京都外国語大学3年生
田村 百桃
ランデス株式会社
大月 隆行
学生と経営者がお互いに意見交換しながら、相互理解を深めるHR sessionの対談コンテンツ。
ランデス株式会社 代表取締役会長 大月 隆行様に、お話を伺いました。
兵庫県出身、京都府在住。企業の採用活動を支えたい。という気持ちを軸として就職活動中。趣味は読書と散歩。京都府内を歩くことが大好き。
1954年10月生まれ。69歳。早稲田大学を卒業後、中国コンクリート工業㈱(現:ランデス㈱)に入社。2019年に代表取締役会長に就任し、現在に至る。SDGsの理念、「先進のトータル技術で人と自然を育む心をかたちにします」を企業使命とし、地球環境問題の解決に取り組んでいる。
目次
田村
大月様、本日はよろしくお願いいたします。はじめに、大月様のご経歴を教えてください。
大月
よろしくお願いします。私は昭和29年、岡山県真庭市に生まれ、今年で69歳になりました。ランデス株式会社の母体となった中国コンクリート工業株式会社は父が経営していた会社です。
田村
お父様の事業を継がれているのですね。
大月
父が経営をしている姿を見ながら大きくなり、地元の小中学校から岡山の津山の高校に進学し、東京の早稲田大学理工学部土木工学科に進学しました。卒業後、故郷に父の会社を継ぐべく帰ってきたのが25歳の時です。代表取締役社長を継いだのが37歳、1992年の時でした。もう32年も経っていますね。
21世紀の土木を考える
田村
理念を見直したことで「ランデス」という社名に変わったと仰っていましたが、どんな背景があったのでしょうか。
大月
岡山県の県北は自然が大変豊かなところです。日本を代表する天然記念物の第一号であるオオサンショウウオがいる地域として、明治時代にこの地域が設定されたんですよ。
田村
オオサンショウウオが生息しているくらい自然が豊かなのですね。
大月
環境保護について本気で考えていることが弊社の持っている遺伝子というか、持って生まれた役割ではないかなと改めて思いました。30年の節目に21世紀に輝ける会社となるべく、“人と自然との共生”を理念として定め、『Landes ランデス』に社名を変更したんです。
LandesとはLand(大地)の後ろにEngineeringとEnvironment Systemの頭文字をくっつけたものです。
田村
そのような素敵な由来があったのですね。理念はどのように考えられたのですか。
大月
1992年に設立30年を迎えたタイミングで、「21世紀に輝ける会社とはどんな会社か」ということを若手社員15人を中心に話し合い、理念の見直しを行いました。
大月
社会や自然とともに会社も育っていく、そんな会社でありたいという話をしました。そんな思いから今の「育」という理念ができています。
人材を育成しながら物事を考え、それらを伝えながら引き継いでいくことを心がけ、経営にあたっています。
田村
そうなのですね。21世紀の土木を考えるにあたって、大学などで学ばれたことも活かされているのですか。
大月
土木工学の知識が基礎になっています。最初、土木は人間の命を自然の脅威から守るための技術でした。エジプトでナイル川の氾濫から人を守るために、堤防を作る測量技術が生まれたのが、土木の始まりなんですよね。
田村
そんな歴史があったんですね。
大月
一番古い技術は人間の命を守るための技術だという原点を確認しながら、じゃあ21世紀はどうしようかという話になりました。自然の脅威から人間を守るだけではなく、自然を守りながら共生するような技術にシフトした方がいいという価値観を私は持っています。
特許270以上の技術で環境を守る
田村
SDGsにはどう取り組んでおられますか。
大月
SDGsについて、日本国内ではアクションが全然できていないと感じています。弊社は環境保全に力を入れたものを作って売っていますが、それをどんどん使っていこうというお客様がいらっしゃらない。それでもやり続けてここまできたことが何よりの価値です。
田村
継続は力なりですね。
大月
そうですね。過去30年以上の実績があるのは弊社の強みです。生物がどこにどのように住んでいて…というデータも全部取れますので。生態系はどんどん遷移していくということがわからない人や企業が多いですが、弊社はわかる。それが弊社のオンリーワンの価値ではないかなと思いますね。
田村
自然環境について、これからもっと身近に考えていかないといけない問題だということがよくわかりました。SDGsの達成に向けた取り組みを多数行ってきた中で、社会に貢献できたと実感した出来事はございますか。
大月
そうですね。たくさんやってきましたね…。やはり、一番は地元の方々が反応してくれたことですかね。具体的には、地元の方々に「ランデスさんの製品にオオサンショウウオが住んでいるよ」とご報告いただいたことです。やっぱり嬉しいですね。
田村
生態系を守るためにどんなことをされてきたのですか。
大月
生物の多様性を守るという観点で製品を考えて特許を過去270個近く取り、環境保全型ブロックを作りました。
田村
特許を270個も!どのような機能を持つブロックなのですか。
大月
そうですね。例えば、今水害がとても多いですよね。
田村
過去にないような雨量が観測されていますよね。
大月
岡山県でも水害があって何人も亡くなりました。水害に対して、コンクリート製品でしかできないことがあるので、すばやく対応するのが私たちの業界の役割です。そこで、災害を復旧しつつ自然環境にやさしい方法を選べばいいんじゃないかということを提案しました。難しい話ですよ…。
田村
たしかにそうですね。難しいかつ抽象的というか。
大月
そうですね。そこで、生態系を考えたブロックを開発しました。そして、コンクリート材料についても、資源循環型のスラグを大量に使用した「ハレ―サルト」を開発しました。
新開発、オールマイティなコンクリートとは
大月
ハレーサルトというのは、資源循環型の材料を使用してつくるコンクリートで、従来のコンクリートに比べて耐久性の高いコンクリートができました。High Resistance to Sulfuric Acid Attackと言います。Sulfuric Acid というのは硫酸、つまり耐硫酸性のもの。岡山は晴れの国なので、ハレーサルトと名付けました。
田村
そんな意味があってこのユニークな名前になったんですね。
ハレーサルトという商材を持つことによって、どのようなメリットが生まれるのですか。
大月
ハレーサルトは、鉄鋼廃棄物ではなく鉄鋼副産物のスラグを半分使用して作られています。硫酸や塩にも強いし強度も高い。それから、凍結融解に対しても強いコンクリートになりました。
田村
オールマイティなコンクリートなのですね。
大月
それから、SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)に採用されて国からお金をいただいて研究しました。超高耐久性コンクリートの名前をいただいて、土木研究センターからも今年、建設技術審査証明というものをいただきました。
田村
技術の積み重ねが形になったのですね。
大月
そうですね。産業副産物を使ってできた長寿命コンクリートがハレーサルトです。普通のコンクリートより二酸化炭素排出量も半分以下と少なく、自然環境にとても優しいです。資源循環から始まって、出来上がったものが従来のものより高性能になったのは画期的でした。同じコンクリートでも、今までの材料とは全然違うんです。
田村
知らないことばかりだったのですが、わかりやすく教えていただきありがとうございました。インターネットで調べてもわからなかったからこそ、対談の場でお聞きできて良かったです。
大月
そういう技術があって、安全安心な生活がありますからね。
つくればつくるほど地球に優しく
田村
今後の事業展開はどのようにお考えですか。
大月
ハレーサルトの次は、二酸化炭素を積極的に固定化できるコンクリート開発を展開していく予定です。今は二酸化炭素を軽減するコンクリートですが、今度は二酸化炭素をマイナスまで持っていくコンクリートです。
田村
夢みたいなコンクリートですね。コンクリートを作れば作るほど二酸化炭素が減るということになるんですね。
大月
理屈上では、そういうことです。今は共同で研究を始めたところです。電気や化石燃料等の脱炭素化に取り組むことに加えて、SDGsに貢献できるようになればなと考えています。夢のようだけど、かなり現実的に動き始めています。
田村
楽しみですね。
大月
あとは若い人に繋げていかなきゃいけないですね。私と同じ思いを持って走っていただけるような人が続いてほしいです。そういう熱い思いを持った学生さんに来て欲しいなと思っています。
学ぶだけでは不十分
田村
先程仰っていた企業理念「育」に込められた「社会で輝くことが出来る人材」とは具体的にどのような人のことなのでしょうか。
大月
うちには社員マインドというものが3つありまして、1つめが感謝の人。2つ目が信頼の人。3つ目が青春の人、というものですね。
田村
ありがとうございます。私はよく、主体性が大切だと耳にします。やはり主体性は大切なのでしょうか。
大月
そうですね。しかし、あったことを素直に受け止める謙虚さも大切ですよね。変化する社会においては常に学び続けなければいけないので。謙虚さや素直さがある人は必ず成長しますね。
田村
心に刻みます。人間力を高めることを喜びとするような人材になるために、今、学生のうちにやっておくべきことや学んでおくべきことをお聞きしたいです。
大月
時間を無駄にせず、やりたいことをやる。これでいいと思います。就職してからは学ぶだけではなく、行動した結果を受け止めて、自ら振り返って学ぶ。主体性、素直さを持っている人にはそれが大事ですからね。
田村
やりたいことをやる、でいいんですね。
大月
学生の頃は、知識をつける「学ぶ」ではなく、「考える」「問題意識を持つ」ことが大切なので、奥深い学びをして、なんでも本気で取り組んで欲しいですね。学生には時間があって、なんでも選択できるから。時間を大事に有効に使ってくださいね。
田村
知識をつけるだけでなく、目的意識を持ち、物事に取り組むことも大切だと感じました。私は趣味でよく本を読むのですが、ただ知識をつけるために読むのではなく何を思ったかを整理したり、そういう身近なところから変えられるところはあるんだなと思いました。
共感点を探そう
田村
それでは最後に、就職活動中の学生にメッセージをお願いします。
大月
待遇面を見るのも大切だけど、何よりも自分に合っている会社を探してください。理念や、社会貢献していることに共感できる会社で、自分のやりがいにもなる。そういう会社との出会いがあると、とってもいいんじゃないかなと思いますね。
田村
理念に共感することってとても大切ですよね。
大月
そうですね。社会が変わっていく中で続けられるようなベースがないといけないのでね。弊社が100周年になるのは2050年、これはカーボンニュートラルの目標年なんですけどね。
田村
節目が重なりますね。
大月
そうなんです。理念を共有して、素敵な社会を作りながら個人と企業の目的を達成するという好循環が続けばいいなと思います。
田村
社会貢献したいと感じるなら、目の前の条件だけに釣られず、理念にも共感することが大切ですね。本日は貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。
大月
ありがとうございました。
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