関西学院大学3年生
湯浅 あかな
三谷興業株式会社
三谷 道郎
学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。
今回は、三谷興業株式会社 代表取締役社長 三谷 道郎様に、お話を伺いました。
関西学院大学商学部。2025年卒業見込み。人材業界やIT業界を中心に就職活動中。趣味はゲームと動物カフェ巡り。 最近はフクロウの魅力にハマっている。
1972年7月生まれ(51歳)。 大学卒業後、三谷興業株式会社に入社。ケミカル事業部の営業を経て2001年に取締役に就任。 2012年3月代表取締役社長に就任し、現在に至る。
目次
湯浅
本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございます。
はじめに、社長のご経歴についてお伺いしてもよろしいでしょうか。
三谷
私は1996年に新卒でこの会社に入りました。まず各現場を回って、その当時事業の一つでもあった下請けの工場内作業と、自動車事業の整備工場で下働きをしました。私が入社した当時、メインの事業であった石灰スラリーという水処理薬品の工場で製造も経験し、約一年後には営業部門に配属されました。その後は、水処理薬品のメーカー営業をやりつつ、数年後にはちょっと違う事業も始めました。というのも私が入社した時ですね、こんなこと言うのも恥ずかしいのだけど、この会社やばいなと思ったんですよ(笑)
湯浅
どうしてそのように思われたのですか。
三谷
祖父が創業して父がそれを二代目として引き継ぎ、私が三代目候補としてこの会社に入ったのですが、父は祖父がやっていた事業をそのまま引き継いでいたのです。つまり、石灰スラリーという私たちメーカーの薬品は、この地域で成長する余地があまりないくらいシェアを取っていたのですよ。
湯浅
そうだったんですね。
三谷
一つの商品って、ライフサイクルが大体25年と言われています。私が入社したときには、石灰スラリーは製造を始めてから25年は経った後だったのです。そういう意味では、これはもう成長のエンジンが足りなさすぎるという風に感じました。ちょっと違うことやらなきゃなぁということで、必死にお客様にいろんなニーズを聞いて新しいこと始めたっていうのが、私の経歴かなぁ。
挑戦の原動力は顧客ニーズ
湯浅
お客様のニーズをお伺いしたというところで、どのようなニーズが具体的に出てきたのでしょうか。
三谷
簡単に言うと、水処理薬品は他にもないの?ということです。当時から商社の真似事は始めていました。しかし薬品を扱う同業他社はたくさんあります。お客様にとっては価格しか変わらないし同じ商品を提案するだけでは何も付加価値を生まないので、他社がやらないことをやりたいなといろいろ考えました。お客様の使用済みの薬品や産業廃棄物の処理を、処理ではなくリサイクルできないか、有効活用できないかというニーズがすごくあって、そういったことに注力したのですよ。
湯浅
なるほど。
三谷
今では使い終わった薬品をさらに使えるものに変えるとか、廃棄物をリサイクルするとか、そういったことでは地域でナンバーワンです。
湯浅
それが、ケミカル事業が石灰スラリー以外に扱う薬品が多くなり、成長した経緯ですね。
三谷
はい、そうですね。ケミカル事業の中でも、卸売商社の売上が非常に多くなりましたが、薬品をただ売るだけではなくてリサイクルの分野が非常に大きく影響しました 。
湯浅
なるほど。そこが他社との差別化とシェアナンバーワンに繋がったのですね。
ケミカル事業と自動車事業の展開にどういったつながりがあるのか詳しくお伺いしたいです。
三谷
自動車事業はそもそもですね、祖父が始めたのですよ。
湯浅
そうだったんですね。
三谷
祖父が1960年に会社を設立した頃、今はやめてしまった事業ですが、上場企業さんの工場内の作業を請け負う仕事をしていました。上場企業さんは工業薬品を作っているメーカーさんでたくさん輸送する車両を持っているわけですが、それが昔はよく壊れたのですよ。その関係で、本来なら整備会社さんなりメーカー系のディーラーに整備を依頼するのですが、当時はなかなかディーラーもすぐにはやってくれなかったのです。ユーザーである上場企業の方たちが、「三谷興業、人を集めて整備工場をやってくれないか」ということで、1973年に整備工場をやり始めました。
湯浅
なるほど。元々ケミカル事業で取引していたお客様のご要望にお応えした形で生まれたのが今の自動車事業ですね。
独自の貢献の重要性
湯浅
御社は「お客様第一主義」を掲げていらっしゃる中で、環境保護もとても大事にされていると感じているのですが、両立させるための取り組みはされていますか。
三谷
ピーター・ドラッカーさんが言っていることで、企業の存続を許される条件というのがあるのです。その条件とは、「特有の使命を果たす」です。つまり、お客様に喜ばれる他社と差別化された独自の商品やサービスを提供すること。まさにこれがお客様第一の本質だと思っています。お客様第一の本質は、独自の貢献で社会やお客様に寄与することだと思うのです。他社でやれることじゃなくて、自社独自のもの、っていうところがポイントだと思うのですよ。
湯浅
なるほど。
三谷
環境保護については、私たちの本業で貢献できるものをやりましょうということですよ。例えば自動車事業で言うと、一つの車両を作るだけでものすごいエネルギー使うわけですよ。それをできる限り長く使ってもらうことをサポートするのが、私たちの自動車事業部の一つの役割でもあると思います。
お客様にとっても長く使うことで支出を減らせるじゃないですか。だから両立というか、まずはお客様第一。その先に、人と企業と地球の未来を守って未来につなぐために貢献できることを私たちは考えていますね。
湯浅
お客様に長く車を愛用していただくことが結果的に環境を守ること、お客様の利益にも繋がっているということですね。
社長が求める整備士の在り方とは
湯浅
どういったことを今後整備士に求めておられるかをお伺いしたいです。
三谷
整備士に求めることっていうのはね、そんなに難しいことは言っていません。私は社員さんたちが入社するときに、「なれる最高の自分を目指してくださいね」といつも言っています。その中で自分の強みを活かした貢献をうちの会社にしてくださいということです。
湯浅
具体的にはどのような貢献が挙げられますか。
三谷
例えば、コミュニケーションが得意な人だと、ただメンテナンスをやるエンジニアじゃなくて、お客様とのメカニックをつなげるフロントサービスにポジションを置いた方がその人はすごく活きるじゃないですか。人と話すのが非常に苦手だけど、なれる最高の自分を目指すためにいろんな技術を習得したいという人は、エンジニアのトップを目指してくれた方がいいですよね。その方が働く仲間からも評価されるし。
湯浅
そうですよね。得意に合わせて配置することで従業員の方々の満足度も高くなるのだと思いました。
三谷
私が整備士のみなさんに言えることですけど、職人じゃなくてエンジニアを目指してくださいって言っています。
湯浅
職人ではなくエンジニアを目指すとはどういうことでしょうか。
三谷
日本では職人っていうとすごく褒め称えられるじゃないですか。何かをコツコツやるのはすごく良いのですが、それだけに特化してしまうと他の事ができない人になってしまうこともあります。お客様から次もあなたと仕事がしたい、お願いしたいと言われる人がエンジニアだと私の中では思っていますね。つまり、職人とエンジニアって同じような意味合いだけどエンジニアの方がより人間性を高めることができる人っていうのかな。
例えば、湯浅さんが同じものを買うのであれば気心知れた店員さん、もしくは話していて気持ちの良い人から買いたいじゃないですか。
湯浅
おっしゃる通りです。
三谷
社員さんたちに求めているのは人間力ですよね。「やっぱりあなたがいい」と言われるようなエンジニアを目指してほしいなぁと思っていますね。
湯浅
そういうエンジニアを目指すことがお客様からの信頼を得ることができる理由の一つですね。
御社は今後何か新しく始めるとしたらどういったことをお考えになられますか。
三谷
やはりお客様から支持されるものですよね。流行っているからこれをやろうとかはないです。長期的に私たちの強みが活かされる分野じゃないと意味がないと思うのです。他社と違うところをいろいろ考えてお客様が求めることを、我々の技術やノウハウで提案できる領域があれば新しい事業も始めるでしょうね。
湯浅
先程もおっしゃっていた、独自の貢献がお客様第一主義の本質ということが今後の展開でも大事にされるのですね。
人生を充実させるために
湯浅
今の若者に対して何かアドバイスはありますでしょうか。
三谷
みなさん、人生を充実させたいですよね。充実させるためには何が必要だと思いますか。
湯浅
人生を充実させるために必要なことですか…。
三谷
私はやっぱり、仕事が充実しないと絶対人生充実しているって思わないと思います。私も入社する前は、人生を充実させるためにはお金が必要だという感覚は若干ありました。ところが会社に入ったらとんでもない、仕事するのが楽しくてしょうがないですよ。仕事って本当に楽しいですよ。
湯浅
仕事が楽しくて仕方がない理由は何でしょうか。
三谷
お客様から喜ばれるわけじゃないですか。「ありがとう」って言ってもらえるわけでしょ。この「ありがとう」という言葉はものすごい魔法の言葉で、お客様に頼られることはすごく喜びに感じますよね。つまり、充実させる方法っていくつかあると思いますが、仕事を充実させることがすごく大事な一つの大きなファクターだと思うのです。
湯浅
就職に対して不安に感じる学生はとても多く、実際私もその一人ですが、仕事がすごく楽しいというお言葉で就職に対するモチベーションが上がりましたし、不安も少し晴れたような気がします。
三谷
大企業や上場企業に勤めたいなぁと皆さん普通に思うじゃないですか。我々みたいな中小企業だと、結構若いうちから大きな仕事を任せられることがありますよ。いろんなことを経験できる中小企業も一つの選択肢だと思うよってお伝えしたいですね。
湯浅
私はやりがいや若い時から裁量権を持たせてくれるかどうかを就活の軸にしているので、今のお言葉はすごく共感できるところがありました。
三谷
仕事ってね、すごく心が震えるような感動するようなことが多々ありますよ。それをぜひ感じてほしいですが、それって自然に感じるものじゃないですよ。
湯浅
どういった時にそれは感じられるのでしょうか。
三谷
とにかく目の前の仕事をやることは当然ですよね。こんなつまらない仕事って思わずに、まずそれをとにかく一生懸命やることが最低限の条件です。そして、人より何か一つでも秀でているものを早く作って欲しいですね。そうすると、仕事って楽しいですよ。人より何かできるってことは人より評価されるし褒められるし。だからね、そこそこでいいって思わないで、全力を尽くしてやってほしいですね。全力でやらずに人よりも秀でることってなかなか難しいですよ。
湯浅
そうですよね。それが「なれる最高の自分を目指す」ということですね。
三谷
そういうことですね。
人よりちょっとでもできると楽しくなるのです。仕事の報酬はお金じゃないですよ。仕事の報酬は自分の成長であったり、お客様の感謝の言葉だったりっていうふうに感じるようになると思います。
湯浅
なるほど。
三谷
私も何度かそういう経験をしまして、あるお客様には、「あなたの会社の売上が上がると、コストダウンだったり、環境に良いことだったり、うちの会社のいろいろなことの解決に繋がっている。だからあなたの会社の売上をもっともっと上げてほしい。」と言われました。そのときは心が泣けるほど震えましたね。
湯浅
そうですよね。なかなかそういうことをおっしゃってくれるお客様って少ないですよね。
三谷
そうなんです。ちゃんと他社にはない仕事をして、お客様に貢献できる付加価値を提供していたら、それはパートナーとして切っても切れない関係になってくると思いますね。
湯浅
なるほど。やはり信頼関係の構築を積み重ねられてきたからこそですね。
ビジネスマンとして必要不可欠な訓練
湯浅
人よりも少しでも秀でる社会人を目指すために、学生の間から何かやっておいたほうが良いことはありますか。
三谷
はい、あります。新聞を読んでください。みなさんは新聞を読みますか。
湯浅
私は全然読まないです。
三谷
雑誌とかは読むのだろうけど、新聞は読まないでしょう。特に私が言うのは日本経済新聞です。お父さんお母さんも読むかな、日本経済新聞はとっていない人も中にはいますよね。
湯浅
私の家もとっていないですね。
三谷
これはもったいないね。新聞読むだけだったら別にたいしたことはないですよ。新聞を読むのは、自分が知りたいことを知ろうとするのではなくて、社会全体がどういうことに興味を持っているのか、どういう方向に向かっているかというアンテナを高くして調べる。みんなが興味を持っていることに対して自分の視点を合わせていくという訓練ですよ。
湯浅
なるほど。
三谷
私たちの会社もそうですよ。お客様が欲しいものや求めているものに焦点を合わせて私たちのサービスを変えていかないと、選ばれなくなるじゃないですか。いろんな法律が変わることによってゴロっと業態が変わることって多々あります。そういう意味では、新聞をよく読んで日本や世界がどういう方向に向かっているかとか、新聞社がみんなに伝えたいと思っていることはどういうことなのかとか、そういう視点でまず読むことが大事ですよ。
湯浅
その訓練がお客様のニーズをつかむための礎ということですね。
学生で新聞を読んでいる方は少ないと思うので、今のアドバイスを聞いて私も新聞を読もうという気持ちになりました。
三谷
ビジネスマンは思考力と実行力が求められますよ。それがないと成果って絶対出ませんから。思考力を鍛えるには、新聞の記事を読んで、例えば私でいうと自社や自分に置き換えて物事を考える。こういうことを繰り返すとね、すごく思考力が高まりますよ。これは騙されたと思ってやってみてください。実行力は、良いと思ったことはすぐやることです。明日やるとか言っているようじゃやらないですよ。
湯浅
ありがとうございます。最後に学生に対して何かメッセージはありますでしょうか。
三谷
整備士になる方がいるのであれば、当社にはみなさんが「なれる最高」になるためのサポート体制はすごく整っているし、どこにも負けない、将来成長することを描いた事業を展開していますと伝えたいです。私たちは先義後利と言って、人としてあるべき道が先で、利益はあとからやってくるものだと考えています。先ほどビジネスマンには思考力と実行力が必要だって言ったけど、結局は人間力ですよ。人として、会社としてどうあるべきかが一番大事だと思いますね。だから、就職したらお父さんお母さんに感謝して、最初のお給料で何か買ってあげてください。
湯浅
ありがとうございます。今回の対談で三谷社長のお言葉一つ一つにすごく感銘を受けましたし、自分の知見がすごく広がりました。本日は貴重なお時間をいただきましてありがとうございました。
三谷
はい、ありがとうございました。
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