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あえてアナログでー関係性にこだわる経営ー

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あえてアナログでー関係性にこだわる経営ー

国際基督教大学1年生

篠塚 育見

株式会社みしまや

三島 隆史

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社みしまやの代表取締役社長 三島 隆史様に、お話を伺いました。

国際基督教大学1年生
篠塚 育見

国際基督教大学教養学部。2023年2月より株式会社クイックにてインターンを開始。大学では、大学構内にある寮で個性豊かなメンバーと暮らしつつ、学生団体の代表、サッカー部のマネージャーをしている。趣味は食べること。特にスイーツが大好きで今の楽しみはタルト食べ放題に行くこと。

株式会社みしまや
三島 隆史

1974年生まれ。島根県出身。99年立命館大学大学院経営学研究科修了、株式会社菱食(現:三菱食品)入社。市場データを活用した小売業の売場づくりに関わる。01年株式会社みしまや入社、11年代表取締役社長就任。現在に至る。

目次



 

 篠塚
本日はよろしくお願いいたします。


三島
よろしくお願いします。


逆境でも信念は曲げない

篠塚
みしまやさんは創業当初パン屋さんから始まったとのことですが、どうしてスーパーマーケットへ業態を変更することになったのですか。


三島
私の曾祖父が菓子とかパンの製造卸をやってたのですが、当時(昭和初期)パン類を家庭で日々食べるっていう習慣がなかったため、松江市に駐留していた軍に卸していたんです。それが売り上げのほとんどを占めていたのですが、第二次大戦が終わったら、その売り上げがゼロになってしまい、私の祖父が当時日本でどんどん新しいビジネスとしてできていた、スーパーマーケットの業態に変えてみようということで業態を大きく変更しました。


篠塚
時代とともに変化する重要性に気づかされました。創業百年以上の歴史を持つみしまやさんが大切にされている思いというものはなにかございますか。


三島
そうですね。スーパーマーケットでは基本的に近くのお客様や取引先様が全てなんですね。ですからお客様であったり、取引先様との関係性を大事にしています。例えば、皆さんになじみのあるお菓子1つとっても、今よりも安くするから仕入れてほしい。といったアプローチはよくいただきます。でも、1円、2円の価格の差よりもお取引先との関係性を大切にしたい。と思いビジネスをしています。


篠塚
お客様との関係性といった点ではどのような点を大事にされていますか。


三島
現代は様々な大手スーパーがいっぱいある中で我々ができることって言ったら小回りの良さだと思うんですよ。お客様からご依頼があればたとえ一品でも仕入れて販売するということを長年しています。


篠塚
これまでお客様からの要望でどんな商品を入荷したことがあるんですか?


三島
やっぱり嗜好品の関係が多いですよね。その他は業務用のマヨネーズやドレッシングを入れてほしいなどいろんなオーダーがあります。基本的に仕入れられる物は仕入れています。

篠塚
一品でも仕入れるというそのこだわりは先代とか先々代からの思いでもあるということでしょうか。


三島
チェーンストアのように統一して運営することが難しくなるのはもちろんなんですけど、それぐらいの手間はかけてでも地域と密着していこうというのは続けていることでございます。


地域の食文化に根付いた経営をするために

篠塚
島根県内中心の店舗展開を重要とされているポイントを教えてください。


三島
一般的に30㎞違うと食文化が変わるといわれているんですね。
例えば使ってる基礎調味料が違っているとか売れてるそれこそお菓子がちがうとか。そうした中でなるべく狭い範囲でやるほうがしっかりとお客様のことを理解してやれると思っていたのですが、なかなかそれだけ狭い中でやるのも店舗展開が図れませんから、現在最も離れた場所で松江市から60㎞離れた大田市というところに店を出していますが、やはり食文化には大きな違いがあります。

 

篠塚
例えばどんな点で食文化の違いを感じていますか。


三島
例えば、おはぎってわかりますか?わかりますよね(笑)


篠塚
はい(笑)


三島
ご飯粒したやつにあんことかついてるやつ。あれが松江市のエリアだと粒あんなんですよ。でもその大田市に行くとこしあんなんですよ。


篠塚
そうなんですね。


三島
じゃないとお彼岸なんかにはお仏壇に載せられないということもあり、初年度にはお叱りの声を頂いたこともあります。もちろん基礎調理料なんかもちがいます。一年目は本当に大変だったんですけれども、違うエリアでも何とか受け入れてもらって今七年できています。これから少しずつ離れたところでも、事前にしっかりヒアリングさせていただきつつこれまで通りの姿勢で経営をすれば、もう少し広い範囲での店舗展開もできるのではないかなという風に思っております。


コロナで変わった食のあり方、そしてスーパーは

篠塚
最近特に変化を感じる商品や経営スタイルはございますか?


三島
そうですね、やっぱりコロナ以前と以降で大きく変わったなというのがあって、家で作る、家でちょっと手間をかけて作るものが売れるようになりました。コロナが始まった頃に家にいる時間が長いことでホットケーキとか、お好み焼きの粉がめっちゃ売れたとかあったじゃないですか。


篠塚
懐かしいですね。


三島
その傾向と同じように今よく売れているのは、バナナとその粉を使ったらクレープがおいしく作ることができるとかですね。


篠塚
そういう商品があるんですね。


三島
今近くにないので紹介できないんですけれどもおすすめです。
そういった家で家族と一緒に作ってみたいなものがすごく増えたなという印象を持っていてそこはすごく食の流れとしてはいいなとは思っています。また同時にですね外食に行かないという文化がある程度定着してしまった中でそんなにそんなに毎日作っているのも大変だということで惣菜もよく売れるようになりました。


篠塚
例えばそういう、コロナがあって、家庭で作るという商品がたくさん売れるようになって売り場の配置だったりそういうものを変更したりなにか工夫されていらっしゃるんですか?


三島
まさにコロナになって買い物時間、出かける時間をなるべく短くしたいっていうのがあったじゃないですか。そのために、今までだったら醤油は醤油売り場、なんとかは何とか売り場と生鮮食品と加工食品をかっちり分けてやっていたんですけれども、今はかなりそれを混ぜて、それそれの売り場で例えばさっき言いました。


篠塚
クレープですか?


三島
そう生クリームなども近くに販売して、その売り場だけで必要な材料が揃えられるというような売り場を増やしています。なるべく買い物時間を短くでも楽しくしていただきたいということで売り場をちょっとずつ変えていってますね。


お客様と従業員の関係性そして就活生に求めること

篠塚
みしまやさんだからこそ提供できているなと思われるような価値は他にございますか。


三島
人の力がうちの魅力かなと思います。同じ店に44年間はたらいている人がいたり、定年後も働いてくれている人がいたり。その点においてお客様のことや周りのお店のことなど古くから知っている人がいるからこそお客様との関係性も深まっていると考えます。


篠塚
今後みしまやさんに就職される学生にこういうことを求めたいなど、何か強いメッセージなどございますか。


三島
食べることが好きであったり、人と接していろんな情報を得たり、発信したりするのが好きかどうかというのが大事かなとは思います。
様々なことがAIでできるようになった世の中で感情をもって人と接する仕事はこれから残る仕事だと思います。機械が考えたほうが早いという出来事が増えてきてしまっている一方で相対的に接客業が大切になってきているなと感じるので、そこを理解して、やりがいをもって来てくださる人が増えたらうれしいなと思っております。


従業員数500名以上、その中での難しさとは

篠塚
人との関係性を大切にされているみしまやさんで三島社長が感じる難しさというものは何かございますか。


三島
スーパーマーケットという業種は、売り上げのわりに働く人が多いんです。その中で個人の特性を活かしてもらうことがなかなか難しいではあります。


篠塚
個人の特性を見つけるために何か行っていることはありますか。


三島
「チャレンジ事例」という取り組みをしています。

 

篠塚
詳しくお聞きしたいです。


三島
売り場作りでも、お客様へのお声がけでも、日々の業務でチャレンジしたことを報告してもらうという取り組みです。この取り組みを通して才能や思いを発掘しています。また、このチャレンジ事例への返信は私以外にもその店の店長などを含め5名ほどが返信するように心がけています。


篠塚
お客様や取引先様との関係性を大事にするために、まずは中から関係性を大事にする。そんな社長の思いが伝わりました。
この取り組みの中で印象に残っているエピソードはなにかありますか。


三島
面白いアイデアが多くあるのですが、直近だと、年末のそば売り場を工夫した店舗からの報告が印象に残っています。通常ただ並べるだけで終わりとしてしまうこのコーナーで、各そばの特徴をマトリックス表のような物を作ったり、オリジナルギフトを作ったりと工夫している店舗があるという話を聞いて、色々考えながら働いてくれていることを知り、すごくうれしかったですね。


互いを尊重しあいながら働ける喜び

篠塚
素敵なお話ありがとうございます。
これまで三島さんがみしまやで働いていて一番印象に残っているエピソードを教えてください。


三島
うちは今でもポイントカードを取り入れず、代わりにクーポンを配っているのですが、6年前2店舗限定でポイントカードの仕組みをやってみたことがあるんですけど、それがまったくうまくいかず、売り上げが急落してしまったことがあるんです。私が旗を振って進めていた事業だったのですが、管理職の前で謝ってまた紙に戻そうと話したときに、「じゃあそれでまたがんばってみましょう。」と言ってくれたんです。


篠塚
お互いを許しあい、尊重しあえる企業さんなんですね。


三島
そうですね。
「お前がやるって言ったじゃん」なんていわれると思っていたのですが、本当にお互いを尊重して仕事ができる喜びを感じたのはこのポイントカードの話かなと思います。


「関係性」から生まれた新事業、そこでの学びとは

篠塚
「ぷれジョブ」の活動についてもう少し詳しくお話を聞きたいです。


三島
ある従業員がお客様から「これやってみない?」という提案をされて始まったことがきっかけで、小学生くらいの障害を持つ子供たちに地域のサポートの方と一緒に1週間ほどお仕事体験をしていただく取り組みです。


篠塚
親御さんではなくて地域の方がサポートに入るというのは何か目的があるんですか。


三島
おそらくハンデがある方だからこそ親子でのつながりはすごく深いと思うんですけれども、とはいえ、将来は社会の中で生きていかなければならないという意味で、仕事もはじめましての人ともやるし、サポートも地域の方ということで少し親と離れた形でやることで、少しずつでも成長していただけるというメリットがあるんじゃないかなという風に考えています。 


篠塚
目先のコストというものに囚われずに機会を提供するという形のサービスでもあるということですね。


三島
とはいえ我々もこの取り組みを通して学ぶことが多いですね。例えば、ハンデのある方にお仕事を覚えてもらおうと思ったら、より細かく設定する必要があるんです、いろんなことを。そうすることよってじゃあ新入社員のマニュアルつくりとかですね、こういうところを変えたほうがいいんじゃないかなど、いろんな気づきというか、我々も学ばせていただくことがとてつもなく多くあります。


篠塚
私も今大学の寮で生活していて、英語圏の人も多くいる寮で、日本人としてだったらそれはやらないだろうということもやっぱりルールとして作っておかなくてはいけない、というのはすごく感じて、ただ自分が機会を与えているんだじゃなくてそこから何か学べるすごく素敵なサービスだなと思いました。


健康を支えるためにスーパーマーケットができること

篠塚
「セルフメディケーション」という言葉にはどんな思いが込められていますか。


三島
高齢化が進むとともに大きな負担となるのが医療費だと考えています。以前ライザップの関係の方からも、実際、体作りの9割は食事であるというお話を聞いてやはり健康でいるために食事は重要であるということを再認識し、我々も学びながらサービスを提供できればなと思ってこういう表号を掲げました。


篠塚
まずは体が資本であって体を作るための食。そこを大事にしていきたいということですね。


三島
そうですねそれをより積極的に提案していきたいなと思いますね。


篠塚
この「セルフメディケーション」という言葉に関連して何か新しいイベントであったり、仕入れの仕方であったり、何か変更された点はございますか。


三島
島根県が食育に関する取り組みを行っていまして、それでおすすめメニューを作っているんですね。県が提案しているおすすめメニューを月に一度今は試食販売ができないんですけれども、メニュー提案をする日を設けたりですね。その関連でいろいろな食材の活用の仕方とか、地産地消をしていただくとか、そのようなことをやっています。


篠塚
素敵な取り組みですね。
私もヘルシーな料理にしようと思いつつ、どうしても楽な方をとってしまうことが多いので9割食事ということを聞いてやっぱり食生活を見直す必要があるなと感じました。


三島
でも学生さん大変ですよね。大人は学生いいなみたいなこというけど勉強もしてアルバイトもしてなんならサークルもやってってなると学生ってめっちゃ忙しいなと思うんです。その中でバランス面も考えて無理のない食生活を送ってもらうために惣菜などを活用してもらいたいということをセルフメディケーションの中で感じています。


社会問題への取り組み、そこから生まれる「関係性」

篠塚
近年食の問題でフードロスというものが話題に上がっていますが、この問題に関してみしまやさんで取り組まれていることはなにかございますか。


三島
去年から松江市の社会福祉協議会さんというところと連携して、賞味期限の近いものを社会福祉協議会さんを通じて生活困窮されている方にお渡しするという取り組みをやっています。こんな小さな町でも何百人もの方が食料を必要とされているというお話を聞き、我々が利益を優先して賞味期限ぎりぎりまで販売して、売れ残りを廃棄してしまうより、今までより2週間くらい早めに店舗から引き上げてそのような方にお渡しする方が喜ぶ人が増えるのではないかという思いからこの活動を行っています。また、この取り組みを通して、従業員の仕事に対する思いというものも少しは変わってくるのかなという風に感じています。


篠塚
社会貢献をしつつ、御社の従業員の皆さんが売り上げを上げるだけのために働いていては得られない、新しい学びをすることができる、そんなサービスなんですね。


三島
そうですね。確かに商品を集めるなど、やらなくてはいけないことは増えてしまいますが、それでもやる価値があるものだと考えています。


地域スーパーが持つ役割とは

篠塚
大型ではなく地域のスーパーマーケットがこれからの社会においてどのような役割を担っていくとお考えですか。


三島
私もこの会社に入って20年程ですけれども地元のスーパーがもう何個かなくなっているんですね。なのでそういった商品を扱ったり、おすすめしたりするところがだんだん減っていっているんですよ。全国大手になってしまって地域の産業がなくなってしまうのは、我々としてはよくないことだなと思っています。ですから、我々に限らず地域スーパーの存在は、地域の食卓を守るという点において大きくあっていくんじゃないかなと思っています。


篠塚
地域スーパーがあるからこそ、そこに商品を出す方の生活も支えられているということですね。


三島
そうですね、普通のスーパーじゃありえないと思うんですけれども、うちは物流も宅配便で送ってもらったりとかですね、農家さんに近くのうちの店に持ってきてもらってそこからうちの便でほかの店に運ぶこというように、互いが長く続けれられる物流を考えながらやっています。そんなこと地域スーパーじゃないと無理ですから、そんなことをきめ細かくやっていきたいなと思っています。


篠塚
今後も地域スーパーは私たちの生活を支える上で大事な存在になっていくんじゃないかなという風に思いました。
本日は素敵なお話を沢山ありがとうございました。


三島
こちらこそありがとうございました。


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