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長く活躍し続けられる企業や人材は、何を意識しているのか。

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長く活躍し続けられる企業や人材は、何を意識しているのか。

早稲田大学4年生

黒後 奈那

株式会社システムズ

小河原 隆史

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社システムズの代表取締役社長 小河原隆史様に、お話を伺いました。

早稲田大学4年生
黒後 奈那

早稲田大学商学部。2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界を中心に活動。大学ではよさこいサークルの踊り子として活動していた。趣味はYouTube視聴と映画鑑賞。最近はジグソーパズルにハマっていて、1000ピースのジグソーパズルに挑戦することを目標としている。

株式会社システムズ
小河原 隆史

1999年入社 2011年代表取締役社長に就任。■趣味:ゴルフ、読書、そば打ち(2段)、魚をさばくこと。■家族、休日の過ごし方、年に数回の家族旅行、温泉旅行、都内近郊のおいしいランチ巡り、落語、歌舞伎、ミュージカルなどの文化に触れること、都内の温泉施設でリラクゼーション(温泉、サウナ、マッサージ三昧)。■日ごろ心掛けていること:異業種の方々との交流を通じた情報収集(仕事、飲み会、遊び含め)

目次

黒後:
社長に就任されたのは2011年ですが、ご入社は1999年なんですね。システムズには新卒で入社されたんですか。

小河原:
いえ、新卒のときはパソコンや周辺機器を販売する商社に入社して営業をしていました。
そこで3年くらい勤めて、いまの会社に転職しました。

黒後:
会長のお名前を拝見すると、同じく小河原となっています。小河原様は2代目になりますか。

小河原:
そうですね。父が創業者で、私で2代目になります。大学生くらいのころから、いずれは後を継ぎたいと
考えていました。


就活の軸は、「経営者に必要な要素を学べるかどうか」だった。

黒後:
いずれはお父様の会社を継ぐことを考えていて、そんな中での就活では、どんなことを考えて会社選びを
されていたのでしょうか。

小河原:
経営者に何が必要か考えたときに、自らモノを売る力、いわゆる営業力を身につけておくのは重要だろう。営業と言えば商社かな。そんな感じですね。実は当時、単位がギリギリで…(笑) 就活にあまり時間を割け
なかったんです。

黒後:
私も営業職で内定が決まっているので、営業職を経験して得られたものって、何があったのか気になります。

小河原:
新卒で入った会社は、住所を調べてとにかく飛び込み訪問!という営業スタイルでした。精神面で鍛えら
れたのもそうですが、初対面の人に可愛がられるにはどうしたらいいかとか、今の会社では得られないことを学ばせていただいたと思っています。

黒後:
その会社での経験は、現在の経営にも役立っていますか。

小河原:
役立っていますよ。当社はIT企業で技術の会社ですので、社員が200名以上いても、ほとんどがエンジニアで営業は数名しかいません。とにかくリストを元に上から下まで訪問するという人海戦術的な営業は、
うちのような会社には絶対に無理だと判断できました。早々にマーケティングとブランディングの力を
使おうと舵を切れたのは、自分が身をもって体験していたからだと思っています。


エンジニア、営業職を経て、社長に。

黒後:
小河原様は、社長に就任するまで社員として働いていた期間もあると思います。どんなお仕事をされていたんですか。

小河原:
まずはPG・SEの仕事を学びました。入社から5年くらいかけてプログラミングやチームリーダー、プロジェクトマネージャーなど、開発における一連のポジションを経験しました。ときには納期が間に合わず
夜中まで残って作業したりもしましたね。

黒後:
先ほどお話されたマーケティングやブランディングについて、着手されたのは社長になられてからですか?

小河原:
いえ、開発の仕事を5年ほど経験したあと、営業の責任者になりました。実は、当社も私が入社した
当時は、電話帳を見てコツコツ電話をかけてアポを取る営業スタイルでした。ゆくゆくは変えていかなければいけないと、この頃から考えていました。


コロナ禍で苦労した就活経験は、後に財産になる。

黒後:
マーケティング・ブランディング重視の営業スタイルへの転換は、勇気のいるチャレンジだったと思います。小河原様は、どういったマインドで、リスクを取る恐怖心を乗り越えていかれているのでしょうか。

小河原:
何もしなくても、会社が10年、20年安泰なのであれば、わざわざリスクを取って挑戦していないと
思います。でも、変わらなければ未来がないと確信しているので、やれる・やれないではなく、
必要かどうかという観点で動いています。

黒後:
そういう意味では、いまのコロナ禍での就活も、やりたいかどうかではなく、前のめりに頑張らざるを
得ないから頑張る、といったところもありますね。

小河原:
いま入社してくる人には、苦労した経験は成長につながっているから、むしろラッキーだったと思ったほうがいいよと伝えています。前例のないコロナ禍での就活は、自分で考えて行動するしかなかったはずです。売手市場で難なく入社できた人たちと比べて、それだけ経験値を積んでいるから胸を張っていいと思います。


苦労は、むしろ自分から探しに行く

黒後:
苦労経験で言うと、小河原様の一番苦労した経験はどんなことですか。

小河原:
苦労は常にありますよね。一つ乗り越えても、すぐにまた次の苦労を自分から探しに行っているような
感覚です。

黒後:
苦労を探しに行くんですか。

小河原:
越えるべきテーマが社内にはたくさんあるので、課題は尽きません。会社が完璧に仕上がることはあり得ないので、事業を続ける限りは、常に目の前に一番の苦労がある状態です。これは経営に限ったことではなく、社会人はみんなそうです。壁を越えることを楽しめたほうが、社会の中で成果を出せる人間になれると思いますよ。

黒後:
1つの課題を越えるのに何年くらいかかりますか。

小河原:
10年かけて越える壁もあれば、もっと時間がかかるような課題もあります。営業やマーケティングの形を
変えるのも、社長になる前から取り組んでいて15年くらいかけて、いまようやく形になってきたな、
というところです。


目の前の仕事が、何の役に立っているかを意識する。

黒後:
10年、15年と聞くとすごく長い時間に感じます。日々、仕事をしていくなかで、自分自身のモチベーションをどう高めていけばいいでしょうか。

小河原:
目の前の仕事が何の役に立っているのかを意識することが大切かもしれません。黒後さんが不安を感じて
いるように、社会人の先輩も同じ課題感を抱えていることが多いですよ。

黒後:
詳しくお聞きしてもいいですか。

小河原:
いまちょうど、社員の個別ミーティングをする機会があって、普段どんな仕事をしているか聞くと、
「〇〇の開発をしています」という答えが返ってくるんだけど、その仕事をなぜうちが受注できたかとか、その背景までなかなか伝わっていないんですね。大手企業が技術的に断念したような仕事を我々が受注していま取り組んでいるという事実を、本人は知らなかったりするんですよ。そういう背景を知れば、同じ業務をしていても仕事に向かうモチベーションは全然違ったものになります。

黒後:
私も仕事がお金を稼ぐ事務的なものになってしまうのは嫌だと思うので、意義を感じながら働くことは
大事だなと改めて感じます。


すべての研修には実施する意図がある。

黒後:
採用ページを見てぜひ質問したいことがありました。キャリアデザイン研修のところに28歳、32歳、
40歳、50歳と、具体的な年齢が書かれているのですが、もしかしたら、この年齢で研修を受けさせる
意図があるのかなと思いまして。

小河原:
素晴らしい気づきですね。おっしゃる通りです。キャリアデザイン研修は、ここ2年ほどで立ち上げた
研修です。その中でも、きっかけになったのは50歳の研修です。いま定年は60歳から65歳に延長される
流れですよね。

黒後:
そうですね。

小河原:
社会的な動きを考えると黒後さんがその年になるころには、定年は70歳くらいまでになっていると思います。昔だったら、50歳だとあと10年頑張れば終わりと考える人も多かったですが、これからの人は、50歳になってもまだそこから15~20年は働くことになります。だから、50歳の時に自分のキャリアについてどうしていくべきかをしっかり考えて行動してもらいたい、そのサポートが出来ればと思ったのが始まり
なんです。

黒後:
そういう意図があったんですね。でも、50歳から頑張っても、ちょっとスタートが遅いのかも…と感じます。

小河原:
そうですよね。なので、さらに10年まえの40歳にも研修を設定しました。40歳のときに、現状を棚卸して、そこから50歳に向けて10年頑張れば色んなチャレンジができて、キャリアは大きく広がると思います。

黒後:
と言うことは、28歳と32歳にも理由があるんですか?

小河原:
一般的に、入社3年で3割辞めるって言われますよね。お陰様で当社の場合は、先輩の指導や社員の一体感なのか3年ではほとんど辞める人がいなくて、5年くらい経ったタイミングで、キャリアへの悩みや壁に当たって立ち止まってしまう人が出始めます。それが28歳のタイミングです。そんな社員に28歳研修を通じて社会で働く意義を深く考えるタイミングに出来たらと思っています。32歳は結婚や出産、育児などライフ
ステージの節目になる年齢なので、仕事だけじゃなくて、人生全体を考えられるきっかけになるような場を32歳研修として設けています。

黒後:
研修って、自分が就活しているときは、何となく“あるんだなぁ”くらいに見ていましたが、こんなにも
明確に意図があって実施されているものなんですね。勉強になりました。


年齢を重ねても、必要とされる人材になるために。

黒後:
40歳、50歳の研修の話をしましたが、社会の中で長く活躍できる人材になるためには、どういった能力を磨いていくべきだと思われますか。

小河原:
年齢によって学ぶべきことは違ってきます。たとえばエンジニアなら、若い頃はどんどん新しいテクノロジーを吸収していったらいいと思います。ただ、それで伸びるのは30歳くらいまでで、そこから35歳、40歳と節目を迎えていくと、マネジメント力も求められます。

黒後:
若い頃にしっかり技術を身につけた上で、マネジメントを学べると活躍人材になれるんですね。

小河原:
それなりには活躍できると思います。ただ、さらに上を目指すなら、人を惹きつける人間力も必要になり
ます。会社は、キャリアの全体像を捉えた上で、その時々に必要な要素を吸収できるように支援してあげることが必要だと思っています。

黒後:
何となくは理解できますが、人間力のところがまだ明確にイメージしきれません。小河原様は、人間力をどんなものだと解釈されていますか。

小河原:
私もまだまだ勉強中の身だから偉そうなことは言えませんが、この人と一緒に仕事したいな、と思ってもらえる人格であることだと思います。これまでの人生で出会った人を思い浮かべたときに、困っていたら助けたいと思う人とそうでもない人ってやっぱり分かれると思うんです。そういう場面で、助けたいと思ってもらえる人格であることが人間力なのではと思います。

黒後:
人間力を磨くために、小河原様なりに意識されていることはありますか。

小河原:
自分でも完璧にできているなんて言えませんが、一番は私利私欲を求めないことだと思います。経営においては、「自分が」ではなく、「会社のために、みんなのために、お客様のために」ここを目指したいから
力を借りたいと考えられるかどうかですよね。結局、会社や社員やお客様のためになることは、経営者で
ある私のためにもなりますから最後は一緒ですが、順番が大事です。自分が後。

黒後:
だから就活の時にも、給与や休み、福利厚生を最初から求める人は、一般にあまり評価されにくいんですね。何となく、その辺りの価値観がつながっているのだなと感じました。

小河原:
そうですね。だからこそ、自分の仕事に、自分で意味を見いだせる人は強いです。評価はあとからついて
くるものですから。努力と評価のプロセスが上手く回り始めたときに、仕事が楽しいという感覚を持てる
ようになるのだと思います。


ビジョンの共有で、働く意義を感じやすい環境をつくる。

黒後:
いまの続きでお聞きしたいのですが、社員の方が仕事に意味を感じながら働くために、会社として取り組んでいることはあるのでしょうか。

小河原:
はい。「ビジョン56」という目標を掲げています。簡単に言うと10年後の目指したい姿を、社員のみんなと共有するための経営計画ですね。

黒後:
56という数字には、どんな意味があるんですか。

小河原:
これは会社が設立してから56周年、「56期」を意味しています。56って中途半端な数字ですよね。
実はこの目標を考え始めたのが2014年で45期のタイミングだったんです。そこから10年後ということで、準備期間も含めて56期の目標として設定をしました。

黒後:
なるほど。それでビジョン56なんですね。

小河原:
1チーム6人くらいでチーム分けして、私が入り込んでビジョン56の思いを伝えたり、みんなが日々の仕事で感じていることをシェアしたり。現場の声を集めながら、少しずつではありますが前進しています。


老舗のIT企業。歴史の古さにも実は価値がある。

黒後:
ここ最近は、IT業界を志す学生も増えてきていると思います。そんな中で、御社の特徴や強みにしている点はどんなところなんでしょうか。ホームページを拝見すると、現場×ITといったキーワードも掲げられています。

小河原:
現場×ITのメッセージを発信し始めたきっかけは、まさに自社の企業ブランディングなんですね。50年以上の歴史がある当社が、これまでどんな経験を積んできて、これから何を強みに価値を発揮していくのか
明確にしたいと考えました。

黒後:
現場という言葉から、お客様との距離が近そうな印象を受けます。

小河原:
まさにその通りで、お客様の中に入り込んで一緒に課題を解決していくのが私たちのDNAです。単に技術やテクノロジーを提供するのではなく、お客様に伴走しながらITの力を真に経営に貢献できるものにして
いくのがミッションだと思っています。

黒後:
やはり技術を提供するだけだと、あまり上手くいかないんでしょうか。

小河原:
お客様自身がやりたいと思っていることと、結果を出すための取り組みは必ずしも一致しなくて、乖離している場合も多いです。だから、私たちのようなITのプロがきちんとヒアリングをして、経営的な立場から
支援をする必要があります。

黒後:
IT業界は、比較的新しい産業なので、歴史がある企業よりベンチャー企業のような若い会社のほうが成長できそうだと考える学生も多そうです。その辺り、どうお考えですか。

小河原:
経営の中で使われるIT技術で言えば、新しいテクノロジーを活用しているのはほんの一部であり、ほとんどが古くからの技術・言語でシステムが作られています。レガシー(古くからの技術)とハイテクと両方に精通していて、状況に応じてハイブリッドで提案できないと、お客様の経営に貢献するソリューションを
提供できません。そういう意味で、当社には古い技術から新しい技術まで学べる環境があり、経営全般に
渡ってITで貢献できるということを学生さんに知ってもらいたいです。


一瞬の頑張りよりも、継続する底力を評価。

黒後:
本日は色々なお話を伺えて勉強になりました。ありがとうございます。最後に、小河原様が一緒に働きたいと思う学生はどんな学生なのか教えていただけますか。

小河原:
色んなことにチャレンジしたいとか、前向きに取り組む積極性を持った学生さんだったら、ぜひ一緒に働きたいと思いますね。

黒後:
勉強にサークルに、アルバイトに、学生時代にも色んなことに挑戦しておいたほうが良いということですね。

小河原:
ただ誤解のないように補足すると、私がいいなと思うのは、一時的な一生懸命さではないです。それよりも持続性のある「粘っこい前向きさ」を評価します。一時的には頑張れることっていくらでもあるんですよね。でもそうじゃなくて、じわじわと継続してやり続ける熱い心を持っている学生さんが私は好きですね。


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