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安さを捨てた 我々は幸せを追求する会社だ

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安さを捨てた 我々は幸せを追求する会社だ

関西大学4年生

竹中 優輝也

株式会社ユーゴー 力こぶホールディングス株式会社

沼崎 周平

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社ユーゴー 代表取締役社長 沼崎周平様に、お話を伺いました。

関西大学4年生
竹中 優輝也

関西大学商学部。2023年4月より株式会社クイックで就業予定。小学3年生から高校3年生まで10年間サッカーをしており、現在は社会人フットサルチームに所属。趣味はギターで弾き語り。特技は鳥肌を自由自在に出せること。睡眠と運動と犬が大好き。

株式会社ユーゴー 力こぶホールディングス株式会社
沼崎 周平

1971年、福島県に生まれる。大学卒業後、株式会社ユーゴーに入社。 1997年、専務取締役に就任し、2005年に代表取締役に就任。

目次

 

 竹中
本日はよろしくお願いいたします。
初めに沼崎社長の大学卒業後の簡単なご経歴をお伺いしてもよろしいでしょうか。


沼崎
大学を出て、父親の会社に入社しました。当時は年商で言えば1億円くらいの小さなクリーニング屋さんでした。私が34歳のとき、その頃には15億円くらいの会社になっていて、父親が、「数字が大きくて計算ができないからやってくれ」と言ってやめたんですよね。それで、社長に就任して店舗展開を加速させてきました。今ではグループ全体だと45億円くらいの規模になっています。


その方針はみんなの幸せにつながるのか

竹中
1億円から始まってここまで会社が大きくなってきた背景について教えていただきたいです。


沼崎
20代の頃は、単純に商売を大きくすれば、お金持ちになれるんじゃないかという気持ちで働いていました。けれど、会社を拡大していくと自分が忙しくなるんですよね。そこで、父親に、何でこんなにも会社を大きくしようとするのか聞いたことがあるんです。すると、事業欲だって言うんです。父親は事業を大きくしたいという欲求があったんですよね。私は事業に対する欲求なんてその当時では考えたこともありませんでした。

 

竹中
事業に対する欲ですか…。


沼崎
そんなとき、父親がやめたんですよ。私は事業に対する欲なんてなかったし、当時の社員たちは相当疲弊していたし、私自身も仕事しすぎていました。何のために仕事をしているのか考えた結果、社員に不満を言われる会社は一番意味がない、どうせやるんだったら社員満足を高めて、社員に愛される会社づくりをしようと思ったんです。 


竹中
社員さんが疲れていたとありましたが、当時、会社としてどんなことを目指してらっしゃったんですか。


沼崎
当時は年商100億円を目指していました。けど、働く人を集めることや育てるという点で苦労していました。更に、仮に100億円に到達したとして、社員に果たしてどんな見返りがあるかとか、お客さまには関係のない話だよなと思ったんです。無理をして売上を伸ばそうとするのは意味がないと思い始めました。


竹中
なるほど。


沼崎
働く上で本当に大切なのは幸せだと感じれるかどうかだと思いました。社員とお客さまと会社、この3つの幸せを追うべきだ、この3つの最適を常に探すことこそが経営というものなんだろうなと思いました。理念を全うしてくれる社員と働き、お客さまを大切にし、会社が100年間存続する。こういった理念経営が、働くことの疑問に対する自分の答えになっていると思います。


竹中
当時を振り返って、そういった会社づくりのためにどんな取り組みがありましたか。


沼崎
当時は売上至上主義で、とにかくクリーニングを安く・早くでした。安いクリーニングには安い労働力が必要ですが、そうすると、社員は幸せになれませんよね。だから、1円でも安いクリーニングを求めているお客さまはターゲットから外して、価値を提供していく方向にシフトしたんです。


できれば行きたくない場所から
行きたいと思える場所に

竹中
実際にどんなことを行ったのでしょうか。


沼崎
まずは人から変わらないといけないと感じ、接客レベルなどの向上のために色んな想いを話しながら社員教育に力を入れました。お店のデザインなども一新して、基本価値を高めることに努めた結果、クリーニングの価格が当時の1.5倍位になりました。


竹中
そうなんですね。
価格を上げるというのはリスクも大きいと思いますが、それでも業績を伸ばし続けてきた理由はどんなところにありますか。


沼崎
安さを捨てて、「楽しさ」をお店の特徴にしたんです。クリーニング店は、テーマパークのようなものとは違い、行きたいと思って行く場所ではありません。そんな場所に来てもらうためには、来ていただく動機づくりが必要だと思っていました。最初は「安さ」でしたが、私自身楽しいことが好きだったので、楽しいお店にしようと思いました。


竹中
安さの代わりに、楽しさをはじめ、色々な価値を加えていったのですね。


沼崎
そうですね。当時、コンビニエンスストアはディスカウントストアの倍くらいの値段で物を売っていました。安さを求めている人ばかりだったら、後者に行列ができるはずですが、前者のほうが数も多いし売上も上がっていますよね。安いのが良いっていうのは、表面的な問題なんです。また、安さを捨てたことで、安さ以外にも魅力を感じて来てくださるお客さまが増えて、どんどん働くのが楽しくなりました。


楽しいサービスが加速したお客様の一言

竹中
そういった楽しいサービスはいつ頃始まったんですか。


沼崎
安売りをやめた2007年位に始めました。けん玉に挑戦して成功すると割引率が変わる「タマタマ割」という企画や、サイコロを転がして出た目によって割引率が変わる「コロコロ割」は今も続いています。


竹中
HPを拝見すると、その他にももっとたくさんの種類のサービスがありますよね。


沼崎
実はエピソードがありまして、クリーニング店は土曜日が混むんですよ。当時、けん玉割引の日は0の付く日だったんですが、その日と土曜日が被ってしまいまして、並んでたお客さまに「こんなに並んでいるのに、けん玉やらせてるんじゃないよ」と怒られてしまったんです。


竹中
そんなことがあったのですね。


沼崎
けれど、その後に並んでいたお客さまが「さっきの客の態度は何だ、私はけん玉がやりたくてこの日にこの店に来ているんだ」と言ってくれたんです。その時にコレだ!と思いました。どのお店に行くかという選択権は、お客さまにあるのだから、こちらはどんどん面白いことをやろうと思えたんです。そういえば、行きたくて行く場所であるテーマパークなどでは、お客さまはみんな待ってるなと気づいて、そこからサービスを加速させていきました。


竹中
それは自信になりますね。そういったサービスを展開する中で気をつけていることはありますか。


沼崎
大切にしているのは、お客さまに価格以上の価値を感じてもらうことですね。お客さまが想像する価格と、実際の価格の差がお得感です。お客さまが感じる価格の「高い・安い」は、価格の絶対額が決めるのではなく、価格に対する満足度が決めるんですね。お客さまが、価格以上の価値、つまりお得感を感じていただけるように、ユーゴーでは品質・納期・サービス・店舗・プロモーション、この5つの価値を高めていくことを目指しています。



1億の会社の社長は、1年目の新入社員!?

竹中
ありがとうございます。
HPや求人サイトを見ると、若手社員に大きな仕事を任せる風土があると感じたのですが、それはなぜですか。


沼崎
BtoBで、1000万円のお取引のあるお客さまという仕事なら任せるのは難しいと思います。
 しかし、我々はBtoCのビジネスで単価は高くありません。その積み重ねで結果的に1億円くらいの規模になりますが、新入社員に任せているのは、入ってくるお金、出ていくお金を損益計算書上でしっかりと見て判断してもらうこと。自分がやっているビジネスの財布を見るということですね。 


竹中
沼崎社長からすれば、収入と支出を把握・管理するというビジネスをする上では至極当たり前のことを若いうちから経験してもらっているということなのですね。


沼崎
ビジネスというと難しく考えちゃうけれど、将来は経営者を目指してほしいので、その店舗の社長という立場になって全てのお金の出入りを見てもらっています。それを1年目から意識してやっていけば、30歳になった頃には損益計算書上の数字から問題を発見して、現場を変えようと動けるはずです。


決めることは幸せなこと
社長を経験してほしい

竹中
将来は経営者を目指してほしいという想いの背景について教えていただきたいです。


沼崎
社長って一番楽しいと思うんです。会社の規模にもよりますが、大きなお金を何に使うか考えることができて、それによって人に喜んでもらったり、幸せを感じてもらうことができます。決めることができるというのは幸せなことなんです。大変なこともありますが。純粋にこの楽しい仕事を経験してもらいたいんです。


竹中
「社長」は、みんなが憧れる役職だと思います。


沼崎
新しいことにチャレンジするときは、社長歴の若い人のほうが絶対やれると思います。経験値が付くと、うまくいかないだろうなと見当がついてしまうんです。先が見えなくてもチャレンジをして正解を見つける努力をすることは若いほうができますよ。


竹中
経験値が多いことが必ずしも良いことばかりだとは限らないんですね。


沼崎
私と同じ年齢の社員をグループの社長にしたんですが、彼も圧倒的に活発で楽しそうに仕事をしてますよ。私がいない方が人は育つんですよね。判断しないといけなくなるので、そこに成長もあるんですよね。父親は私に言うことだけ言って、午後には会社からいなくなってましたが、それと同じようになるべく会社にいないようにしています。


竹中
お父様が計算ができないから仕事から離れられたと仰っていましたが、そういった想いがあって沼崎社長に任せられたのかもしれないですね。


沼崎
そうですね。そうだと思いますよ。

 

To Cで活躍できる、人材輩出会社であり続ける

竹中
共に働いてきた社員さんが社長になると、少し寂しい気持ちもあるのかなと思うのですが、いかがでしょうか。


沼崎
グループ内で社長になると、離れちゃう寂しさはないですね。
完全に別資本で同業で事業を始められると困っちゃいますけど(笑) 


竹中
そうですね(笑)別業界で独立される方もいらっしゃいますか。


沼崎
それは推奨しています。我々の仕事は、メーカー的側面、小売業的側面、サービス業的側面の3つがあります。3つの業態の勉強をして、その損益計算書を見れるので、BtoCのビジネスなら応用が効くと考えています。だから、本人がやりたいと言ってビジネスプランを出してくれれば、1000万円とかを出資することもあります。


竹中
そんなに出資を行うこともあるんですね。その理由は何でしょうか。


沼崎
会社って、入社して上に行くほど、ポジションがなくなっていきますよね。私がイメージしているのは逆ピラミッドなんですよ。


竹中
上に行くほど選択肢が増えるのですか。


沼崎
そうです。ユーゴーに残って役員を目指してもいいし、M&Aした会社の社長を目指してもいいし、全く違う業界の経営をしてもいいんです。グループ内ではデザインの世界、不動産の世界などもあります。そういう仕事を分社化して社長になってもいいんですよ。どんな仕事でも、必ず次の会社で活躍できる人材、新しい会社のお客様の役に立つ人材を輩出する会社でありたいと思っています。


竹中
沼崎社長の、社員さんを支援する気持ちがあるからこその選択肢の幅なんだろうなと感じました。では、社員さんが独立をすると寂しさよりも嬉しさのほうが強いのでしょうか。


沼崎
社長になってくれたら、会社を経営するという自分と同じ立場ということなので嬉しいですよ。今、日本は独立したり起業する人が減って、お金の話はタブー視されているご家庭が多いように感じます。商人の家庭は、お金の話が家庭内で飛び交うので、商売センスが養われた子が育ちやすいんですよ。


竹中
経営者の家庭だと商売の感覚が研ぎ澄まされた子が育つ可能性が高いのですね。


沼崎
そうですね。これは学問ではないです。けど、社長を世の中にどんどん輩出すれば可能性は広がっていきますよね。そういった想いもあります。


竹中
なるほど。経営者の家庭の人もそうでない人にも共通して、若者に求めることは何か教えていただきたいです。


沼崎
これは3つうちで言っていることがあります。まずは、人として誠実であるべきだということ。次に仕事でも遊びでも熱意を持って取り組むこと。そして、色んなものに思いやりを持つことです。誠実・熱心・思いやり、この3つを持っていれば、役に立てることも増えるし、助けてもらえることも増えますよ。


休みを増やして、会社が最高益に!

竹中
水曜日を定休日にした理由を教えていただきたいです。


沼崎
東日本大震災のときに、国の節電目標が15%削減だったんです。7分の1は14.3%くらいなので週に1回休めばいいと思いました。当時売上が一番少ないのは木曜日だったんですが、木曜日を休むと木曜日に来ようとしていたお客さまが週末に集中してしまうと思ったので水曜日を休みにしました。 


竹中
なるほど、それをずっと続けているんですね。 


沼崎
今まで年中営業していたのが定休日を作るわけですから売上は落ちますよね。けれど、水曜日の売上を1年分出して、それを0にしても1%くらいの黒字だったんですよ。じゃあ休んだほうが良いよって思って続けています。


竹中
すごいですね!


沼崎
クリーニング店は、持っていった日に休みであれば、次の日に持ってきてくれるんですよ。ということは、休みを告知して覚えてもらえば大丈夫だと思い、しっかりと告知をしていた結果、休みを取り入れた翌年に最高益を出しちゃったんですよ。


竹中
びっくりしました。理由は何でしょうか。


沼崎
お客さまが定休日を避けて営業日にご来店してくださり、更には、「定休日ができてよかったね」というお声までいただきました。営業日が減ったことで労務費を始めとしたコストが下がったという理由もありますが、やはり理解を示してくださったお客さまと、定休日を避けてまで利用したいと思っていただける関係を築いてきた社員たちのおかげだと思います。


竹中
定休日を入れたことで、1日リフレッシュできるので、接客の質やサービスの質を高めていくことにも繋がったのかもしれないですね。利益が増えたことで変わったことはありましたか。


沼崎
営業車を安全性の高い外車にしたり、みんなで有名テーマパークに行ったりと、誰が見ても分かるところにお金をかけるようになりました。利益を出すと会社は変わっていくんだ、会社を変化させていくのは自分たちなんだ、ということを働く社員に実感してもらいたいんです。


竹中
すごくいいと思います。ワクワクしますね。


頭の中を汗だくにする
人の倍考えよ

竹中
社会人として成長していくためにどういった事が必要ですか。


沼崎
人の倍成長するには人の倍やる、というのが一般的な考え方ですよね。ただし、これは倍の量を倍の時間をかけて手を動かし続けるという意味ではなく、頭の中に休みを作らないという意味です。例えば、仕事がオン、遊びがオフと切り分けるのではなく、時には遊びに行った先で発見したことを自分の仕事に取り入れたり、時には仕事での学びを遊びに応用したり。仕事と遊びが常に入り混じっているイメージです。


竹中
なるほど。何をやるにしても考えることをやめないようにしたいと思います。 


沼崎
遊びでも仕事でも一生懸命やれば、つながることは多くあります。少年野球の指導者の資格を遊び半分で取ってみたら、人材育成の場面にすごく活きました。だからこそ、常につなげて考えることが大切なんです。


竹中
ありがとうございます。沼崎社長自身はこれからの会社について、どんなことを考えていますか。


沼崎
会社を100年残したいので、私がいないとできないことを無くさないといけないと思っています。後は、「社長」に飽きちゃっているので、社長以外のことがしたいです(笑)
会長を極めてみるとか、ビジネスモデルをたくさん考えてそれをやってみたい人を募集するとか、子供や障害者のための事業を考えたりしています。 


会社≒小学校

竹中
コロナ禍で自己開示する機会が減ってしまった学生が多いと思います。今の学生に対して何か思うことはありますか。


沼崎
引け目を感じずに積極的にリアルの良さをこれから堪能してほしいですね。食事会やチームだからこその達成感とか、学生の間でできなかったことは会社がやってあげるべきだと思いますね。


竹中
そういった想いから社内イベントが充実しているのですね。
運動会などは今も開催されているのですか。


沼崎
2022年には3年ぶりに運動会をやりました。私は会社を学校のようにするのが理想なんです。仕事が授業、私は校長先生ですね。休み時間にはBBQしたり、仲間と飲みに行ったりとか。学生の頃は、給食が好きで学校に行っていた人もいましたよね。会社に来る理由なんてなんでも良いんです。ワクワク笑顔で会社に来てほしいですね。


竹中
素敵ですね。福利厚生にあるコミュニケーション宿泊施設とは一体何でしょうか。


沼崎
我々の地域では基本的に車移動が多いんですが、お酒が飲めないので、飲める場所と泊まれる場所があったほうが良いと思って、本社の隣にある民家を買い取ったんです。お歳暮やお中元で頂いたお酒をそこに保管していて、社員は寝泊まり自由ですよ。 


竹中
寝泊まり自由なんですか!楽しそうな施設ですね。


沼崎
こういったことも、もしかしたらビジネスに繋がるかもしれないですからね。


竹中
感銘を受けました。本日は貴重なお話をありがとうございました。

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