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就活も地方創生も、リアリティのある人間関係から逃げるとハリボテになる。

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就活も地方創生も、リアリティのある人間関係から逃げるとハリボテになる。

同志社大学4年生

飯田 亮

株式会社ワールド・ワン

河野 圭一

interview

学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社ワールド・ワンの代表取締役社長 河野圭一様に、お話を伺いました。

同志社大学4年生
飯田 亮

2022年4月より株式会社クイックで就業予定。就活では人材業界を中心に活動。大学では人材会社のスタートアップで長期インターンにも参加していた。趣味は筋トレ。休日はドライブに出かけるなどアクティブに過ごすのが好き。

株式会社ワールド・ワン
河野 圭一

1971年、神戸市須磨区生まれ。1999年に闘龍門JAPAN所属のプロレスラーとしてデビュー。引退後の2002年、神戸に沖縄郷土料理店「modern食堂金魚本店」をオープン。関西を中心に20店舗以上のご当地飲食店を展開。産地直結をスローガンに、事業を通じた地方活性に尽力している。

目次

飯田:
クイックのインターンをしております、飯田亮と申します。本日はよろしくお願いいたします。

河野:
よろしくお願いします。

飯田:
河野社長は、会社を始める前はプロレスラーだったんですね。

河野:
20年前の話ですけどね。ご縁があってプロとして活動していたことがあります。

飯田:
プロレスラーから社長になるのは相当大きな変化だと思いますが、飲食事業を始める、何かきっかけはあったのでしょうか。

河野:
プロレスは地方巡業が多くて、全国の色んな地域に行かせていただきました。そのときに、地方都市がどんどん開発されて、その土地らしいお店や景色がなくなっていくのを目の当たりにしたんです。それで地方の魅力を活かして、いつか飲食店をしたいと思っていました。


お客様と生産者をつなげる喜び。

飯田:
地方への関心と飲食事業はどんなふうに河野社長のなかで結びついたんですか。

河野:
実は若い頃、プロレスラーになる前は飲食店を経営しており、飲食店の経営自体には馴染みがありました。当社の1店舗目は沖縄料理店なのですが、単純に私が沖縄を好きだったことが理由として大きいですね。現地の味を神戸の人にも知ってもらいたい、という純粋な気持ちで始めました。

飯田:
いまは街中に沖縄料理の店はたくさんありますが、20年前はあまりなかったんですね。

河野:
当時、沖縄料理店はまだ全然なかったのと、沖縄を舞台にしたテレビドラマが流行ったのも重なって、おかげさまでお店は大繁盛しました。オープンした後に、仕入れをさせてもらっている現地のおじいちゃんおばあちゃんに、お店の反響を報告したら大喜びしてくれましてね。

飯田:
それが成功の原体験になったんですね。

河野:
脚光を浴びていない地方の食材や料理を伝えることで、お客様にも地方の生産者の方にも、こんなに喜んでもらえるのかと感激しました。


プロレスラーになったのも縁。飲食事業を始めたのも縁。

飯田:
若くしてお店を経営されて、そこからプロレスラーになって。そして引退後に飲食事業を展開して。やりたいことに次々とチャレンジされてきたように感じます。そんな社長から見て、学生のキャリアについてアドバイスはあったりしますか。

河野:
世代もあると思いますけど、私は、自分はこうあらねばならないとか、将来のビジョンはこうだとか考えたことがないんですよ。最近は、やりたいことが見つからない若い方も多いみたいですね。

飯田:
河野社長は明確にチャレンジしたいことやビジョンがあって、ここまで進んで来たわけではないんですか。

河野:
私は、工業高校卒で大学に行っていないので、そんなに職業の選択肢もなかったし、プロレスラーになったのも、たまたま声をかけていただいたご縁で挑戦することになっただけなんですよ。

飯田:
昔から憧れがあったわけではなく、偶然の出会いなんですね。

河野:
目の前のことを全力でやってきた。それだけですね。社会に出ると理不尽なこともいっぱいあるじゃないですか。私も阪神大震災でお店を失うなど、厳しい状況に追い込まれた経験がありますけど、厳しさを乗り越えた先に、たまたまご縁があって道が拓けたという感じです。

飯田:
そんなご苦労をされていたんですね。重みが全然違いますが、私もアルバイトを探す時は、友達の紹介だったり常連になっていたお店で誘われて働いたりしてきたので、人との縁で道が拓ける感覚は共感できます。でも一方で、アルバイト探しでは自然にできていたことが、就活になると急に周りの目が気になって、同じように考えられなくなっていたのだと、社長のお話を伺って気づかされました。


お客様も従業員も生産者も「人」。

飯田:
御社はナビサイトを拝見すると、メッセージや写真から人を大切にされている雰囲気が伝わってきます。河野社長が、日々のコミュニケーションで気を付けられていることはありますか。

河野:
経営理念の共有には力を入れています。ただ掲げるだけでなく、しっかり浸透するように心がけていますね。世界一のエンゲージメントカンパニーというビジョンを掲げていて、これはお客様だけでなく、従業員も生産者も含めた、人対人の関係を大事にする考え方です。

飯田:
お客様は神様、といった言葉もありますが、少し考え方が違うんですね。

河野:
誰の立場が上だとかではなく、三方良しの発想が近いです。お客様にとってより良いことをちゃんとやっていく。人を大切にする気持ちを持っていれば、自然にできることだと思います。


人対人の関係づくりは、研修で磨けるほど単純ではない。

飯田:
御社は飲食店なので、アルバイトさんの数が多い組織です。考え方の共有は、なかなか難しくありませんか。

河野:
そこは店舗の社員に、日々の仕事の中で丁寧にやってもらっていますね。

飯田:
マネジメントの研修のようなこともされているんですか。

河野:
世の中には、上司が部下を上手にほめるための研修があったりしますが、個人的には必要ないと感じています。リアリティがないというか。作り笑顔でいいねと承認するのでは、言う方も言われる方も辛いですよ。人と人の関係はそんなに単純ではないと思っています。

飯田:
日々のコミュニケーション以外に、何か会社として実施されていることはありますか。

河野:
日々のコミュニケーションが一番だとは思いますが、経営計画方針発表会というのを、従業員を集めて実施したり、価値観を共有するための言葉をまとめた手帳を配布したりもしていますね。

飯田:
高校生のころからアルバイトをしていて、色んなお店で働きましたが、価値観の共有をしている店は一回もなかったです。同じ店でも、先輩によって考え方が全然違うのが普通でした。


飲食業界はキツいと考え、エントリーしない学生は多い。

飯田:
普段はなかなか質問できないことですが、飲食業界=キツい、というイメージが就職活動においてはあると思っています。学生さんには、働き方のリアルなところをどのように伝えてらっしゃいますか。

河野:
実は、労働環境については、私たちが創業した20年以上前の状況と現在とではまったく変わっています。昔は休みが週1日しかなくてもそれが普通でしたが、今は週休2日になってきています。当社が変わったのは10年くらい前からですね。新卒採用を始めたのがきっかけで、待遇の改善が一気に進んできました。

飯田:
年間の休日数120日以上を希望する学生が多いなかで、御社は107日ということで、理想との間には、まだギャップがあると思います。そのギャップを埋めるために、採用時にはどんなコミュニケーションをされているのでしょうか。

河野:
一つは、できるだけありのままの姿を見せることでしょうね。嘘をついて人数を確保しても意味がありませんから。もう一つは、自分たちの価値観を伝えて、そこに共感してくれる人を採用すること。その学生さんが働く目的、自己実現は何なのか。価値観のすり合わせには、時間を惜しまず向き合うようにしています。


本音を隠して内定の山を築いても、幸せになれない。

飯田:
企業側が採用するために良いように演出をして…、というのはよく聞く話なので、御社の姿勢は学生にとってはありがたいです。逆に、選考を受ける学生側が持っておくべき心構えはありますか。

河野:
たまに出会いますが、内定の数を集めることが目的になってしまっている人。あれはもったいないと思います。内定なんて何個とっても、結局、入社できるのは一社だけですから。そんなにたくさん内定を取れる力があるなら、もっとガチンコで勝負したほうがいいです。自分をさらけ出して、価値観がとことん合う会社を見つけた方がいいと思います。

飯田:
御社が学生と相互理解を深めるために、具体的にされていることはありますか。

河野:
面と向かって話すことに尽きますね。昔は、セミナーに来てくれた学生さんをお店に招待して懇親会を開いたりもしていました。一時期、学生さんの間で、あそこの説明会に行くとタダで飲み食いできると噂になっていたくらいです(笑)


採用は、その人から滲み出すフィーリングで決める。

飯田:
これまでに接してきた学生で、御社の価値観に合う人材とは、どんなタイプの方だったのか教えていただいてもいいですか。

河野:
結局は、一緒に働いてみないと分からないかもしれません。最後はフィーリングで決めるしかないかな。この人とは一緒にご飯を食べたい、楽しくお酒が飲めそうとか。人と人の相性ですね。

飯田:
面接で見抜くのは難しいですか。

河野:
難しいです。最初の2~3年は周りのみんなが心配するような危なっかしい人材が、何かのきっかけで覚醒することもあれば、入社直後から優秀で何を任せてもそつなくこなす人が燃え尽きてしまうこともあります。

飯田:
最近は、学生の面接対策も進んでいて、ますます判断が難しくなっていますよね。

河野:
狐と狸の化かし合いになるのが嫌だからこそ、表面的な言葉ではなく、その人からにじみ出るフィーリングを大事にしています。あとは入社後に、お互いが真剣勝負で、本音で向き合うしかないと思っています。


挑戦をさせることが、パワハラになるかもしれない時代。

飯田:
フィーリングの他に、判断基準になっていることはありますか。

河野:
当社の社員は、飲食店の運営だけが職務ではありません。地方の生産者の方とタッグを組んで、プロジェクトを立ち上げて動かしていく。あるときは地方の酒蔵さんとコラボする。あるときは地方の行政の方とやりとりをする。色んなプロジェクトが立ち上がっていくので、そこに手を挙げて立候補できる挑戦心のある人が理想ですね。

飯田:
挑戦は、基本的に自己申告ですか。

河野:
自分から手を挙げなくても、もちろん会社側からの抜擢もあります。任されることで、背負った責任を力に変えられる人は楽しく働けているように思います。

飯田:
次々任せていると、失敗することも多くなりますよね。

河野:
多いですよ。でもいいんです。失敗しても上司がフォローするから、とにかく思い切って挑戦してみようと。「できる・できない」ではなく、「やるか・やらないか」だと、社員のみなさんには日ごろから伝えています。

飯田:
最近の若い人は特に、失敗を怖がる人が多いです。

河野:
成功と失敗の二択で考えるから怖いんでしょうね。実際は、成功と成長で、プラスしかないので、思い切って飛び込める人はどんどん伸びていきます。

飯田:
そこまで伝えてもできない人もいますか。

河野:
残念ながらいます。鼻から挑戦しない人は、会社としてもそれ以上、背中を押してあげられない。たとえその人のためだったとしても、無理に挑戦させるようなマネジメントは、もう今の時代はできないですからね。


儲かりそうだから、という動機で事業はやらない。

飯田:
河野社長は、今後も飲食や地方活性のような方向で事業展開をお考えですか。

河野:
これは経営計画書にも明記していることで、店舗もしくは地方活性化に関わる周辺事業だけをやると、会社として決めています。儲かりそうだからと言って、たとえば金融事業に参入するようなことは絶対ないわけですね。

飯田:
その想いの背景には、何かお考えがあるのでしょうか。

河野:
私があれもこれもできる器用な人間ではないのもそうですけど、根っこにあるのは、創業の頃からずっと考え続けてきた「自分は何のために働いているのか」「会社は何のためにあるのか」という問いにあるのかもしれません。一言で表現するのは難しいですね。若い頃はメンバーと飲みに行ったときに、酔っぱらいながらよく語り合っていました。


地域に根差すとは、生産者とともにリスクを負うこと。

飯田:
最近は、地方の食材を取り入れた料理を出す店も珍しくなくなりました。社長のような想いがなくても、店舗開発のいち手法として地方とのコラボが当たり前になっているなかで、御社はどうやって差別化をしていこうとお考えですか。

河野:
そこはリアリティの差でしょうね。

飯田:
リアリティとはどういうことですか。

河野:
そこに人と人とのつながりがあるかどうか。本物とハリボテは、やっぱり全然違うんですよ。私たちは生産者の方々とひざを突き合わせて、いっしょに商品開発をしています。産地直送ではなく「産地直結」と私たちは呼んでいます。

飯田:
一般的な産地直送と比べて、生産者さんとの付き合い方はどう違いますか。

河野:
生産者の方にお伝えしているのが、食材を仕入れる我々を向いて仕事をしないでください、ということです。その食材を食べてくれるお客様に向けて、タッグを組んで一緒に頑張りましょうと。その目線合わせをしっかりやります。

飯田:
一方通行で仕入れるだけの関係ではなく、地域の方々との双方向のつながりが強みなんですね。

河野:
たとえば最近だと、高知の土佐清水市に藁焼きの加工所と藁焼きの体験施設を作りました。まだ少し先の話になりますが、道の駅の運営をさせていただいたり、クラフトビールの事業を承継したりするなど、地方に拠点を作るプロジェクトがいくつも動いています。会社として投資をすることになるので、リスクもあるし苦労も多いですけど、地域の方々と本物のつながりを持つことが、当社にとって財産になると考えています。


学生も企業も、お互いに完璧を求めすぎないことが大事。

飯田:
もともと私は、就活では人を軸にして活動をしてきたのですが、今日、社長のお話を伺って、やっぱり自分は間違ってなかったと再認識ができました。ただ、世の中を見渡すと、多くの企業は、まだまだ御社ほどオープンな考えで採用をされていませんし、学生側にも踏み込むのを躊躇する気持ちがあります。どんな考え方で就活に向き合えると、自分にあった企業を選べるか、最後に社長の考えをお聞きしたいです。

河野:
学生さんは、多少厚かましいくらいで丁度いいんじゃないでしょうか。担当の方に、もっと積極的に質問していいと思います。もちろん、重箱の隅をつつくような細かい質問ばかりだと警戒されてしまいますが、本気で入社を検討するなら聞きたいことが多くなるのは当然だし、そういう真摯な気持ちは担当の方にも届くと思います。

飯田:
私自身も、選考中にこれを聞くと評価が下がるんじゃないかと、考えすぎて質問できなかった経験があるので、そういうご意見をいただけると心強く感じます。遠慮しすぎず、素直に自分を出すことが大切なんですね。

河野:
あとは企業側も学生側も、お互いに完璧を求めすぎないことです。ある程度のファジーさは、人間関係には大事だと思います。社会はそもそも理不尽なものであることを前提として受け入れた上で、人にしてもらうのではなく、自分がどうするかを考えて行動していける人は強いです。

飯田:
世間でも言われていますが、受け身な学生は増えているかもしれないですね。

河野:
ニュースなどでは、若者が悪いように言われていますけれど、実は我々の時代にも「くれない族」っていう言葉が流行ったことがあったんですよ。上司が〇〇してくれない、会社が〇〇してくれないと。いつの時代にも他責思考の人はいます。でも、その発想だと仕事を楽しめないので、もったいないと思いますね。

飯田:
本日はお時間いただきありがとうございました。お話を伺って、学生だけでなく就活を終えてこれから社会人になる自分にとっても参考になる考え方を得られました。

河野:
こちらこそありがとうございました。飯田さんみたいな方が、面接に来たら即決で採用したいと思いました(笑) 社会に出ると大変なこともあると思いますが、ぜひ頑張ってください。

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