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過去の「得」は未来の「ツキ」

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過去の「得」は未来の「ツキ」

長崎大学4年生

原田 歩果

株式会社ゆで太郎システム

池田 智昭

interview

学生と経営者がお互いに意見交換をしながら、相互理解を深めるHRsessionの対談コンテンツ。

今回は、株式会社ゆで太郎システムの代表取締役社長 池田 智昭様に、お話を伺いました。

長崎大学4年生
原田 歩果

長崎大学経済学部。2024年4月より株式会社クイックに就業予定。インドア派で、趣味は読書と音楽鑑賞。コンサートに行く時だけ意気揚々と外に出かけます。来年までに家事をできるようになるのが目標です。

株式会社ゆで太郎システム
池田 智昭

1957年4月生まれ、66歳。大学卒業後、「ほっかほっか亭」のFCオーナーとして独立。1984年9月、株式会社ほっかほっか亭東京事業本部にスーパーバイザーとして入社。 1992年、取締役営業本部長に就任。その後、取締役開発本部長、取締役FC本部を歴任し、2003年に同社退社。2004年8月に株式会社ゆで太郎システムを設立し、代表取締役就任。

目次

 


オーナーから本部への異例の大抜擢

原田
本日はよろしくお願いします。まず社長のご経歴についてお伺いします。前職はお弁当屋さんで働いていたということですが、その当時はどのようなお仕事をされていたのでしょうか。


池田
最初はFCオーナーからのスタートだったんです。しかし、あるとき本社に来てほしいという話がありました。それでいきなりSVになり、お店の指導をしたり、お店を作ったりという仕事をしました。


原田
SVに抜擢されるのは珍しいことなのですか。


池田
FCオーナーが本社に入るというのは、まずないんです。本部の人が独立することはあるんですが、独立したオーナーが本社の社員になるのは私が初めてでしたね。


原田
どのような部分が評価されたのでしょうか。


池田
当時は、できたばかりの企業だったんです。私は5店舗を運営していたんですが、多店舗を運営できる人材がまだ育っていなかったんだと思います。だから、本部で活躍してくれるだろうと思ってもらえたんでしょう。勉強になるなと思い、引き受けました。


原田
そうだったのですね、5店舗を経営することにコツはあったのですか。


池田
当時はお店がどんどん増えていたので特段珍しくもなかったんです。でもノウハウもまだしっかりできていなかったし、企業としても大きくなるために変わり始めていた時期だったので、声をかけていただいたのかなと思っています。抜擢された理由とかはあまり聞いていないんです。


原田
フィールドが大きくなる中の挑戦には、勇気が必要だったのではないでしょうか。


池田
当時は経済がどんどん成長していたので、あまり大きな挑戦だとは思いませんでした。今の人からすると想像できないでしょうけど、お店が毎日増えていくような時代だったんですよ。


原田
今は景気が停滞していると言われていますよね。だから挑戦する人も少ないのかもしれません。


池田
そうですね。


年賀状のやりとりから生まれたビジネス

原田
現職についても聞いていきたいのですが、ゆで太郎の創業者である水信様とも、前職からご関係があったんですよね。


池田
はい。水信さんは蕎麦屋さんになりたくて修行してたんです。その夢のためにお金を貯めようとして、お弁当屋さんのオーナーをしていました。私がSVとして関わったのが出会ったきっかけですね。その後水信さんは夢を叶えて、ゆで太郎というお蕎麦屋さんをオープンしました。


原田
ずっと長く続いた関係だったんですか?


池田
そういうわけでもないんです。私が事業部長としてほかの地域に行っていたので直接のつながりは切れていました。そんな中でも年賀状を通して十数年やり取りをしていました。その後、退職して将来のことを考えるときに、蕎麦屋に魅力を感じて久しぶりに電話したんです。喫茶店で会ったんですけど、なにせ十数年ぶりだからお互い顔もわからなくて。笑


原田
年賀状でのやり取りだけだったからですね。


池田
そうなんです。今はフランチャイズをすべて任せてくれていて、水信さんの信越食品の店舗も合わせると200店舗以上になっています。


原田
蕎麦屋の店舗数日本一を達成されたのですね。


美味しいお蕎麦をもっと多くの人に届けるために

原田
年賀状だけの関係から、「お店を任せるよ」という状態になるのは難しいと思うのですが、どういう流れがあったんですか?


池田
水信さんが豪快な人柄だったということと、私への期待感ですね。私は経営について知識がありましたし、営業もやっていましたので、もっとフランチャイズとして店舗を拡大していけるだろうと評価していただいたんだと思います。


原田
前職でのご活躍を見ていたからこそ、信頼に繋がったのですね。
直接のつながりは切れても、お互いに何をしているか気にかけていらっしゃったということですか?


池田
私はそばを食べに行っていただけです。笑
「ゆで太郎美味しいね、ああいうのいいね」って思っていたらタイミングが合って。


原田
水信様からしても経営に悩みがある時にノウハウを持っている人が来てくれたということですね。


池田
そうですね。最初は、お店に入ってマニュアルを作ったり就業規則を作ったりするところから始めました。個人のお店ってそういうのがないんですよ。


原田
最初から形を作っていかれたんですね。そして、水信様の期待通りに成長されていったのでしょうか?


池田
ようやく100店舗になったって報告したら、もっと早くできると思ったのにと言われました。笑
10年かけてやっとです。


原田
10年で100件ってすごいと思います。


池田
1年に10件ですよ。僕は前職で開発部長として1年に100件作ったこともあるんですから。でも、数ありきじゃないので焦りはなかったです。


ビッグカンパニーよりグッドカンパニー

原田
数ありきじゃないということはどういうことを重視していたんですか?


池田
ビッグよりグッドです。中途半端にビッグカンパニーにしない、時間もかかる、お金もかかるし人も育っていないといけないんです。企業としての形を作るのにも10年かかります、焦って数だけ増やしたって意味がありません。当社は来年20周年を迎えます。最初は小さい規模でのスタートでした。歴史が浅くても、当時で言う課長クラスの方がたくさん来てくれたので、今のように成長できたんだろうと思います。

 

原田
採用HPにも池田様をすごく尊敬していて、ブログを何年分も読んでから来ました!という方もいらっしゃいました。


池田
そういう人もいますよね。笑 


原田
求心力がものすごく強い社長様なんだと感じています。


池田
発信しているからでしょうね。例えば今ウィークリーレターというものをしています。
全店長に私の考えを発信しているのですが、お弁当屋さんの時代からやっていたのでもう30年くらい続けているんです。

 

原田
店舗を拡大していくにつれ、従業員の方への意思の浸透って難しくなる分、ウィークリーレターを通してコミュニケーションをとっているんですね。


池田
人数が増えると、当然意思の浸透は難しくなります。
だからこそ、店長って社長と同じなんですよと伝えてるんです。
一人一人が自覚をもって私の言葉を従業員に伝えてもらうことで意思の浸透を図っています。


原田
店長が自分自身を社長と思う、当事者意識が大事なんですね。ほかにも何かしていることはありますか?


池田
信頼してもらうためには、相手に得をしてもらわないといけないので、有言実行も大切にしています。例えば、お弁当屋さんのときに私と働いて損をした人が、次の仕事をするってなったときについてくるわけがないでしょう。儲かりそう、楽しそうって思う人が来るんです。

 

原田
たしかにそうですね。相手に得を与えるという考え方をしたことがなかったので新鮮です。勉強になります。


池田
あとは、自分の役割を全うすることが大切です。仕事ってチームで行うわけですから、それぞれ役割がありますよね。その役割を演じなきゃいけないんですよ。そうすると部下から信頼される、店長もパートさんとかに信頼されないとだめですよね。


ツキを得るためにトクを与える

原田
どんな理想の社長像を描いて演じていらっしゃるんですか?


池田
ビジョンが果たせて、勇気があって、決断ができて成功する人です。
そういう人ってツキがあるんですよ。トクをしてもらうと、みんながツキをもってきてくれるんです。
水信さんだってそう、全然知らない人がゆで太郎のことを教えてくださいって言っても教えないでしょう?

 

原田
おっしゃる通りです。


池田
お客様も得したと思うからまた来てくれる、損したと思ったらもう来てくれないですから。
喜んでもらうことがどんな仕事でも大事なんです。


原田
お客様に得を感じてもらうために、何かこだわってることはありますか?


池田
昔の言葉で売り手よし・買い手よし・世間よし、この3つを合わせて「三方よし」という言葉があります。
売り手の中には、従業員がいます。従業員が満足して働いていないと、満足できるサービスを提供できるはずがないですよね。だからもっと待遇をよくして、飲食業のなかでも一番を目指したいです。取引先ともwin-winの関係を作って、協力することも大切ですね。


原田
買い手はお客様ですか?


池田
そうですね!当社は「驚きと満足」を掲げています。驚く気持ちは、「誰かに紹介しよう」という気持ちにつながります。満足感は、「また行こう」という気持ちを生んでくれますね。


原田
大切な観点ですね。


池田
最後の世間よしは、寄付活動がそのうちの一つに入ります。当社はこれまでに1億円寄付しているんですよ。この3つを満たすことで、お客様に満足していただいていると思っています。


信頼関係から生まれた新メニュー

原田
今の「三方よし」とも繋がってくると思うのですが、信頼関係が活きた経験があれば教えてください。


池田
すべての経験がそうですよ。最近だと、生産者の方との関わりで感じました。
今当店の商品で、「とろろ」を使ったキャンペーンメニューをやっているんです。青森県産の「ねばりスター」というものを使っているんですが、生産者の方からのご提案もあって、皮ごとすり下ろしているんですよ。素材のいい使い方を教えてもらえたのも、関係を築いているからこそですよね。


原田
皮ごとすり下ろすなんて初めて聞きました。おいしそうです。


池田
生産者にも自分で挨拶しに行っているんです。すると自信をもってどんな商品か話せますよね。
社長が現場に行く企業ってなかなかないので、去年大根が不作だったときも、うちには回してくれました。


原田
生産者の方との信頼関係も大事なんですね。


お客様目線、従業員目線が改善の糸口

原田
店舗も見て回るのですか?


池田
しょっちゅう行きます。正式に行くこともあるけど、それは営業の仕事でもあるので任せています。
私は勝手に行ってお金を払って食べているだけです。たまに気づかれるんですけどね。笑


原田
お客様の立場で来店するのはどうしてですか。


池田
お金を払わないと、お金と味が合っているかわからないですから。自分の体感として、もう一回行こうと思えるかどうかが大事なんです。もちろん気になることはあるんですけど言わないで帰ります。


原田
従業員の方と話すこともないんですか。


池田
遠くの店舗に行くときは、一緒にご飯に行くこともあるんですが、あくまでお客様として来店しています。コミュニケーションで言うと、最近、パートさんへのアンケートも行いました。そういうことの積み重ねが、「自分の意見って届くんだ」という信頼感に繋がると思うんですね。


原田
私も飲食店で働いていたんですが、話を聞いてくれる経験はありませんでした。


池田
規模も関係しているでしょうね。今の店舗数だからできることでもあると思います。
私の前職の経験から考えても、本部に聞いてもらいたいって思うんですよ。
本部にしかわからないこと、現場しかわからないことってありますから。


原田
現場の意見を大切にするからこそ、改善に繋がっていくんですね。


池田
もちろん、本部と現場で意見のすれ違いも起きるんです。
だから、どうやったらできるようになるか考えないといけないですよね。


原田
立場が違うと意見も異なるから大変ですよね。 


危機、だからこそ動く

原田
飲食店を語るうえで切っても切れないのがコロナとの戦いだと思うのですが、どんな影響がありましたか。


池田
3億円の赤字にもなりましたけど、幸い日常食を扱っているので、今は回復して利益も上がっています。


原田
赤字3億円をすぐに巻き返すのはすごいことだと思います。


池田
大変だと言っていてもしょうがないので、毎日頭を動かしていました。不安になっているだけじゃ何にも解決しないんですよ。従業員を路頭に迷わせるわけにもいかないので必死です。


原田
コロナ禍でも自分たちにできることをして乗り越えられたのですね。


池田
はい。去年は店舗を80店舗程改装したんです。改装した店舗は次の利益を生み出してくれて雇用も生むので。耐える時期ももちろん必要ですが、じっとしているだけでは衰退の一途をたどるだけです。だからあえてお金もかけてきました。


原田
ただ数字を見て落ち込むのではなくて、多角的に見ることが必要なんですね。


池田
もちろん落ち込むこともあります。でもそこから考えて行動しなくちゃ意味がないんですよね。
失敗した人を責めると何も行動しなくなるので、そういう失敗も弊社では受け入れるようにしています。若いうちにいろいろ失敗もしたほうがいいですよ。


原田
自分の現状を振り返って、行動に移せていないことも多いなと気づかされました。


逃げない人だけが成長できる

原田
少しテーマが変わるのですが、今の若者に一番求める力を挙げるとするなら何でしょうか。


池田
逃げるな、ということです。
正直、新入社員に期待していることってあんまりないんですよ。だから、挑戦してみてから相談してほしいです。相談したら、指導してくれる人は必ずいます。一人で悩んじゃうから余計に頭の中で不安が大きくなってしまうんですよね。


原田
行動に移すことが大切だという先ほどのお話しとも繋がってきますね。


池田
そうですね。就職には体育会系が有利だと言われるでしょう?これにも理由があるんです。
私は昔水泳をしていました。そこでは練習をして超えてきた壁もあれば、挫折したこともあります。上下関係も指導してもらうこともあります。これって仕事と同じなんです。チャレンジして失敗する場合もある。努力したからってすべてが成功するわけでもないです。でも努力しないとどんなことも乗り越えられないんですよね。


原田
おっしゃる通りです。


池田
ですから、目標をもって行動して、成功と挫折を体験できた人は強いと思います。


原田
体育会系が就活で有利と言われるのはなぜかと思っていましたが、目標を決めて達成する力があるかという部分を見ているのですね。体育会系に限らず、挑戦して最後まであきらめなかった経験は活きると感じました。


池田
もちろんです。あとは上下左右の関係を大切にしてきたかとかね。
私も当時築いた関係は今でも大切にしています。


原田
先輩に面倒を見てもらったというのも、得を与えて信頼を得るのと似ている気がしました。
実際逃げない人が御社でも活躍しているんですか。


池田
そうですね、あとは明るい人が活躍しています。失敗しても怒られちゃったって笑えるくらいの人がいいね。


原田
重くとらえすぎない人ですね。


池田
やっていれば上達するから。それに誰にでも向いている仕事ってあるから、そういうところで働くのも大事ですよね。


原田
適性も見ながら配置しているんですね。


池田
やってみないとわからないから、そういうのも踏まえて配置しています。コツコツが向いている人も必要だし、動き回るのが向いている人もいます。いろんなタイプの人がいてこそ、チームで働く価値がありますよね。


原田
確かに、同じような人ばかりで働いていてもいつか行き詰る気がします。


池田
そうですね、私も、営業しかやったことがなかったから、起業した当初はできないことも多かったです。なので自分がやるべきことと、そうでないことに分けて考えていました。社長の仕事って、未来に向けてのジャッジなんです。基本的な業務は社員がしてくれますから。


原田
学生の立場からすると、社会人になるための能力が自分にはないなと不安になることも多くて…。


池田
能力は入ってからでいいんです。面接に来る学生が、「学生のうちに何をしておけばいいんですか?」なんて聞いてくるんですけど、何もしなくていいんですよ。入ってから絶対に成長するんだから。


原田
この記事を読んだ人はすごく安心すると思います。


池田
大事なのは言われたことを一生懸命やることなんです。そのうち基本ができてきてやっと思考できるようになる。そうしたら改善案も出てきます。
失敗しても仕方ないことです。学生の失敗なんてたかが知れていますから、今のうちに頑張るしかないですよね。


原田
学生なりに悩んでいることが多かったのですが、今のお話を聞いて肩の荷が降りたような気がします。


池田
就職してしばらくしたらぜひ食べに来てくださいね。


原田
ぜひ食べに行かせてください。本日はありがとうございました。

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