身は工学部出身ですが、新卒では総合商社に入社しています。

濵田:
確かに、商社は文系のほうが多いイメージがありますね。

内田:
当時、入社後の面談のときに人事の方からマッチ箱を見せられましてね。「内田さん、このマッチ箱の説明をしてください」と言われて。それで私は、側薬に赤燐が使われていて…、とマッチの仕組みを一生懸命に説明するわけです。

濵田:
なるほど…。

内田:
そこで人事の方に言われたのは、「内田さんは工学部だから赤燐がどうとか説明するけど、経済学部の人だったら、1箱の製造コストがいくらで売値がどうでという話になる。芸術系の人だったらパッケージデザインの話をするかもしれない。大事なのは、色んな視点で物事を見られる人が協力し合うことなんだよ」と。

濵田:
確かに!そうですね。

内田:
いまで言う、ダイバーシティの考えに近い発想です。個人単位で均一になる必要はなくて、会社全体で見た時にバランスが取れてればそれで良い、ということですね。みんな同じで金太郎あめのような会社だと面白くないですから。

濵田:
そのお考えがベースにあるので、文理は関係ないということなんですね。

内田:
ほとんどの仕事では、文理も学部も関係ありません。影響があるのは、研究職とか教授とか、一部の専門職だけでしょう。一般の仕事でも活かせることがあるとしたら、学びの中で培われた、モノの捉え方や感性なのだと思います。

濵田:
その考え方はすごく納得感があります。大学で学んだことは就職後にどう活きるのか。その一つの答えだと感じます。


安定志向と成長志向の人が、共存できる環境。

濵田:
御社は、人材に対して柔軟なお考えがあって、育成にも力を入れていて。でも、すべての人が成長志向にはなれないとも思います。安定志向の人と成長志向の人が組織内に混在したときに、摩擦が起こるのをどう対応されているのでしょうか。

内田:
これはかなり問題だったので、3年前に人事制度を変えました。一本線のキャリアだったのを複線化しました。具体的には、マネジメントコース、自己都合コース、専門職コースの3つにわけています。

濵田:
それぞれの違いを教えていただけますか。

内田:
マネジメントコースは、いわゆる総合職的なキャリアです。全国転勤があるかわりに、昇格機会が多く、最終的には役員も目指せるような働き方です。自己都合コースは、地元で転勤なしで働けるけど、ある地点で昇格はストップするという形になります。専門職は、転勤はあるけど、職種はずっと変わらずその道を極めていけるコースです。

濵田:
共通の制度を設けるのではなく、コースをわけるんですね。すごく働きやすそうに感じます。

内田:
道路にたとえるとわかりやすいと思います。一車線しかないと、前を走る車が遅いとイライラしてしまうけど、追い越し車線があると追い越せばいいのでストレスになりにくい。もちろん、コースは途中で何度でも変更可能です。個人の志向の問題だけじゃなくて、育児や介護などで一時的に、自己都合の働き方が必要になることもありますからね。


就活では、周りに流されない勇気を持つ。

濵田:
ここまでお話を伺って、もし社長が就活するとしたらどんなふうに会社を選ぶのか知りたくなりました。就活生にとっても参考になると思うので、ぜひお聞かせいただけますか。

内田:
対談の最初の方で、業界がなくならなければどんな会社にいってもいい。あとは本人のやる気次第。そんな話をしたと思います。

濵田:
はい。

内田:
私なりに会社を選ぶポイントがあって、それはいま調子のいい会社じゃなくて、将来良くなる会社を選ぶことです。私の好きな言葉で「人の行く裏に道あり花の山」という言葉があります。

濵田:
どういった意味ですか。

内田:
いわゆる逆張りのような考え方です。表通りの桜並木を見ようとしても押し寄せる人で大混雑している。でも、一本わき道に入れば、たった1本かもしれないけど満開の桜を独り占めできるかもしれない。

就活に置き換えると、みんなが行くから、人気だから、大手だからと、周りの人と同じ基準で企業を選ぶのではダメだと。他の人と違う道に進めば、結果的に優位なポジションを得られる可能性があるということです。

濵田:
御社の防食メンテナンスという事業も、将来にわたってずっと必要とされ続ける事業ですね。

内田:
その通りです。私は家業を継ぐ形で経営者になったのですが、最初は防食メンテナンスと言われてもピンとこなかったんですよ。でも、よく考えたら、鉄もコンクリートも鉄器時代やローマの時代からずっと変わらず使われていて、そのメンテナンスは必ずしなければいけない。これほど需要の底堅い事業はありません。

濵田:
建設は学生の人気があまりない業界ですが、まさに桜の咲く裏道なのかもしれないですね。


結局、出世したほうが仕事は楽しい。

内田:
裏道を見つける考え方の一つが、鶏口牛後の視点です。大企業の末端で働くより、中小企業でも頭に近いポジションになったほうが、案外、仕事は楽しい。待遇もいいかもしれない。

濵田:
頭で理解できても、学生にはなかなか難しい選択ですね。

内田:
大手志向になってしまうのは、自分に自信がないからなのかな…。だから分かりやすい安定を求めてしまう。本人だけなく、進路に意見するご両親も含め、どうしてもブランドに頼りたくなってしまうのでしょうね。

濵田:
とは言え、内田社長も新卒では丸紅に入社されていますよね。

内田:
丸紅は大手だから選んだわけじゃないですよ。古い話なのでご存じないかもしれませんが、当時の丸紅は、ロッキード事件の渦中にあって、総合商社のなかでは最も落ち目の企業でした。規模が大きい会社にも関わらず、人気が落ちている。だからこそ逆に、リーダーシップを発揮できる可能性が高いと考えて入社しました。

濵田:
単に大手だから、みんなが行くから、人気だからではなく、時流を読んだ上でチャンスありと見込んで入社されたんですね。


先輩に感謝しながら、未来の後輩に何を残せるかを思案する。

濵田:
最後に、学生に向けて何かメッセージやアドバイスなどいただけますか。

内田:
企業に就職する人は、自分たちがお給料をもらって働けるのは、先輩たちが苦労して築き上げたビジネスモデルのおかげだと、肝に銘じておくことが大事です。だから入社したら、今度は自分が、まだ顔も名前も知らない未来の後輩のために、何を残してあげられるのか。そういう気概で仕事できると良いのではないかと思います。

濵田:
冒頭でもお話されていましたね。自己中心的な考えではなく、人の喜びのために頑張れるようになるのが成長だと。

内田:
周りの人を見て、社会を見て、やがて日本、世界へと視野を広げていく。時代の流れ、社会の大きな流れのなかでの、自分の立ち位置を意識できると、これまでと違った視点で就活もできるのではないでしょうか。

濵田:
内田社長のお話を伺って、学生は就活にのめり込むなかで、無意識に視野が狭くなってしまっていると改めて実感しました。就労観が変わると、エントリーする企業に対しても、よりポジティブに捉えられるような気がします。本日は貴重なお話をありがとうございました。

内田:
こちらこそ良い機会をいただきました。ありがとうございます。

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