同志社大学4年生
山下 実桜
MED Holdings株式会社
佐々木 洋寧
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
今回は、MED Holdings株式会社の代表取締役社長 佐々木洋寧様に、お話を伺いました。
同志社大学商学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活ではコンサルティング業界、人材業界を中心に活動。大学では、IT系ベンチャー企業でのインターンシップに参加経験あり。趣味はゴルフ。休日は早起きし散歩をして過ごすのがルーティーン。
高校中退後、塗装職人や喫茶店のウエーターなど様々な仕事に携わる。18歳頃から俳優に興味を持ち、仕事の傍らにオーディションを受け、エキストラやモデルをおこなう。20歳の時に株式会社時代村が運営する『江戸ワンダーランド 日光江戸村』のキャストとして2年半活躍。その後、故・松方弘樹氏の付き人にもなるが、俳優業で生活していくことの厳しさを痛感し、俳優の道を諦める。1993年にMED Communications株式会社(現・子会社)に入社。半年後にはトップ営業マンとして活躍。支店長、営業部長を経て、2003年11月1日より2代目社長に就任。2012年10月に持株会社として当社を設立し、代表取締役社長に就任、現在に至る。
目次
山下:
本日はよろしくお願いします。
佐々木:
よろしくお願いします。
山下:
まずは御社の事業について教えていただけますか。色々な変遷があって、現在のNEXTAGE GROUP(※)の形になっていると思います。
佐々木:
1993年に設立して、当時は浄水器などを扱う訪問販売事業を行っていました。事業は急成長していったのですが、一方で従業員の管理が行き届かず、浄水機能について誇大な表現で営業をする社員が現れるなど問題も抱えていました。
山下:
それはいつ頃のことでしょうか。
佐々木:
2003年頃ですね。行政から注意も受けました。このときに、会社として扱う商品自体を変える決断をしました。それで当時、CO2削減のために国全体で推進が進んでいたオール電化や太陽光パネルの販売をするようになりました。
山下:
そこからさらにリフォームや建設業に軸足を移されたのは、どういったご事情からなのでしょうか。
佐々木:
オール電化関連の販売は順調でした。ところが、2011年に東日本大震災が起こって…。仕入れ先の工場が津波で流されてしまい、商品が取り扱えなくなってしまいました。
山下:
震災の影響により仕入れができなくなったのがきっかけで、リフォームや建設業に転換されたんですね。大胆な決断です。
佐々木:
当時、既存のお客様宅を伺うと、地震の影響でご自宅が破損してブルーシートがかかっているようなケースが多かったんですよ。だったら、その修理を私たちができたらお役に立てるんじゃないかと考えて、思い切って事業の方向を転換しました。
山下:
これまで積み重ねてきたお客様とのつながりが、次のビジネスにも結び付いたんですね。
佐々木:
そうですね。きっかけが震災なのは残念なことですが、結果的にそのときの事業転換が、さらに成長していくための大きなターニングポイントになりました。
価値観の合う人しか、採用しない。
山下:
御社は訪問販売から始まった企業で営業力が強みです。自分の力で売上を上げたいという数字にこだわる人材がたくさんいる組織のなかで、行政から注意を受けたお話もありましたが、顧客満足に軸足を移していくのは大変だったのではないでしょうか。
佐々木:
社員一人ひとりに感情がありますし、価値観も異なります。育った環境も違います。ですから大事にしたい共通認識を明確に定めて、一貫性をもって発信するように心がけてきました。
山下:
一貫性とは、具体的にはどんな考え方になりますか。
佐々木:
社員の幸せがまずあって、そのためには一定の売上が必要です。そして、売上をあげるにはお客様の満足が欠かせません。一つひとつの点がつながって成長のストーリーになっていきますから、この前後のつながりを社員に理解してもらえるように折に触れて話をしてきました。
山下:
まっさらな状態で入社してくる、新卒の方への教育は特に重要ですね。多様性の時代のなかで育ってきた世代なので、一つの価値観にまとめあげるのは大変そうです。
佐々木:
最初は失敗もしました。新卒採用には2015年から取り組んだものの、当初は選考途中での離脱や内定辞退、早期退職があって、人材のミスマッチが課題でした。ただそこから改善を繰り返した結果、内定辞退は2~3%まで下がりました。
山下:
驚異的な数字ですね。どんな選考をしたらそんなに内定辞退が減るのでしょうか。
佐々木:
おそらく当社の説明会って日本で一番長いんじゃないかと思っています。5時間かけてやるんです。長いから、合っていないと感じた人は途中でどんどん抜けてしまいます。
山下:
長さもすごいですが、どんな説明会なんですか?
佐々木:
当社の価値観をお伝えする場になっています。熱血とか感謝力とか、当社を象徴するようなキーワードを次々投げかけます。当社の考え方を全て伝えきる説明会になっています。
山下:
「熱血」のようなキーワードは、どこから出てきた言葉なのですか。
佐々木:
これはもう創業時からあるキーワードですね。昔は、ほぼ体育会系しか採用していませんでした。熱血という言葉に共感する人の方が、抑揚やボディランゲージを使いながら、伝わるコミュニケーションができるだろうと考えていたんです。
候補者とは、とことん関係を深める。
山下:
ちなみに、説明会のあとはどんなふうに選考を進めるんですか。
佐々木:
とにかく接点を多く持ちます。4月の入社までに8~10数回は会いますよ。年齢の近い先輩と面談を兼ねてランチに行ってもらったり、朝食会をしたり。夏になったらバーベキューのような社内イベントに参加してもらうこともあります。業務に近いものだと、実際の朝礼やミーティングに同席してもらうこともありますし、社内の色んな部署を回って見ていただいたりもします。
山下:
すごいですね。そこまで体験できる会社はそうないと思います。
佐々木:
内定前には一泊二日の合宿も実施します。河口湖のほうまで行って、昼間はチームに分かれてウォーキングラリーをします。これがチームビルディングにつながります。そして夜には、キャンプファイアーを囲んで自分の生い立ちを語り合います。自己開示を通じて、内定者同士の関係がぐっと深まります。
山下:
そこまでやるからこそ内定辞退がほとんどないんですね。
佐々木:
そうですね。中には内定後に、当社でインターンアルバイトとしてOJTを受けて、実際の営業をスタートさせる人もいるくらいです。
ストレスになる一歩手前が、一番成長できる。
山下:
そういったお話を伺うと、入社される方のモチベーションが高くて競争心も強そうに感じます。競争が激しいと、入社後に心が挫けてしまうような方もいそうです。
佐々木:
やり方次第ですね。多少のストレスは成長に必要だと思います。よくよく話を聞いてみると、実は学生さん側にも、腫れ物に触るような接し方ではなく、必要に応じて正しく叱ってもらえる環境が良いという願望があるようです。
山下:
若手の社員に必要な、適度なストレスとはどういったものなのでしょうか。
佐々木:
ストレスになる一歩手前を見極めて、適度な負荷をかけることです。私たちはチャレンジゾーンと呼んでいますが、その適正な負荷の範囲は、本人が将来どうなりたいか、それぞれの目指す目標によって変わってきます。
上場を目指して成長を続けた結果、上場の必要がなくなった。
山下:
会社にとってのチャレンジという文脈でお伺いすると、御社は2012年に持株会社であるNEXTAGE GROUP(※)を設立され、株式上場を目指されています。上場には、御社の強みである大胆なチャレンジが難しくなる弊害もあるかと思いますが、その点はいかがですか。
佐々木:
現在、上場を目指すプロジェクトはいったんストップしているんですよ。準備はある程度、整っていますが、いまおっしゃったように、自社の目指したい方向とそぐわない点もあるためです。
山下:
どんなお考えで、その結論に至られたんですか。
佐々木:
当初、上場には目的が3つありました。会社の信用が高まると、採用面が強くなること。そして、信用は取引先の拡大にも寄与するだろうということ。あと、既存社員のモチベーションも高まるだろうという狙いもありました。たとえば住宅購入でローンを組むときにも、上場企業の社員は有利ですから。
山下:
採用に関しては、上場していなくても既に成功されていますよね。
佐々木:
そうなんですよ。採用だけでなく取引先も順調に増えています。加えて、社員の声を募ったところ、上場したからといってそこまでモチベーションが上がるわけでもなさそうだと判明しました。だったら、わざわざ多額の投資をしてまで上場する意味はないのではないかと。
山下:
そういうご判断があったんですね。
佐々木:
いま当社は、積極的にM&Aを行い、自社の強みであるワンストップサービスの強化を推進しています。持株会社は、比較的M&Aを行いやすい事業形態ですが、それでも非上場会社の意思決定のスムーズさと比べると見劣りします。そういう意味でも、いまはまだ上場するタイミングではないという判断ですね。
自分の目標に近づけるかどうか。就職先は環境で選ぶ。
山下:
社長として大胆な決断をされてきた佐々木社長ですが、もしもいま、大学生に戻って就活できるとしたら、どんな基準で会社を選ばれますか?
佐々木:
それは当然、NEXTAGE GROUPでしょうね(笑)(※)
山下:
それはナシでお願いします(笑)
佐々木:
どうかなぁ。考えたこともないけど、自分の志や将来目指したい目標と照らし合わせて、その可能性が高そうな場所を選ぶんでしょうね。
山下:
業種はどうですか。金融、インフラ、商社など、業種を気にする学生は多いです。
佐々木:
業種からしぼることはないでしょうね。もちろん、世の中に対するアンテナは、ある程度、張ったうえでの決断になるとは思いますが。
山下:
そうなんですね。私もそうだったのですが、事業の詳細や環境は外から見えづらいので、大まかな方向として、先に業種だけしぼってしまってから就活する人がけっこう多いんです。社長のように、自分の目標から逆算する発想ができていたら、より充実した就活ができていたかもしれないといま思いました。
先輩の実績は、入社を判断する重要なファクト。
山下:
さきほどの会社選びのポイントをもう少し詳しく伺いたいです。目的を実現できる環境を選ぶために、どんなところに注目したら良いでしょうか。
佐々木:
会社によって色々あるとは思いますが、たとえば、キャリアプランが定められていて明確になっているか、資格取得の支援があるかといった制度面は参考になります。あと、実際に働く先輩の事例は聞いてみた方がいいです。入社3年でこんな成果をあげて課長に昇進して、という成長曲線がどうなっているかということですね。
山下:
実際の就活のなかでは、そこまで細かく質問する機会はなかったかもしれません。その点、御社の選考は接触回数が多いので、質問の機会も充分ありそうです。内定辞退が少ないのも頷けます。
佐々木:
やはり一番あってはならないのがミスマッチですからね。この会社であれば成長できる、キャリアビジョンが実現できる、と腹落ちした状態で入社することが大切です。
20代前半は猛烈に働いたほうが、後々プラスになる。
山下:
最近の学生さんを面接していて感じる変化などありますか。
佐々木:
私が担当するのは最終面接で、そこまでにスクリーニングされていますから、実はそこまで大きな変化はないんですよ。むしろ、学生さんのレベルは上がっていると感じています。ただ、休み重視の方などが全体傾向として増えてきているという話は伝え聞いています。
山下:
そうですね。最近は、私の周囲の友人・知人を見ていても、会社に染まるというよりは、自分をしっかりもっていて、プライベートを重視する人の割合が増えてきている印象があります。
佐々木:
社内でもたまに話しますが、誤解を恐れず言うと、若い頃、特に20代前半は、脇目をふらず、一心不乱に仕事に集中したほうが、後々のことを考えるとプラスになるのではないかと思っています。人より抜きんでたいと思うなら、結局、人が休んでいる間に2倍、3倍の努力をしないといけません。
努力は裏切らないと理解したうえで、プライベートを優先する覚悟を。
山下:
社長は若い頃、どんな働き方をされていたんですか。
佐々木:
時間で言えば、週90時間くらい働いていたと思います。
山下:
一般的な労働時間の2倍ですね。ちょっと想像できない働き方です。
佐々木:
そうですね。いまだったら大問題になると思います。若い頃、役者を志していた時期があって、社会人になったのが人より遅かったのもありますが、それ以上に、営業が上手くなりたいという純粋な気持ちで、自主的に残って働いていました。
山下:
先ほどの若い頃は一心不乱に、という話は、ご自身の経験からおっしゃられた話なんですね。
佐々木:
もちろん、当社ではそんな働き方は推奨していません。ただ、努力は裏切らないので、結局は、やった人には敵わないんですよ。そこは受け入れる必要があると思います。
感覚を論理的に説明できる学生は優秀。
山下:
社長が最終面接で、この学生は伸びる!と感じるのは、どんな学生ですか。
佐々木:
ロジカルに考える論理的な思考と、感覚的なものを両方備えている方は優秀だと感じますね。感覚的なものを捉えた上で、それを言語化できる頭の良さも持っている人。どの会社も欲しいと感じる人材だと思います。
山下:
そういった特性を持つ優秀な学生に何らかの共通点はあるのでしょうか。たとえば学生時代の経験など。社長のご記憶の範囲内で構いませんのでぜひ伺いたいです。
佐々木:
知的好奇心が旺盛なのかな。疑問に思ったことをスルーせずに、納得いくまで調べる方が多い気がしますね。偶然かもしれませんが、比較的、学歴の高い人が多いかもしれません。
必要人材と優秀人材。だから就活は、優劣だけで決まらない。
山下:
御社も新卒採用では学歴を重視されているんですか。
佐々木:
いえ、そんなことはありません。ありがたいことに、偏差値の高い大学出身の方が志望してくださることもありますが、必要人材と優秀人材は違いますから学歴で選ぶことはありません。
山下:
学歴ではなくスポーツだとどうですか。御社は体育会系の採用が多いので、たとえば、エースピッチャーで4番バッターのような人の方が良いといったことはあるのでしょうか。
佐々木:
当社はむしろ補欠選手でもいいと思っています。補欠だけど寮長としてみんなの面倒を見ていましたとか、そういった方のほうが向いていますね。
山下:
御社は営業力が強い会社なので、むしろ4番タイプの人を求めている印象がありました。両者にはどんな違いがあるんでしょうか。
佐々木:
一概には言えませんが、エースで4番を任されてきたような人は、自分が中心にいないとモチベーションを高められない人がけっこう多いんです。当社は、営業目標を支店単位で設定するなど、チームプレーを大事にしているので、社内で椅子の取り合いをするのではなく、みんなで上がっていけるように、お互いに助け合える人材を求めています。
山下:
それでさきほど、必要人材と優秀人材という言葉を使われたんですね。
佐々木:
はい。能力が基準を満たしているだけでなく、相性も合う関係のほうが、先ほどお伝えした、学生さんにとっての自己実現もしやすい環境だと言えるかもしれませんね。
(※:2024年1月/MED Holdingsに社名変更)
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