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お客様のニーズを叶えるとは何か

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お客様のニーズを叶えるとは何か

北里大学3年生

牛尾 天音

周南造園株式会社

河村 健司

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、周南造園株式会社の代表取締役社長 河村 健司様に、お話を伺いました。

北里大学3年生
牛尾 天音

北里大学医療衛生学部。公認心理師の資格取得を目指し、大学では臨床心理学を専攻。将来のためにも社会人と接する機会が欲しいと感じクイックのインターンに参加。趣味はロックバンドのライブに行くことと読書。

周南造園株式会社
河村 健司

1975年生まれ。48歳。専門学校卒業後、2年間板前として飲食業に従事。その後、大阪芸術大学で造園デザインを学んだのち2001年に周南造園株式会社に入社。造園職人、営業設計職を経て、2010年に代表取締役社長に就任し、現在に至る。

目次

牛尾
本日はよろしくお願いいたします。周南造園様は90年という長い歴史がある一方で、新しい取り組みも積極的に行われていると感じました。お客様のニーズに関してどんなことを考えて取り組まれているのかを中心に伺っていきたいと思います。


河村
昭和8年に祖父が創業しました。法人化して、ちゃんと組織とした形になったのは昭和40年あたりです。


牛尾
河村様のおじい様が造園に関わり始めたのが昭和8年ということですね。


河村
そうですね。造園屋さんと言えば祖父の代のころは日本庭園がメインになりまして、しっかりと研究しながら、地域に認められながら取り組み、事業が発展していきました。


時代の変化とニーズの移りかわり

河村
ニーズというところでは、住居を建てて池を作るという昔ながらの日本庭園というものは望まれなくなってきています。お客様の求めるものに対して、長い歴史の中でもその時その時のニーズに答える形で技術力も含めて変化していった形になりますね。


牛尾
昔ながらの日本庭園をもつというより、お客様の住居に合わせてどんな形で御社が貢献できるか、に目を向けられたということなのですね。


河村
そうですね。山口県下の住居は敷地が結構広くて、昔は家を建てたら皆様こぞってお庭を作っていました。だけど30年・40年前からちょっとずつそういう住居も減ってきて...。同業他社の造園業者さんは未だに日本庭園にこだわり、新しいことにそれほどチャレンジしてない印象です。


変化する造園の形

河村
弊社の変化の変遷でいうと、日本庭園から始まり、昭和55年から平成10年あたりのバブルの時代に公園を造ったりする公共工事が盛んになりました。その次に企業の緑地管理ですね。工場などにある緑地の維持管理をすることに力を入れて行きました。


牛尾
同じ造園業でもずっと同じ形式というわけではないのですね。


河村
そうですね。時代のニーズに対応しながら、最終的にはエクステリアと呼ばれる、駐車場やフェンス、ガーデンルームも含めた家の周辺工事をする企業に変化しています。どこに向かうにしても必ず壁があるというか、似て非なる仕事なのですが変化を恐れずに対応してこれたのではないかと思います。

 

牛尾
HPを拝見した際に、他の造園企業各社と比べてもエクステリア事業にとても力を入れていると感じました。これは、工場の緑地管理などから発展していったということになりますか。


河村
公共工事から企業の緑地管理というのは広い敷地にある緑地の維持管理という意味では、公園の緑を剪定するというのと似ています。エクステリアはどちらかというと、技術的な違いはあれど、家を建てたその周辺の整備をするという意味で、一番はじめに弊社が取り組んだ日本庭園の造園と似ています。


牛尾
昔は石組だったけれど、今はブロックだとか。昔は生垣、植物で壁を造っていたけども今はアルミのフェンスだとかということですね。


河村
はい。ニーズに合わせて日本庭園の技術を今風に変えたのがエクステリアになります。大学時代にエクステリア事業を扱う企業でアルバイトをしていたこともあり、その時のことを私が持ち帰ってきたという感じですね。


牛尾
アルバイトを通して学ばれたことを今の事業にどんどん取り入れられていったということですね。


イチから事業をつくるということ

牛尾
エクステリア事業をはじめられたのは、河村様の代になられてすぐですか。


河村
そうですね、私が入社してからになります。事業としていくにあたり、そのエクステリアで使う資材の仕入れルート、仕入れの問屋さん、職人さん、ブロックを作ったりする左官さんを探すことや、たくさんのノウハウが必要でした。それを一つずつクリアしていくのには5年くらいかかりましたね。


牛尾
5年!何もない中でゼロの状態から始められたということですもんね。事業を安定させるために一歩ずつ手順を踏んで着実に進められてきたということですよね。


河村
初年度は売上が700万円でした。私が26歳のころで、700万円売上げた。ということはすごい自信でしたが、材料費や、職人さんへの報酬などを差し引くと利益は微々たるものでしたね。


牛尾
建築業となると商品を仕入れるのにもかなりの仕入額になりますよね。


河村
そうですね。今は、1年間で企業全体の中でもエクステリア事業の売上が3億円ぐらいになりますから、当時と比べると大きく変わったなと思います。


牛尾
入社当時と今を比べられると、続けられてよかったと感じられるような目に見える成長があると思います。やはりはじめたてというのは、私自身も力不足を痛感することが多く、心が折れそうになるのですが、なぜそれでも事業として続けていこうと思われたのですか。


河村
そうですね。やっぱり事業を引継いだ私自身が何かを成し遂げたいという気持ちがありました。存在意義と言いますか。その当時の弊社はエクステリアはまったく新しい事業で、誰もが未経験でした。新しい価値を生み出したい。ということが頭にあったので成果を追及して取り組んでいました。


お客様と接する中で見つけたこと

牛尾
そうだったんですね。では、河村様も最初は今の従業員の方と同じように現場を経験されて社長様になられたのでしょうか。


河村
そうですね。2001年に入社して、最初の2年は現場でハサミをもち剪定などを行う造園の職人として仕事をして、そのあとの8年はエクステリア事業を広げるための営業設計に関する仕事が徐々に増えていきました。なので、10年くらい経て先代から引き継ぎました。


牛尾
エクステリアを自社の事業として取り入れようと思われた理由を教えてください。


河村
今は、家を建てたらエクステリア業者が仕上げることが多いですが、本来は造園業者が仕上げるべきではないかという思いが私の中にありました。ニーズや世の中が変わっただけで、家を建てたらそのあとは造園屋さんが仕上げるということは変わらないはず。当時からもっと活躍できる分野だと考えていました。


牛尾
なるほど。造園業者ではない別のところに任せていることを自社でできないかと考えられたということですね。お客様と接するなかでエクステリア事業にニーズがあると気づかれたということですか。


河村
そうですね。お庭の相談のあと提案の図面を書く際に、外周りのブロックやフェンス、駐車場といったエクステリアの比率が高まっていると感じました。


牛尾
河村様がお客様に提案する中で実感していたことなのですね。


河村
はい。例えば100万円の見積金額のうち、100万円のお庭に対しての図面と見積であれば今まで通り周南造園ですべてお手伝いできていました。しかし、私が提案する工事の中でも、100万円の中で石とか植木といったお庭に関するものは10万円分しかなく、残りの90万円分はブロックとか駐車場といったエクステリアというケースもどんどん増えていました。


牛尾
そうなると、お庭のご提案というよりもエクステリアのご提案という形になってしまいますね。


河村
私が入社した当初はその90万円の仕事をすべて弊社ではできませんでした。図面は私が書くけども、工事は別の取引先に依頼するという形で、「なんか何してるのかわかんないね」という状況だったんです。 


牛尾
そうだったのですね。御社が「お庭づくりを一括で承る」ということを掲げているのも、そういった経験があったのですね。


「お客様に寄り添うこと」の意味とは

牛尾
ではお客様と接するうえで意識されていたことはありますか。


河村
やっぱりお客様の要望に応えるという気持ち。お客様に寄り添って提案することを意識しています。社員にも普段から言っていますが、「良い提案をしようとした時、私の家だと思って考えたときに、おのずと答えが出るでしょ」という考え方をすることです。


牛尾
私の家だと思って考える、ですか。


河村
私の家でないと思っていると、「じゃあここブロックですね」「はいここに門柱建ててください」「はいわかりました」というようにお客様から言われた通りに提案してしまいます。

 

牛尾
お客様の言う通りになることが理想の形だと思ったのですが違うのですね。


河村
提案する中で、「でもそこに門柱建てるとちょっと不便じゃないかな。」とか私が生活するのを考えたら「ちょっと違うな」と思うことについては、お客様に直接私の思いを伝えるようにしています。時にはお客様の考えとは全然違う結果になる場合もあります。それでも、お客様の立場に立って考えているからこそ、よくないなと思う提案に関してははっきり言わせてもらっています。


牛尾
なるほど!ニーズに答えるだけでなくて、私が逆の立場だったらこうしてくれた方がうれしいと考えるプランをお客様にお伝えして、より良いものにするということですよね。


河村
そうですね。相手の立場に立つより良いものを提案するという気持ちで取り組んでいますね。お客様からすれば頼んでいることを「それ良くないと思います」と言われるわけですから、驚かれるお客様もいらっしゃいます。なるべく上手にそれを伝えないといけないのが難しいところにはなりますね。


牛尾
こういうところにこれがあったら不便だろうなというのは普段から業務に携わる方だからこそわかることだと思います。仮に私がお客様だとして、完成してから後悔するよりは事前に提案をくれたほうがありがたいです。


河村
そうそうそう。お客様の要望を全部受け入れて、「この企業はすごく話を聞いてくれました」 と喜んでもらえたとしても、それで出来上がった商品とかデザインというのは、介在価値がありませんので、その点には注意しています。


牛尾
私も将来、お客様の悩みを解決する上で、伝えにくいことも伝えるべき。と思う反面、どうやったらうまく伝えられるのかという壁にぶつかる時が来そうだなと思いました。


河村
やはり伝え方ですよね。そういうのは。


牛尾
そうですよね。それでも何をすることが相手にとって最良の選択なのか。と考えると、将来を見据えて考えた時にいい方向に進む選択ができるようにお手伝いすることが大切なのだと感じました。


全員を同じ物差しで測ることはできない

牛尾
今お話ししてくださった内容というのは、社内マニュフェストである仲間の笑顔、お客様の笑顔に最善を尽くした経営。にも通ずるものがありますね。


河村
そうですね。企業はどうしてもみんなの笑顔と言いながらも、お客様にしか焦点があたらないというか。お客様を笑顔に!ということが当たり前だと思うんです。そうでないと成り立たないと思います。


牛尾
確かに、言われてみればそうですよね。


河村
それだけでなく、共に働く仲間だとか、下請けしてくれる業者だとかそういった関わる全ての方が笑顔になるような取り組みができないと企業は発展しないよというメッセージになります。社員のやりがいをどう生み出すかというのが、なかなか難しいことなんですが、意識して取り組んでいます。


牛尾
具体的にどういった点が難しいとお考えですか。


河村
一つの物差しで全員を見ることができない点です。一人ひとりの仕事に対する価値観や目的は異なります。やっぱりそれぞれが何をやりがいとしているかということも含めて評価したいと考えています。


牛尾
同じ企業内だからといって従業員の方の価値観が全員同じなはずありませんよね。


河村
一番わかりやすいところでいうと、営業は売上をあげればその成果で自社への貢献度が測れます。評価もしやすいです。一方で、例えば事務職などほかの職種は、その方その方を評価する基準が違うわけですよね。


牛尾
確かに、同じ比べ方では評価できませんね。


河村
一人ひとりに合った物差し、評価基準を作ること。頑張ったことを頑張ったねと評価することは意外と難しいことです。社員の年齢層も20歳から76歳くらいまでとほんと幅広く、いろんな価値観を持っているので。


「経験がある人=成果を出す人」ではない

牛尾
御社には、未経験で入社される方もいらっしゃいますか。


河村
はい。結構いますよ。


牛尾
未経験だとしても問題ないのですね。では未経験の方はどんな手順を踏んで経験を積んでいくのでしょうか。


河村
何を学びたいか、何で貢献したいかだとか、職種によっても営業や設計業務がしたいのか、現場で職人として頑張りたいということなのかといった最終的な方向性によって変わると思います。


牛尾
やりたいことや職種によって変わるのは確かにどんな業界でもそうですよね。


河村
とはいえ、建設業ですから基本的には現場でどう製品が作られるか、少なくとも1年はぜひ現場で完成に向かう過程を体感し、営業なり設計なりに移っていくというのが理想です。未経験の方はやっぱり現場で実際にやってみるのが一番手っ取り早いでしょうね


牛尾
未経験で入られた方の割合というのは全体でみるとどれくらいになるんですか。


河村
3割は専門的学校で勉強をした方ですが、あと6割は異業種から入社いただいています。


牛尾
未経験の方のほうが割合的には多いのですね。私の中での建設系のお仕事というと、勉強してからでないというか、建築に関することをしっかり学んでそれを活かしているイメージがあったのですがそういうわけでもないのですね。


河村
学校で勉強をしたとしても実戦になった時に、実際に覚えないと前に進めないですからね。建設業の場合、まずは「とりあえずこれ持ってこーい!」みたいな感じで役に立つことから始め、そういった中で現場の雰囲気もつかみながら仕事を覚えていくというケースもあります。


牛尾
まずやってみるということですね。


河村
ちょっと研究熱心なのであれば、実際にその場ではわからないことも、「これはどうなっているのだろう」と専門の書物を開いてみれば、習得も早いんですよね。その意欲があれば普通は学校で勉強することだとしても、あっという間に現場で補うことができると思いますね。


牛尾
やはり好奇心や吸収意欲が大事ということですね。


河村
ほんとにそうですね。実際に、今弊社の企業の職人で「あ、この方は技術が高いな」と思う方は、経験が長いとか、経験者だからというわけでもありません。30歳で入社して今5年目の従業員でも、いつも研究しています。ある程度の時間は必要だけれども、目的意識と貪欲に学ぶ意欲があれば、簡単に追い抜かせますね。


牛尾
意識の高さが、しっかり知識習得に結びついていけば経験の有無にかかわらず活躍できるようになるのですね。


社内をより良いものにするために

牛尾
職場の従業員の方の笑顔だったり、お客様の笑顔のためにという社内マニュフェストは今の河村様の代から掲げられているものですか。


河村
そうですね。私が作りました。


牛尾
これを掲げてから変化したことはありますか。


河村
もともと先代である父親も昔気質ですし、業界も業界ですから、組織的ではなかったんですよね。今は、組織的に、部長がいて副部長がいて、その他の社員にもそれぞれに責任や役割を持たせる形をとっています。


牛尾
組織的な面でも大きく変えていかれたのですね。


河村
会議も、月に1回部長・副部長が集まり行う幹部会と、工事部と営業部がそれぞれで部門会という形で行っています。幹部会は私が企業の方針として「こうしたいんだ」というのを伝える場です。部門会には私も出席しますが、なるべく発言しないようにしています。


牛尾
河村様はあえて発言しないようにしているのですね。


河村
はい。幹部会で私の話を聞いた部長・副部長がリーダーシップをとり会議を運営して、私の伝えたことを従業員全体に広げてくれるという形で取り組むようになってきています。会議では私の思いをかみ砕いて私なりの言葉で伝えているので、そういうことも含めて効果的だったと感じています。そこが変化した点になります。


牛尾
社長である河村様が一人で仕切らずとも機能する組織に変化してきたということですよね。


以前は板前さん 今は企業経営をする社長に

牛尾
代替わりされたことで働き方が職場内でも変化していかれたおっしゃいましたが、きっかけはあったのでしょうか。


河村
最初、高校卒業後大阪で2年間、造園の専門学校に通っておりました。家が造園業を経営しているから何となく私もそのまま造園業を継ぐと思っていましたが、親が決めたレールの上を歩いているのが嫌になって、そのあと22歳まで板前さんをしていました。


牛尾
板前さんとしても働かれていたのですか!正直驚きました。


河村
はい。私も人の下で働いた経験がありますが、板前さんというのは上下関係のとても激しい世界でした。今は昔と比べると褒められて育つ方が多いですよね。トップダウンというのは従業員は萎縮してしまって、従業員自身の本来の力が発揮できなくなってしまいます。実際、私も発揮できていなかったなと感じることがありました。


牛尾
ご自身の体験がもとになっていたのですね。


河村
そういったところで、やはり社風を変える必要があると思いました。また、経営に関する色々な勉強会に参加する中で先進的な企業経営をされている事例に触れる機会もありました。自社でも真似をしたいという気持ちから形を変えていったという感じですね。


牛尾
ご自身の経験に加えて、さらに他の企業様から学ばれたことを活かそうとお考えになる中で、今の社風に変わられたのですね。


経験に無駄なことなどない

牛尾
カフェ事業やフリーマーケットだとか、他の企業さんはやられてないことも事業として行われていますよね。カフェ事業を始めたきっかけを教えてください。


河村
料理を提供し、お客様をおもてなしして、喜んでいただく姿を見る。ということがおもしろそうだな。と考え板前さんになりました。それもきっかけかと思います。そのほか、弊社には祖父が買い求めた4万㎡くらいある広い敷地があり、子供のころから、ここは遊園地になると聞いていました。


牛尾
この場所でフリーマーケットなども開催されていますよね。


河村
はい。人が出入りする、常に地域の方に喜ばれる場所にするという思いがあったので、遊園地とはいかなくともそれに近づける努力をするということが、事業を引き継ぐ一つの使命であると考えています。


牛尾
お話伺う中で、板前さんとして全く違う業界で働かれていたことは造園に関することと直接的なつながりはあまりないのかなと感じていましたが、やはり企業として全体を見たときに全部が繋がっているのがとても素晴らしいと感じました。


河村
無駄なことはなかったな。ということなんですかね。


牛尾
本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。


河村
とんでもないです。こちらこそありがとうございました。


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