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老舗ベンチャーの三代目社長が語る、経営人材の作り方。

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老舗ベンチャーの三代目社長が語る、経営人材の作り方。

関西大学4年生

濵田 将志

モトヤユナイテッド株式会社

小野 新太郎

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、モトヤユナイテッド株式会社の代表取締役社長 小野新太郎様に、お話を伺いました。

関西大学4年生
濵田 将志

関西大学経済学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界や不動産業界を中心に活動。大学ではNPO法人エンカレッジに所属しており、23卒の就活をサポート。趣味はカラオケとビリヤード。最近は一人ラーメンにはまっていて、深夜の豚骨ラーメンが旨い。

モトヤユナイテッド株式会社
小野 新太郎

1978年生まれ。岡山県倉敷市出身。2001年、モトヤユナイテッド入社。2015年、代表取締役に就任。現在に至る。趣味は飲酒とサーフィン。

目次

濵田:
インターンの濵田と申します。本日は、就活中の学生さんの意見や疑問に感じていることなど、じっくりお話を伺えればと思います。

小野:
モトヤユナイテッドの社長の小野です。入社20年で、社長になってからは7期目になります。本社のある岡山を中心に、運転教育や飲食、広告、不動産、投資など、多様な事業を展開しています。

濵田:
ここまで幅広い事業展開をされている企業は、就活していてもほとんどないように思います。

小野:
珍しいと思います。経営の基本は、リソースの選択と集中だと言われていますから。ただ、近年はコロナウイルスの流行で、単一事業に集中する経営のリスクも浮き彫りになりました。どちらが正解かは、一概に言えない世の中になりましたね。


時代のニーズに合わせて事業を拡大した結果、多角経営に。

濵田:
御社は採用サイトで「常に創業期であれ」とメッセージを発信しています。次々に新しい事業を立ち上げていくのは、創業時からの企業方針なのでしょうか。

小野:
そうですね。当社は、1軒の八百屋からスタートした企業です。私の祖父が1948年に創業して父が二代目。私で三代目になります。祖父が新しい挑戦の好きな人で、時代のニーズに応えながら事業を拡げていくなかで、地域に根差して存続・成長してきた歴史があります。

濵田:
時代のニーズというのは、たとえばどういったことでしょうか。

小野:
分かりやすい例で言うと、終戦直後は食べるものにも困る時代ですから八百屋。食べ物に困らなくなると、住むところにお金をかけるようになりますから、建材・建築のような分野に進出。高度経済成長に入っていくと、一家に一台マイカーを持つ時代が来るので、免許をとるための教習所と。そんなふうに時代に合わせて次々と新しい事業を興してきました。いまはやっていませんが、カラオケやボウリング場を経営していたこともありますよ。

濵田:
小野さまは社長に就任されて7期目になります。今後も変わらず、多角経営は推進していくお考えですか。

小野:
新事業へのチャレンジは続けます。企業は立ち止まったら衰退がはじまります。ここからさらに、100年、150年と歴史を重ねていくためには挑戦し続けないといけないと考えています。


経営人材は、企業内で育成できる。

濵田:
事業がたくさんあるということは、それだけ経営を任せられる人材が必要になりますね。

小野:
おっしゃる通りで、当社はこの規模にしては珍しく、グループ内で代表取締役を務める人材が5人もいます。経営人材の育成は当社の課題で、取締役以外でも、たとえば人事責任者に30歳の社員を抜擢するなど、将来を見据えた人材育成に取り組んでいます。

濵田:
地方で働く方は比較的、保守的で安定志向の方も多いと思います。そんな環境のなかで、御社が積極的に手を挙げる人材を採用できているのはなぜでしょうか。

小野:
正直にお伝えすると、そういったタイプの方は全体の1割くらいだと思います。ですので、当社ではゼロから経営人材を育てることに力を入れています。

濵田:
最初から経営センスのある人材を採用するのではなく、入社後に育てていくということですか。

小野:
そうですね。私は、経営人材は作れると考えています。私がまさにそういう人材だったので、どうすれば経営のできる人材が育つかは、身をもって理解しているつもりです。


若くして実家を継いだ自分と、同じ経験を社員にもさせる。

小野:
実は、私は大学に行っていないんですよ。若い頃はあまり勉強熱心ではなかったので。ただ、幸いにも、実家が倉敷地所株式会社という会社を経営していました。当社の前身となる会社です。

濵田:
早い段階で、家業に入られたんですね。

小野:
ほぼ新卒のような形で入社しました。私は後継ぎなので23歳のときには早くも常務になって、その後30歳で副社長、35歳で社長になるわけです。良くも悪くも立場が与えられて、色んな挑戦をさせてもらいました。事業を立ち上げて、見事に失敗した経験もあります。

濵田:
20代から経営に関われるのは貴重な経験ですね。

小野:
私のように、立派な肩書がない人間でも、若いうちから経験を積めさえすれば、経営者としての力を養うことができます。もちろん、まだ7期目ですから私が経営者としてふさわしいかの総括はできません。ただ、少なくともここ5~6年で事業規模は3倍に成長していますから、それなりにはやれていると認識しています。

濵田:
社長自身のご経験から、手を挙げた人に機会を与える育成方針が作られたんですね。

小野:
従業員にも、私が当時受けたのと同じように、経営に関わる経験をさせてあげられれば、立派な経営人材に育つはずだと信じています。


教習所の教官から、グループ5社を束ねる経営者に成長。

濵田:
実際に、従業員から経営層に昇格していった方はいらっしゃいますか。

小野:
いますよ。いまグループ企業を5社任せている者がいます。彼は、大学新卒で当社の運営する倉敷自動車教習所に入社しました。もとは運転を教える教官だったんです。

濵田:
そこから経営者になるなんて想像がつかないですね。

小野:
もちろん、彼自身にもともとベンチャーマインドがあったのは確かです。でも、会社として機会を提供して、色んなことを経験してもらった結果、花開いた部分もあると思います。


チャンスをつかめるのは、行動できる人。

濵田:
機会があったとしても、それを活かせる人材と活かせない人材がいますか。

小野:
それはそうですね。まず大前提はアクションできる人であること。動けない人はダメです。我々は新しいことに挑戦する際は、まずやってみることを大切にしています。

濵田:
とりあえずやってみて、ダメなら撤退ですか。

小野:
もちろん分析・リサーチはしますよ。でも、やる・やらないの議論をいくら重ねても、完璧な答えは出せないと思います。表現として「えいや」という言葉をよく使いますが、最後は腹を決めてやってみるしかないです。

濵田:
最近の若い人にも多いですが、リスクをとるのが苦手な人だと、チャンスを掴むのは難しそうです。

小野:
リスクをとるかとらないかは、その人の価値観次第ですね。当社では、社員にチャレンジを強制することはありません。ただ、公募制という形で機会は常に開かれています。手を挙げてくれた人に、できる限り挑戦の場を提供するようにしています。


すべての人が、リスクを取る必要はない。

濵田:
挑戦、変化が強くメッセージされている御社のなかで、リスクをとれない人はどうなってしまうんですか。

小野:
それはまったく問題ないですよ。リスクを取りたい人だらけだと、逆に会社は成り立ちません。飲食店でも、教習所でも、広告制作でも、同じ仕事をずっと続けて職人的に頑張れる人の存在が、モトヤユナイテッドの各事業を支えてくれています。

濵田:
なるほど。

小野:
ただし、社員の多くが生き生きと働ける場所を提供し続けるためには、会社として挑戦を続けなければいけません。そして、リスクをとってでも新しいことに挑戦する経営人材は希少ですから、志のある人がいたら引き上げたいと思っています。

濵田:
手を挙げた方のなかでも、経営者として成功する人と伸び悩む人がいると思います。経営者に求められる力とは何でしょうか。

小野:
特にこれからの時代、やっぱり発信力は大事になるんじゃないでしょうか。ただ、その人のタイプもありますよ。自分に発信力がなくても、発信力のある人をNo.2に就ければいいので。

濵田:
自分に足りないところは、別の方に助けてもらうんですね。

小野:
そうです。無知の知と言うのでしょうか。自分に何が足りないのか客観的に理解して、助けを借りられる人であれば社長は務まると思います。逆に、自分で何でもできると思っている人は無理でしょうね。経営はチーム戦ですから。


目の前のリスクは、実際よりも大きく見える。

濵田:
社長は若い頃から失敗を恐れずにここまで来られたように感じます。思い切ったチャレンジをするための考え方、心持ちをお聞かせいただけますか。なかなか一歩踏み出す勇気が出せない学生も多いので。

小野:
個人差はあるし、あっていいとも思いますが、私は自分が歳を取ったときに振り返って、「あぁ自分の人生、安定してたなぁ。良かったなぁ。」とはならないと思っています。「あのとき危なかったなぁ、なんであんな決断したのかなぁ」と、後悔も含めて懐かしめる人生を選びたいです。

濵田:
自分のやりたいことをやらないのが一番のリスクだ、といった言葉もよく聞きますね。私も個人的には社長の考え方に近いです。

小野:
学生の方に一つ言えるとするなら、目の前の決断をするときには、無茶であり得ない選択に思えることでも、あとから振り返って俯瞰で見ると、意外と「もっと挑戦しても良かったかも…」と後悔するものです。目の前のリスクは大きく見えますから。

濵田:
いま次々とチャレンジしている社長でも後悔する可能性はありますか。

小野:
あると思います。75歳以上の方に、人生で後悔していることを聞くと、「もっと挑戦しなかったこと」と回答する方が多いというアンケート結果を見たことがあります。でも、きっとその人たちも、人生の節目でチャレンジはしていたはずです。あとから振り返ると、あの時もっとできた、と悔やむ人がそれだけ多いのだと思います。

濵田:
人生においては、自分の感覚よりももう一歩、二歩、無茶な挑戦をするくらいで、ちょうどいいのかもしれないですね。


5年後に、100億円企業を目指す。

濵田:
社長に就任されてから、御社の規模は急拡大しています。今後の経営の目標などについてお聞かせいただけますか。

小野:
直近だと、3年後に売上70億、ES70を目標にしています。ESというのは、エンゲージメントスコアのことで、従業員のエンゲージメントを、当社で独自に数値化した指標になります。Do the Locomotionというスローガンを掲げて、スローガンのプリントされたTシャツなんかも作ったりして、楽しみながら高い目標にチャレンジしていこうと、みんなで取り組んでいます。

濵田:
あ、いま着られているTシャツがそうなんですね(笑)

小野:
そうなんですよ(笑)

濵田:
3年後が70億円だとして、その先もお考えだったりしますか。

小野:
70億円達成できたら、さらに2年で30億円伸ばす計画です。いまから5年後に100億円企業を目指しています。


モトヤだからできる、事業再生、地方創生に取り組みたい。

濵田:
100億円という数字には、何か理由があるのでしょうか。

小野:
地域にインパクトを与えられる規模感を目指したくて、この数値を設定しています。地域のニュースを、当社の仕掛けた事業やお店の話題でジャックするくらいの影響力。さらに言えば、他社がうちの社員を幹部としてヘッドハンティングしたいと思ってもらえるくらいの存在になりたいですね。

濵田:
売上100億円にむけて、具体的にどんな展開をしていくか構想はありますか。

小野:
当社は不動産や飲食、広告など、異業種のプロ集団です。その異なる事業同士が組み合わさるからこそ生み出せる価値創造があると考えています。言葉にすると、事業再生や地方創生です。

濵田:
学生のなかにも興味を持つ人が多いキーワードだと思います。

小野:
地方には、経営に行き詰っている老舗メーカーがけっこうあるんですよ。日本酒、お醤油、民芸品など。そこに多様な経営リソースを持つ、私たちが介在していくことで、組織を生き返らせたり、マーケティングの観点からリブランディングしたりする。当社は、海外にも支店があるので、海外に販路を開拓することもできます。

濵田:
幅広い事業を展開されている、御社ならではの事業ですね。

小野:
多角経営をしているモトヤグループだからこそできる事業再生の形があると思っていて、今後の展開の一つとして期待をしています。


いまを生きる、自分自身の価値観を大切に就活する。

濵田:
最後に、就活中の学生さんに向けてアドバイスやメッセージなどお願いしてもいいですか。

小野:
そうですね…、あまり周りの意見に耳を傾けないことかな。

濵田:
周りというと親御さんなどですか。

小野:
親もそうだし学校の先生もです。いまの若い人とは価値観がまったく違う人たちなので、聞いたことをそのまま参考にはできないと思います。たとえば、私なんか学生時代にポケベルで連絡を取っていたような世代です。そんな人の意見よりかは、今を生きている自分の価値観を大切にして会社を選んだほうがいいと思います。

濵田:
親の意見で進路を変えるのはよく聞きますね…。

小野:
親や先生は、それなりに手堅い進路は教えてくれるかもしれません。でも、もしそれで言われたままの道に進んで失敗したら悔しいじゃないですか。自分の感覚で決断した会社のほうが後悔はないし、結果的に自分なりの道は拓けると思いますよ。

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