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働くことは、自己表現の手段

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働くことは、自己表現の手段

広島大学 4年生

足立 汐音

合名会社 安田商店

安田 茂宏

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、合名会社安田商店 代表社員 安田 茂宏様に、お話を伺いました。

広島大学 4年生
足立 汐音

広島大学総合科学部。2024年4月より株式会社クイックに就業予定。卒業研究では町の小さな本屋について書く予定。趣味は居酒屋巡り、特技は日本酒の利き酒。早く大阪でお気に入りの居酒屋を見つけたい。

合名会社 安田商店
安田 茂宏

1977 年 4 月生まれ46 歳。2000 年に大学卒業後、合名会社安田商店に入社。製造現場、開発営業を経験し、2018 年に代表社員に就任。創業以来、織物一筋。織物で社会に貢献できないかと、「意匠」から「機能」へとモノづくりのバリエーションを広げ、織物の可能性を高めるため、研究開発に力を注ぎ小さくても良いから ONLY ONE の技術を持った企業になりたいと努力を重ねている。

目次

 

足立
安田社長のご経歴をお伺いさせてください。


安田
2000年に大学を卒業し、それと同時に家業である合名会社安田商店に戻ってきました。


足立
ありがとうございます。何がきっかけで家業に戻ることを決断されたのでしょうか。


安田
もともと外で働くつもりだったんです。経済学部だったので金融系を中心に見ていました。とんとん拍子で選考が進んでいく私の様子を見て、親や祖母は逆に心配していました。よく聞くと、叔父の体調が悪いから早く戻ってきてほしいとのことでした。最初はそんなこと突然言われても、と思ったんです。

 

足立
最初は家業以外で働くつもりでいらっしゃったんですね。


安田
そうなんです。しかし祖母から帰ってきてと言われるようになって、祖父の話をいろいろ思い出しました。私の祖父は3歳のときに亡くなっているのですが、亡くなる前、会社の神棚の幕に長男の私の名前を入れていたそうです。つまり、後継指名されていたんです。


足立
おじいさまのそのようなお話を思い出されたんですね。選考が進んでいる会社がある中で家業に戻るのは大変だったのではないでしょうか。


安田
帰りにくくなるより、最初から戻った方がいいとも思ったんですよね。ただ、自分に合わない会社には入りたくなかったので、実は大学4年生の夏休み期間を利用して、足立さんのようにインターンシップをしていたんです。

 

足立
当時から安田商店様ではインターンシップが行われていたのでしょうか。


安田
応募はしていなかったのですが、自らやったんです。分からないからやってみようと。
自分に合うか、どこかで選択しなければならないと思っていました。


足立
すごい行動力だな、と思います。そこから、どのような想いを持って入社するに至ったのでしょうか。


安田
インターンシップの最初に、社員から見本帳という商品カタログをみせてもらったんです。「見本帳の巻頭を飾る織物メーカーなんだよ」という説明を受けて、その実績に驚きました。安田商店の技術や社員の持つ腕前に触れながら、入社意欲を高めていきました。


魅せ方を工夫して採用を変える 

足立
今の安田商店様のホームページからは、織物のこだわりや西陣織の文化を大切にされていることが伝わってきます。


安田
このホームページに変わったのは、本当に最近なんです。今も少しずつ改良をしているんですが、これを見た人が弊社に興味を持ってきてくれるんですよね。


足立
ホームページを作り直すきっかけはなんだったのでしょうか。


安田
弊社はOEM事業も行っていて、日陰の存在だったんです。ホテル物件や歴史的建造物の内装をしても、公にしてはだめだ、というふうに言われていたんです。安田さんが直接販売するのですか?と。


足立
なるほど、そんな声があがっていたのですね。どういう想いがあって、表に出すようになったんでしょうか。


安田
社員から「いいものを作っているのは分かるんだけど、私たちはそれがどこで使われているか分からない」と言われたんです。安田商店の織物は有名テーマパークの直営ホテルや国際的イベントのレセプション会場などにも使われていますが、普段皆さんが目にする機会は少ないんですよね。自分たちがつくっているものがどこで使われているか分かれば、それを友達や家族に話すことで自分たちの仕事が誇れるものになる。社員に向けて伝えていく中で、自分のやってることを周りからすごいねと言われるようにしたい、というのが私の思いでした。


足立
ホームページのリニューアル後、御社の魅力を伝えることができ、その魅力に共感した方が選考を受けにくるようになってきたのでしょうか。


安田
そうですね、弊社の思いを感じて入ってきてくれるようになりました。「私はこういう織物を作りたいんです」と言って来てくれた子は、今も頑張ってくれています。


足立
「こんなものづくりがしたい」という個人の想いを実現できる場できる場所であり、ホームページを変えたことで個人がしたいことと志望動機が結び付けやすくなったかもしれませんね。


安田
そうですね。現場ではもちろん大変なこともありますが、それをどう前向きにするか、魅力あるように魅せられるか、改善していくか。今回の対談を通して刺激を受けたいなと思います。


続けられる仕事を探すために 

足立
これまでの話から、安田社長は、有名な場所の装飾に関わっていることを知ってもらうことで、若い世代とのタッチポイントを作っていきたいと思っていらっしゃるのかなと思ったのですが、いかがでしょうか。


安田
たしかに、「田舎の織物メーカーで、こんなに有名な内装の織物に関わってらっしゃるんですね」とポジティブに受け止めてくださいます。ですが、私のときとは受け取り方、求めているものにギャップがあるなと。私たちのときは、製造業は最初の基礎が大事だと思って入っていました。足立さんはどうなんでしょう。


足立
イメージしてみましたが、「ものづくり」に関わっていない私からすると、最初に御社に興味を持つポイントは「自分が知っている有名なホテルの内装に携われる!」かもしれないです。「いいものをつくっている」というイメージは思い描けますが、心構えができていなければ、「こんな鍛錬が必要で、こんな技術を積み上げないといけないのか」と、入社前とギャップを感じて耐えられないかもしれません。


安田
そうなんですよね.....。専門的なスキルが必要になる製造業は、最初はやはり下準備が必要なんです。そこがうまくクリアできたら長く勤められるのですが、その間に、迷いが出てしまうのかな。大学で勉強したことと今やっていることが違ったり、作りたいものとギャップが生じたり。


足立
なるほど......。少し考えてみたいのですが、新卒採用で入ってくださった方は、御社にどのような魅力を感じられているのでしょうか。


安田
私が入社してから新卒採用で入ってくれた方は、実は、美術や織物、染色に関係ない普通科を卒業しておりますが、「接客が苦手で一人でもくもくと作業することが好き」や「ひとつのものが出来上がるのが楽しい」と言っていました。全く織物に興味のない子も、そういう子は活躍するんだなと。


足立
美術系の学校を出たからと言って御社とマッチするというわけでもなく、自分の「好き」を理解し、それを発散できる場所が御社だったのかなと思いました。そうするうちに、後から織物に興味がわいたり、じっくり自分の技術を磨くことが楽しくなるかもしれません。


ものづくりの面白さ

足立
技術の習得の過程において、御社で働かれている方はどこにやりがいを感じていらっしゃるのでしょうか。


安田
ものづくりが好きな方たちは、これまでできなかった機械の調整ができるようになったり、ひとつのものが段々とできあがっていく瞬間にやりがいを感じる方が多いです。丁寧に教えて、やりがいを見出してあげることを意識しています。また、ステップアップしていくと、お客様のパートナーとして意見が言えるようになり、さらにものづくりが楽しくなると思います。


足立
新人の方は、ベテランの方から教えてもらっているんでしょうか。どのような教育方法をとっていらっしゃるのかが気になりました。


安田
指示書を渡して、経験して覚えていってもらいます。新人とベテランをペアにして仕事をしてもらっているので、分からないことがあれば聞いてもらい、難しければ、私が潤滑油になってワンクッションはさむこともしています。


足立
分からなことがあったら誰に頼ればいいかが明確になっているということと、安田社長に直接ワンクッション入っていただけるというのが、とても良い環境だと感じました。


安田
私が入りすぎると緊張する場合もあるので、そこは気をつけています。いつもの朝はラジオ体操をしているのですが、それがすごく重要で、社員の健康やその時に話す内容を聞いて、社員の様子を確認しています。


足立
安田社長ご自身が、社員の様子を対話の中で、「もくもくと仕事ができる環境」とおっしゃっていらっしゃいましたが、御社の風土という点ではいかがでしょうか。


安田
弊社は敷地が広く離れて仕事をすることが多いので、比較的静かな環境で働けます。お昼はみんな話しながら食べていますね。ただ、みんなでひとつのものを作るために分業をしているので、「お互いで補いあおう、助けあおう」という雰囲気があります。そういった点で、あたたかみのある風土、と言えるかと思います。


織物で社会貢献

足立
「こういう織物がつくりたいから入った」というように、新しい商品を生み出せる仕事かなと感じました。御社ならではの、働く醍醐味という点ではいかがでしょうか。


安田
弊社は「衣飾住」と言っていて、どのようにして家の装飾をするかという観点で、「当社でしか作れないものを作る」ことを意識しています。2015年にANTEX(アンテックス)という技術ブランドも立ち上げました。


足立
企業全体で「新しいものを生み出す」という取り組みをされているんですね。ANTEX(アンテックス)とはどのようなブランドなのでしょうか。


安田
ANTEXは、機能織物で、防炎性能と様々な機能を両立させた織物ブランドです。弊社は、織物で社会貢献することを掲げています。インテリアやホテルの装飾をするさい、必ず消防法が絡みます。そこで、防炎機能のある生地を開発し、抗菌の機能も付加しました。あの豪華客船がクルージングの再開を目指すにあたって相談されたのが、当社の抗ウイルスのカーテンなんです。


足立
それはすごいですね!


安田
この機能を持った織物は、介護施設でも使われています。防炎と消臭効果の機能を付加させることで、入居者の方や働く方に過ごしやすい環境を提供できます。面会に来る家族にも「おじいちゃん、なんか空気いいね」と思ってもらえたりね。


足立
織物で社会貢献とはどういうことだろうと思っていましたが、今のお話を聞いてイメージができました。


必要とされる織物を必要とする人へ

足立
これから御社で行っていきたいことを教えてください。


安田
これまでは装飾で強みを発揮してきたのですが、今後はそこに機能を持たせ、必要とされるものを作る。そして販売力を上げることです。これからは直接販売をしていきたいと思っています。そのために、情報発信の方法も模索していきたいです。


足立
今回の対談を通して、新卒採用のために御社の魅せ方・発信方法を考えていらっしゃると思いましたが、そういった点でも情報発信に力を入れられているんですね。


安田
はい。私たちはデザイナーさんから依頼を受けて作るのですが、最終ユーザーさんのことを心がけて作ります。デザイナーさんから採用されることも大切ですが、必要とされるひとに届けられるものづくりができないかなと常に考えています。


足立
今回の対談を通し、ホームページだけでは読み取ることができない安田商店様の魅力を発見することができました。


安田
こちらこそ、大変貴重な機会をいただきました。ありがとうございました。


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